09.14
2017年9月14日 将来の夢
小学生か中学生が、先生に無理矢理書かされる作文のテーマに似るものを、今日の表題とする。
「そんな! あんた幾つにおなりですか、大道さん? 気は確かですか?」
どこかからか、そんな声が聞こえてきそうな気がする。
が、ご安心召されよ。私は正気である。狂ってなどいない、多分。
私が将来の夢を持ち、その夢を公にする年齢でないことは、誰よりも私がよく分かっている。夢を持っても、実現する時間が極めて少ない。私は、
「ああ、あれができなかった、これができなかった」
と破れた夢をしのびつつ、
「これだけは、こうなってくれたらいいのだが……」
とかすかな希望を胸に抱きながら日を送る、まあ、情けない年代に入ったことを自覚している。
では、将来の夢とは?
私の子どもたちは、将来の夢より今日、明日をテーマに生きざるを得ない年代になった。彼らにも、将来の夢、というのは似つかわしくない。
いちばんピッタリするのは、彼らの子どもの年代である。敬樹が中1、瑛太が小5、璃子と嵩悟が小1で、生まれたばかりのあかりはまだ0歳。これから始まるそれぞれの人生に、大きな夢を描かねばならない。
その話は、妻から来た。
「璃子が、東大に行きたいんだって」
昨日の話である。すぐ前に書いたが、璃子はまだ小学1年生。もう大学まで夢の範囲を広げたか。でも、我が親族には東大では一人もいないぞ。なぜ東大なんだ?
「知らない。聞かなかった」
我が妻女殿の会話能力はそのレベルである。
それで夕刻、璃子に電話をした。
「璃子、東大に行くんだって?」
「うん」
「どうして東大に行きたいの?」
「行ったっていいじゃない」
「もちろん。璃子なら行けるさ」
「でも、お兄ちゃん(瑛太のこと)は、行けないっていうの」
「そんなことはないよ。勉強をがんばれば行けるよ」
「璃子は勉強、がんばってるモン!」
「ああ、そうだな。いつも勉強をがんばってるよな」
「だから行けるね」
「うん、行ける。でも、璃子。どうして東大に行きたいんだ?」
四日市の敬樹もかつて
「敬樹は東大に行く」
といった。
「何しに?」
と聞いたら、
「レゴ部があるのは東大だけだから、東大に行ってレゴ部に入る!」
極めて説得力のある進路決定の仕方である。さすがに敬樹である。
では、璃子は何故に東大を目指すのか?
「あのね」
「うん」
「璃子はね、ミス東大になりたいの!」
ミス東大。ふむ、そのような進路決定動機があり得たか。最難関の大学の門をくぐり、ミスキャンパスを目指す。健全な動機である。それとも、慶応、上智では「ミス」へのハードルが高いと見たか? 確かに、東大のミスは、それほど遠くの目標ではない。
まあ、なんと現実的な!(もちろん、東大に入るのは難しいわけですが)
「そしてね」
驚いている私を尻目に、璃子は言葉を継いだ。
「東大チームでクイズ番組に出るの」
そういえば璃子、瑛太の一家は、クイズ番組の愛好家であった。それには確かに、芸能人に混じって東大チームがいた。それに出たい。
ミス東大の璃子が、難しいクイズに答える東大チームの一員としてテレビに出たら、視聴者の目を釘付けにすることは疑いない。
これも健全な……、動機である。
がんばれよ、璃子!
おっと、同学年の嵩悟の夢にも触れなければ公平を欠く。
嵩悟の夢は
レスキュー隊
である。嵩悟はTBSでやっている「トミカハイパーレスキュー ドライブヘッド」の大ファンなのだ。毎週土曜日朝7時からの放送を楽しみにし、早起きして見る。それだけでは飽きたらず、
「ボス、録って」
というわけで私は毎週、この番組を録画してBD-Rに焼き、四日市まで送っているのである。
ふむ、この年代はやはり、女の子の方が精神的成長が早いのかねえ。夢が現実的である。成長が遅い男の子はいつまでも夢物語の中で生きようとする。
2人とも健康に成長している。それが嬉しい。