03.16
2018年3月16日 またまたトランプ
やや旧聞になったが、あの不逞の輩、トランプがまたまた閣僚の首を切った。今度はティラーソン国務長官である。様々な問題でトランプと意見を異にしていたという。ということは、トランプ政権のなかでは比較的まともな人物だったということである。後釜はポンペオCIA長官。こんな支離滅裂な男の元でも成り上がりたいというのだから、ろくな男ではない。
その程度のことは、皆様もテレビや新聞でご覧になって感じられていることだろう。
それなのに、私がわざわざ旧聞を蒸し返そうと思い立ったのは、北朝鮮問題が気になって仕方がないからである。
一方で、これまでアメリカの外交を取り仕切ってきた閣僚の首を切り、返す刀で金正恩との首脳会談にのめり込む。この構図が何とも不気味なのだ。
国家元首同士の会談は、実は儀式に過ぎない。重要案件は両国の官僚が事前に何度も話し合い、合意をつくっておく。その上で元首と呼ばれる人たちがにこやかに握手を交わし、別室に引っ込んで話し合ったような顔をして、
「俺たち(最近は女性の元首もいらっしゃるが、ここはやっぱり「俺たち」と書きたい)、約束しちゃったモンね」
と記者会見をする。
いってみれば、カメラの前でにこやかにハグしたりする元首というのは、シナリオ通りに動く舞台役者に過ぎないのである。
米朝首脳会談は、この原理原則を全く無視することから始まる。
北朝鮮は、金正恩でなければ何事も決められない国なのだそうだ。だから、事前に官僚が話し合っても、当日金正恩さまが
「僕ちゃん、そんな風には思わない」
とおっしゃればすべては元の木阿弥と化す。であれば、事前の準備なんてするだけ無駄。その理屈は分かる。
だが、アメリカは少なくとも、民主主義という政治的手続きに慣れた国である。外交交渉をも数限りなく繰り返してきている。どんなアホウが大統領に選ばれようとも、国の施策に間違いがあってはならないから有能な官僚群がシナリオを書き、準備を整え、大統領の舞台を演出する。
トランプは、かつてのアホウな大統領の上を行くアホウなのだろう。その原理原則を頭から無視してかかった。
5月までに首脳会談を開くというのは、官僚の事前打ち合わせは行わない、というに等しい。
つまり、両国は何の下準備もせず、首脳同士が突然話し合うのである。
金正恩とトランプが、突然会って、突然意見を交換し、突然合意する。
その結果は、日本を含むアジアに大きな影響をもたらすことは避けられない。2人のこれまでの行動、発言を見ていれば、この2人にはまともな知識の蓄積もなければ現状の分析力もなく、論理的に考える能力も一般水準を大きく下回ることは明白である。その2人が、自分の安全、自分の権力、自分の名声、自分の人気しか考えない2人が、世界を動かす合意をしかねない。
不安にならない方がどうかしている。
それでもこれまでは、ほんのかすかな救いがあった。トランプと外交政策を異にするティラーソン国務長官の存在である。
ことはアメリカの外交政策に関わる問題である。であれば、閣内でほとんど唯一、トランプに直言できるといわれていたティラーソン国務長官の考えが、米朝首脳会談に反映するはずだ。それが救いだった。
だが、米朝首脳会談が開かれるときには、ティラーソン国務長官はもういない。とすれば、イエスマンで政権を固めたトランプは自分だけの考え(考えることがあれば、その能力があれば、であるが)で首脳会談に臨み、金正恩も自分だけの考えで受け答えする。
2人の精神異常者に我々の明日がゆだねられる。こんなに恐ろしいことが他にあるか?
私は真面目に、いまこそゴルゴ13の登場をこいねがう。ゴルゴよ、2人の眉間を撃ち抜いてくれ!
そんな気分になってしまう、危うい時代になった。
ほんと、どうなっちゃうんだろうね?