03.24
2017年3月24日 ズートピア
とある方に原稿執筆の依頼を受け、しばらくパソコンとにらめっこした。ために「日誌」を書く時間がなかなかとれず、時間があってもその気にならず、すっかり失礼してしまった。お許しありたい。
が、何故に私に原稿執筆の依頼? 「らかす」の文章に魅せられた? まさか!
我が暮らしの困窮ぶりにご同情頂いた? あり得る!
いずれにしろ、年金以外の収入がほとんどないいまの暮らしにはありがたい。その原稿は今日の午前中にメールで送り、一段落したところである。ホッ。
で、である。
数日前から腰が痛い。万年腰痛の私であるから仕方ないが、数日間椅子に座りっぱなしでパソコンとにらめっこした結果か。それなら、暮らしのためと諦めるしかない。
それとも、季節の変わり目に付きものの傷みか。
かかりつけの整形外科医は
「そうなんですよね。何故か分からないんだが、季節の変わり目になると腰痛を訴える方が増えるんです」
とおっしゃる。
でも、である。寒さに向かっての季節の変わり目なら、筋肉が収縮して寒さに備えようとする副作用かとも考え得るのだが、やっと寒気が緩み、これからポカポカ陽気になって筋肉もたるんでくる季節の変わり目に、どうして腰が痛むのか。
医学は進歩したとはいいながら、まだそんなことも分からないのだから、人間の体とは複雑を究める。
NHKの「ためしてガッテン!」で宣伝している、腰痛を防ぐ寝返り体操も試みたことはある。確かに最近、夜寝込んだままの姿勢で朝目覚めていたから、
「腰痛の原因は寝返りをしないことか。なるほど思い当たる」
と納得したからである。だがしばらく続けても効果はなかったから、私の腰痛は特殊なのだろう、きっと。
まあ、季節性の腰痛ならそのうち治まるはずだから、しばらく我慢をするしかないか。
それはそれとして、最近、昨年のアカデミー賞受賞作を立て続けに見た。WOWOWでまとめて放映したからである。確か前回は、人種差別の選考だと騒がれた記憶があるが、それは横に置くとしても、実につまらぬ映画が受賞していて
「はあ、映画全盛時代も終わりかね」
と情けなくなった。
スポットライト 世紀のスクープ(作品賞、脚本賞)
カトリック教会が長年隠し通してきた神父たちによる児童虐待、児童性愛をスクープしたボストンの地元紙の実話である。巨大な宗教権力に挑む新聞記者たちの活躍。そういえば、最近は新聞記者が活躍するドラマ、映画は珍しいなあ、と期待を膨らませたのだが、これ、映画としてはまったくつまらない。優秀な編集長と優秀な記者たちと、優秀な部長さんのチームが大スクープを放った。ただそれだけの話である。
そもそも、児童虐待といい児童性愛といい、いったいどんな犯罪が起きたのかを描くことなく、とにかく新聞記者が走り回る。それだけの映画である。謎解きもなければ記者の葛藤もない。煎じ詰めればドラマがない。
元になった実話は超巨大級のスクープなのに、この映画の作り方はいったい何?
レヴェナント 甦りし者(監督賞、主演男優賞、撮影賞)
何ということはない復讐劇。見せ場らしい見せ場は、デカプリオが野生のクマととっくみあいをするシーンだけ。あとは、多分こうなるんだろうと思うと、そうなってしまう駄作。
にしても、あのとっくみあいのシーンはどうやって撮ったんだろう? 本当に巨大なクマがデカプリオにのしかかり、噛みつき、爪でひっかくんだから。まあ、撮影賞だけはこのシーンで納得できるが。
ルーム(主演女優賞)
誘拐され、強姦され、7年間も小屋に閉じ込められて子供まで生まされた女性とその子の話。延々と小さな部屋の中でのシーンが続く。退屈。衝撃と感動の、なんてキャッチコピーもあるが、衝撃も受けなければ、感動もしなかった私は変人か?
サウルの息子(外国語映画賞)
これ、カンヌ国際映画祭のグランプリも受賞してるんだよね。でも……。
強制収容所に収容され、ドイツの兵隊どもに、収容所の下働き、死体処理係としてこき使われているのがサウル。その彼が、どういうわけか、収容所で殺されたひとりの少年に執着、ユダヤ教の教理に従って正当に埋葬するのが自分の氏名だと思い込んでしまう。それだけの話。
といろいろ見てきて、
「時間があったら見てね」
といいたくなったのは、今年のアカデミー賞長編アニメ賞を受けた
ズートピア
である。
動物の楽園、ズートピア。この街に憧れたウサギの少女が警察官になって移り住む。体が小さく、周りの動物警察官にバカにされて交通係しかやらせてもらえなかったウサギの少女は、人手不足を理由に警察がいやがった捜索願を勝手に引き受け、捜査に出かける。そのころズートピアでは肉食動物14人(と数えた方がいいような気がする)が行方不明になる事件が起きていた。人捜しに走り回っていた彼女は、いつの間にか14人の行方不明事件に巻き込まれていく……。
という話で、詰まるところ、行方不明事件はズートピアの少数民族である肉食動物の排除を狙った陰謀事件でウサギの少女が見事に解決するのである。
まあ、一見、バカにされたウサギの、しかも少女が、様々な障害にもめげずに頭脳の冴えで一躍ヒロインになる、子供向けのお話だ。しかし、見ていて、ふと思ったのだ。
「これ、ハリウッド、ディズニーがトランプ大統領に突きつけた批判ではないのか?」
ズートピアで多数を占めるのは草食動物である。この街では肉食動物も社会のマナーを身につけ、ほかの動物に襲いかかることはなく、平和に共存していた。
それなのに、草食動物のトップにいる連中には、身体能力で勝てない肉食動物が目の上のたんこぶだった。邪魔者は排除しなければならない。彼らが肉食動物排除に使ったのは、食べると野性に戻る野菜だ。これを食べさせられた肉食動物は野性の凶暴性を抑えられなくなる。行方不明になった14人は、凶暴ななったが故に、当局によって内密に監禁されていたのである。それを暴いたのがウサギの少女だった。
と見てくると、どうです、草食動物のトップが、ヒスパニックを、アラブの人々を閉め出そうとあの手この手を繰り出すトランプ大統領に見えてきませんか? 私にはそう見えたのです。
ほう、ほとんどがクリントン支持だったハリウッドは、大統領選挙では負けたが、まだアニメに託してトランプに宣戦布告する根性があったのか。
これ、そんな映画だと思います。
でも、だとすると、あのウサギの少女って、現実社会ではいったい誰? そもそも、現実社会にそんな人物はいるのかね、とも考えながらアニメを楽しんだ私でありました。