2015
05.14

2015年5月14日 何?

らかす日誌

日曜日。横浜から桐生にたどり着くと、私にはやるべきことが待ち受けている。

まずやらねばならないのは、新聞に目を通すことだ。土曜日の朝桐生を離れたのだから、土曜日の夕刊と日曜日の朝刊7紙が、未読の新聞として待ち受けている。

それが終わると、この間に録画されたテレビ番組の編集作業がある。機械に頼って録画しているのだから、広告のないWOWOWでも、映画が始まるまでに余計なものが録画されているし、映画が終わったあとも番組宣伝などがある。
そうでない放送局だと、コマーシャルがあったり、番組宣伝があったり、とにかく見なくてもすむ、ない方がいいものが一緒に録画されている。それを編集し、見るべき部分だけを残す。それが編集作業である。それが終わらねばディスクへのダビングもできない。

さらに、一連の作業が終わると、録画予約もせねばならない。今のシステムだと、向こう1週間分の録画予約ができる。土曜日までの録画予約は前日までに終わらせているが、日曜日には、次の日曜日の予約をしなければならない。

あれやこれや、やらねばならないことに忙殺されて、さて、事務室に歩を運んだのは、多分、午後4時を回ったころであった。私の創造の現場である。私の創造作業には音楽が必要だ。

この部屋でその日、私がまず手がけなければならないのは、TSUTAYAから届いていたCDのリッピングであった。何事もなくリッピングが終わったアルバムは、タブを編集したあと、NASにコピーする。
それが終わると、パソコンのブラウザで黒コンピュータを呼び出し、新しくNASに入ったアルバムを黒コンピュータに教えなければならない。そのために、新しいアルバムが入ったフォルダをUpdateする。これをやっておかないと、I君に造ってもらった黒コンピュータ+DACのネットワークコンピュータは使えないのである。

で、いつもの通り、新しいアルバムを入れたフォルダにUpdateの命令を下した。すると、信じられないことが起きた。
驚愕のあまり、私がI君に送ったメールをそのまま転記しよう。


新しいCDをリッピングしたので、volumioからその新しい楽曲が入っているフォルダをアップデートしました。ところが、アップデートをすると、そのフォルダが消えてしまう、という不思議な出来事が起きました。
2つのフォルダを消してしまったあと、念のためにNASの接続を確認すると、 volumioはNASを認識していません。NASのアドレスが間違っているわけでもないのに、何度トライしてもマウントできません。
横浜に行くまでは快調に働いていたのです。で、volumioの電源は落とさないまま、横浜に行って戻ったらこの調子です。
何らかの原因で、再びmicroSDカードが壊れたのではないかと考えました(何もしないのに壊れるのは困りますが)。そこで、カードを差し替えました(それまでは4G、新しく挿したのは8G)。その状態でブラウザからvolumioを呼び出し、NASの設定をしてマウントのボタンを押したところ、もう30分以上「connecting」の状態です。
ここまで来ると、私の手にはおえません。
何がどうなっているのか、どうしたらいいのかご教授ください。


さて、この文面で、私の混乱ぶりを察していただけるだろうか? 

念のために言葉の解説をしておこう。 

volumio:黒コンピュータをネットワークプレーヤーの司令塔にするためのソフト
microSDカード:黒コンピュータのメモリー部分。ここにvolumioが納められている。

要約すれば、I君がつくってくれたネットワーク・オーディオが動かなくなった。何しろ、NASを認識しないのだから、NASの中に入っている音楽データを再生できるわけがない。何がどうなったのか、なぜそうなったのか、まったく理解できない私には、なんとも手の下しようがない、という悲痛な訴えである。 

しかし、だ。事務室で、実に心地よい音で音楽を聴くには、I君ネットワークプレーヤーが、何としても必要なのである。それなしには創造的な作業などできようか。 
私は、ほぼパニックに陥ったといってよい。 

おかしな振る舞いをするのは、黒コンピュータである。そのハード部分が簡単に壊れるはずはない。とすれば、壊れているのは、 microSDカードに入っているソフト、volumioであるはずだ。

そこまでは見当をつけた。 
その見当があたっているとすれば、私がすべきことは microSDカードを初期化し、新しくvolumioをmicroSDカードに入れることである。
という程度の知識はある。が、そこから先の知識はまるでない。 

メモリーカードに何かを書き込む場合、通常なら、つくったファイルをドラッグ、ドロップすればいい。ところが、 volumioをmicroSDカードに入れるのは、そんなに生やさしいことではないらしい。

Macで作業する場合。 

microSDカードをメモリースロットに挿す。
ターミナルを開き、df -hと打ち込んで実行。 
そこで現れた情報から microSDカードの名前を読み取ってメモする。

次に 
sudo diskutil unmount /dev/disk3s1 
のコマンド(「/dev/disk3s1」の部分は、先ほどメモしたカードの名前)を打ち込んで実行。カードをアンマウントする。 

それができたら 
sudo dd bs=1m if=[img_file_path] of=/dev/[sd_name] 
のコマンドを実行する。「[img_file_path]」は、カードに焼き付けたいファイルの名称、「 /dev/[sd_name]」はメモしたカードの名前である。 
このコマンドを実行すると、必要なイメージファイル、つまりvolumioがカードに焼かれ、使えるカードになる。 

というのだが、私はこの世界にまったく暗い。なんだ? この呪文の群れは??
ねえ、ターミナルって何? 
コマンド、って? 
実行って? 

だが、迷ってばかりいてはあの妙なる音楽にたどり着けない。 

「よくわからんが、とにかくやってみるか」 

怖ず怖ずと作業を始めた私は、それが暗黒への道であるとは知るよしもなかった。 

途中、I君に電話をして指導を仰ぎ、何とか volumioをカードに焼くべく、作業を続けた。何度もコマンドを間違い、カードを初期化して最初から作業を繰り返し、

「これで焼けたのかな?」 

というカードを黒コンピュータにセットしてvolumioを初期設定し、volumioにNASを認識させ、楽曲データを読み込ませて音楽を再生しようとする……。

次に、私が最後にI君に書いたメールは、次の通りである。 


どういう訳でしょ。 
いま、2つのコンピューターを立ち上げ直したら、素直にNASを認識しました。いま、多分、音楽データのアップデート中です。
まったく、どうなっているのやら。これで素直に音が出たら、また連絡します。


私は、

「これで何とかなった!」

と安堵の胸をなで下ろしながら、このメールを書いた。
ところが、Updateが終わっても、音はまったく出なかったのだ。 

「おい、これまでに何時間作業をした? それなのにこの結果か?」

何ともならない無力感に包まれながら、日曜日の私は布団に入ったのであった。