08.25
2015年8月25日 再検査
今日は、体の再検査の日であった。ために、朝早くから桐生厚生病院にいって順番待ちをした。
「もしもし」
知り合いのご老体から電話を受けたのは、順番待ちの最中だった。
「ゴメン。いま、体の再検査で病院にいます。短い話ならいいけど、長いんだったら、数日中にお伺いしますから、その時に」
と電話を切った。
再び電話が鳴ったのは夕刻である。
「どうだったの、再検査は?」
えっ?!
「いや、あれから心配でさ。50年付き合った男が、突然前立腺がんが見つかったというので再検査したんだけど、『申しあげにくいことですが、すでに脊髄に転移しており、手術はできません』といわれて、それから1年ばかりで死んじゃってさ。それを思い出したものだから」
ほう、このジッちゃん、俺のことを心配してくれたんだ。ありがたいことである。
「何いってんの。勝手に俺を殺したら困るがね」
と2人で笑って電話を切った。
というわけで、「らかす」をお読みいただいている方々にも、再検査の結果をお知らせする義務があると考えた。だって、今日25日に再検査を受ける、って書いたもんなあ。ひょっとしたら、あなたは、このジッちゃんと同じように心配してくださっているかも知れないし、我が愛しの貴女は、心配してくれているに決まってるもんね!
午前8時45分までには受付を済ませてくれといわれて、その10分ほど前に桐生厚生病院に着いた。無論、いずれは死ぬに決まっている私だって、今この時に
「あなたは不治の病です」
といわれて、すんなり受け入れる心の準備はできていない。多少の緊張感は持って臨んだ再検査であった。
検査項目は
・甲状腺肥大
・肺の気腫性変化
・肝右葉石灰化
・右腎微細石灰化
・C型肝炎の既往症
・γGTPの高値
・中性脂肪の高値
である。これだけ並べられれば、病人を作ることが病院の仕事だと理解はしていても、検査に臨んで緊張するなという方が無理である。
「さて、血液を採られたり、レントゲンを撮られたり、まあ、どれだけこの玉体をいじり回されることか?」
悲痛な思いで順番を待っていた。
「大道さん、お入りください」
声に応じて診察室に入ると、若い美形の男性医である。
「先生、30ぐらい?」
「はい、その少し手前ですが」
「ということは、現役で医学部合格か。優秀なんだ。群馬大学?」
「優秀かどうか分かりませんが、はい、現役で、群馬大学です」
ま、このあたりは、医者とのコミュニケーションのとっかかりである。これがうまく行かないと、その後の診察に響く。
彼は、私の「日帰りドック成績表」を見ながらいった。
「はあ、そうですか。まあ、すべて年齢相応の変化で。それほど心配するほどのこともありませんね。肝臓、腎臓の石灰化って、これ、ある程度の年齢になれば誰でもそうなることですから、今すぐ何とかしなければ、というものじゃありません。ああ。C型肝炎はそんな経緯ですか。だったら、気にすることないでしょう」
「肺の気腫性変化って何ですか?」
「これは、肺の膜が薄くなるんですね。煙草のせいでしょう」
「そうなると、どうなります?」
「息切れがします。つまり、これが昂じると呼吸困難になります」
「そういえば、最近、階段を上ると息切れがすることもありますなあ。まあ、これは運動不足もあるでしょうが」
「ま、運動不足もあるでしょうが、煙草もあるかと」
「どうしたらいいですか?」
「煙草をやめましょう」
「いや、一度やめようと思って減煙したことはあるんだが、1日の喫煙本数が8本ほどに減ったら、まあ、煙草ってこんなに味わい深かったかと発見しまして。以来、減煙は続けてますが、そう、最近は1日15本程度でしょうか」
「それ以外に手はありません」
「減煙とか」
「効果はありません。禁煙です。まあ、禁煙外来をご紹介してもいいのですが、これはご本人のお気持ち次第ですのでねえ。リスクがあることをおわかりの上で煙草を吸われるのなら、それもありかと」
「おっ、いいこといいますねえ。でも、こりゃあ止めなきゃ、って決意しなければいけない時期って、どうやったら見分けられますか?」
「体を動かすとすぐに息切れする、とにかくだるい、なんてことになったら、煙草は`止めなきゃしょうがないですね」
この医者、若い割には話が分かる。いいのにあたったのかも知れない。
「ところで、成績表だと、中性脂肪値が高いので薬物療法を勧めるとありました」
「ああ、そうですね。これは生活習慣病なので、薬がなくても対処できるとは思いますが」
「いや、都会と違って、桐生では本当に歩きません。最近は万歩計は持ち歩かなくなりましたが、持ってた当時は1日800歩、1200歩、何て数字を見てびっくりしたことがあります。東京で働いてると、通勤だけで6000歩、70000歩いきますからねえ。それに、腰を痛めてからは散歩も取りやめています。だから数値が上がったのではないかと」
「じゃあ、薬を出しましょうか。これ、副作用があります。筋肉が破壊されることがあるのです」
「破壊されるとどうなりますか?」
「うーん、足がつったりしますね」
「で、中性脂肪が減ったら出っ張ったお腹は引っ込みますよねえ」
「いやあ、そんな効果はないと思いますが」
あ、そ。
「分かりました。足がつるようになったら服薬を止めると。ところで、甲状腺肥大というのも、初めて指摘されて気になっているのですが」
「ああ、そうですか。じゃあ、これはきちんと検査をしましょう。そう、中性脂肪を減らす薬の効果、副作用も見なければいけないので、1ヶ月後に再受診してください。その時、甲状腺を詳しく検査しましょう。では、今日はこのあたりで」
「えっ、今日は問診だけ? 緊張してきたんですが」
「はい、今日はこれで終わりです」
緊張して臨んだ再検査は、問診だけだった。緊張しただけ損した気分である。5、6万円取られるかと覚悟を固めていたのに、請求額は420円。コーヒー1杯分で安心が買えた。
部分的な不具合は出つつも、総合的には、まだまだ持つようだ、俺の体。
だから、安心しなよ、○○ちゃん!(○○には、貴女の名前を入れてください)
そういえば、群馬県沼田市で中学生が列車にひかれて死んだ。我らのNHKは昼のニュースから
「警察は自殺の疑いもあるとして捜査」
と、学校でのいじめ——自殺を強く臭わせる報道をしている。
だけど、ホントかよ。事実として分かっているのは、中学生が列車にひかれて死んだというだけ。遺書があったとの報道はないし、学校でいじめがあったとの話も出てこない。自殺の裏付けが何もなく、ニュースを見るかぎり、「決めうち」でしかない。
ま、報道する側からしたら、単なる事故ならニュース価値は低いが、いじめによる自殺なら大ニュースだ。それをスクープしたら俺の出世は間違いない!
そんな、記者個人の薄汚い計算が透けて見えるような気がするのは私だけか?
事実が明らかになるのを待ちたい。