2014
12.24

2014年12月24日 方針決定

らかす日誌

前回の日誌「弱り目に」でご報告したことに決着をつけておかねばなるまい。いずれにしても、急いで方針を決めねばならない事案である。
だから、今日、方針を決めた。

まず、フロントガラスである。これは、前橋にあるBMWディーラーに明日、修理に出す。保険を使い、自己負担は5万円。そのほかに、現在は等級を下げずに保険金を使う手段はなくなったそうで、等級がひとつ下がる。その負担が、これから2年で約2万円。
ふーっ、結構な出費ではある。

週明けの22日、行きつけの修理工場に車を運んだ。フロントガラスについて、費用、修理の時期などについて話していて、

「とりあえず、いつガラスが入荷するか聞いてくれる?」

と頼むと、工場長さんがパーツ屋さんに電話をしてくれた。電話を終えた工場長さんはいった。

「なんかさ、BMWのフロントガラスは面倒らしいんだわ。ナビ用のフィルムが貼ってあったりして大変だっていうんだよね」

「ということは、ディーラーに持ち込んだ方が早いってこと?」

「うーん、今回はそっちの方がよさそう」

私、この修理工場から敬遠され始めたか? 普通に修理を依頼して、普通に疑問点をただしてお金を払っただけなのだが。

まあ、それが正鵠を射ているかどうかは別として、そういわれればディーラーに持ち込むしかない。あいにく月曜日はディーラーの定休日で、翌23日を待って、前橋のディーラーに電話をした。

「というわけで、フロントガラスを取り替えて欲しいんだけど、修理にかかる時間はどれくらいですか?」

「はあ、まあ、普通は3日から4日見てもらっています」

「結構時間がかかるものですねえ。で、その間は代車を貸していただける?」

「いえ、代車はご用意できません。レンタカーの手配ならできますが」

「私の保険では、レンタカーの費用までは出ないんだよね」

「はあ、申し訳ありませんが」

車を買ったディーラーなら代車を出してくれるところである。が、横浜で買った私は、前橋のこのディーラーから見れば行きずりの客に過ぎない。

「そこまでサービスする義理はないで」

というところだろう。商売は損して得を取る。行きずりの客を、サービスで自分の顧客にする。その原則を知らぬディーラーが多すぎる。

「わかりました。とりあえず、修理費の見積もりと修理期間を出してくれませんか」

と依頼して電話を切った。
切りながら、困った。問題は代車である。
ディーラーの所在地は前橋。我が家から40分ほどかかる。まずそこに車を運び、まあ、戻りはタクシーでもいい。タクシーの料金は会社に請求すればすむ。
が、である。自宅に戻って3日から4日。その間、車がない。ということは移動の自由がないということだ。さて、どうする? レンタカー? 安くても1日4000円というぞ。しかもこれ、会社に請求できる金じゃない。

今日、給油に行った。ついでに

「ねえ、このあたりに、俺の車のフロントガラスを取っ替えてくれるいい工場、ない?」

と聞いた。何故、と聞かれたので、フロントガラスにひびが入っていることを説明した。すると、

「はい、それならうちでもできます。ベンツのフロントガラスも取り替えましたし」

ああ、そう。ベンツが最高級車なんだ。BMWはそれに次ぐのか。で、どれくらい時間がかかる?

「はい、1泊2日を見てください。接着剤を使うので、乾燥させる時間が欲しいんです。ただ、ガラスを取り寄せるには時間がかかりますので、年内は無理かも知れません」

えっ、1泊2日ですむの? で、代車は?

「BMWはありませんが、出せます」

ああそう、

「だったら、いつ車を入れればいいかと、費用の見積もりだしてくれる?」

ガソリンスタンドでフロントガラスを取り替える? やや不安ではある。水漏れしたりしないか? しかし、私の条件にぴたりと合うのはこちらだ。気持ちは9割方、こちらに傾いた。

傾いた気持ちで自宅に戻ると、今度は前橋のディーラーから電話だ。

「はい、こちらで段取りしたところ、明日車を入れていただければ、明後日にはお返しできます」

えっ、3、4日かかるっていわなかったか? いつ期間が短縮された? そこまでいい条件を出すのなら、

「ついでに、代車も出してもらえないかな」

「いや、それはちょっと難しくて……」

そうか、やっぱり無理か。しかし、丸1日でできるのは魅力である。その間レンタカーを使っても、4000円程度ですむではないか。ディーラー管理下の修理なら安心だし。

「分かりました。明日は朝から少し用事があるので、それを済ませてから車を持っていきます。レンタカーは一番安いヤツでいいので用意しておいてください。で、引き取りはいつになります?」

翌日の昼過ぎには大丈夫だという返事を来て決めた。ガソリンスタンドには、その旨の連絡を入れたのはいうまでもない。


いまひとつ、車の買い換えにつながりかねない警告灯である。最初に持ち込んだ修理工場で相談してみた。

「でね、コンピューターで打ち出した診断書を、それ、もらえない? って横浜のディーラーで聞いたんだけどダメでね。おたくで、何処が悪いか分かるかなあ」

「いや、警告灯は消したんでしょ。そうすると、コンピュータに接続しても、何処が悪いか分からないんだよね。だから、今の時点で何ともできないわ。で、車の調子は悪いの?」

「いや、横浜で警告灯を消してもらってから、高速を走って戻ってきたけど、エンジンは快調なんだよね。それに、警告灯が再点灯することもない」

「だったら、警告灯が点くまで乗ってもらうしかないねえ」

はあ、ほとんどがコンピューター制御される現代の車とはそのようなものか。便利になったようで、逆に不便になったような。つまり、私はいつ警告灯が再点灯するか不安を抱えながら乗り続けるしかないわけだ。やっぱり、買い換えを検討した方がいいのかね?

最期に今日、私が車を買ったディーラーの担当者に電話を入れた。すでにディーラーをやめちゃった人だが、頼るとすれば彼しかいない。

「どうしたらいいと思う? 買い換えた方がいい? でも、本当は俺、次のモデルまで待ちたいんだよね。今すぐに新車に乗りたいという気もない。今の車、故障を除けば満足して乗ってるから」

彼は、これまでの私と愛車の付き合い方をあれこれ問いただした上でいった。

「大道さん、充分に車の面倒見てるじゃない。それだったらしばらく心配ないよ。欲しい新車がないんだったら、今の車に乗り続けた方がいい。俺の経験上、もうたいしたことは起きないから。おれ、メカにも強かったしね」

この言葉で、二つ目の問題にも結論が出た。私は、この車にトコトン乗る。当面、買い換えは考えない。

「ところで、ディーラーをやめていま何をしてるの?」

「ああ、車の陸送をしてるんだ」

「へえ、大型免許、持ってたんだ」

「いやいや、車をトラックで運ぶんじゃなくて、車そのものを運転して運ぶの。普通免許でできるんだよ」

「ああ、そんな仕事があるんだ。じゃあ、俺にもできるな。ねえ、俺の働き口を確保しておいてよ」

話によると、仕事は月に20日ほど。ディーラーに託された車を目的地まで走らせ、戻りは公共交通機関を使う。

「だから、運転して、バス、電車に乗って、そして歩く仕事よ。結構歩くんだ」

体にもいいらしい。

「俺、本気だからね。働き口、確保しておいて」

車の相談が、再就職口の相談につながった。
さて、数年後の私は、頼まれた車を目的地まで転がし、バス停まで腰をかばいながらてくてく歩き、待ち時間、バスの時間、電車の時間に読書をして、給料日に幾ばくかのお金をいただいているのだろうか。
70歳までできる仕事というから、魅力は大きいのである。