2020
03.09

群馬県もとうとう、新型コロナウイルス感染地区になってしまった。

らかす日誌

全国各地に新型コロナウイルスが広がる中で、感染者が出ていない県の1つだった群馬県でも、とうとう感染者が出た。
テレビ画面に速報が流れたとき、

「おそらく、高崎市か前橋市、あるいは太田市であろう」

と予想した。そう、速報では感染者が出た都市は流れなかったのである。午後7時から山本知事(この人、自民党のお偉いさんのご機嫌取りで成り上がったという印象を持っているのは私だけか?)が詳細を発表するとのことだった。
そこで予想の必要が出たのだが、高崎市は群馬県で唯一新幹線が止まる駅を持ち、前橋市は県庁所在地、太田市は国際企業であるスバルの工場があり、と人の出入りが多い都市である。その分だけ、感染のリスクが他都市より高いだろうと考えた。

蓋を開ければ予想は的中し、太田市であった。ん? 太田市?

3月はじめからの小・中・高校一斉休校は賛否両論を招いた。私は賛成派に立ち、群馬県の市町村もほとんどが国の方針に従って休校に入った。その中で太田市は我が道を行き、

「登校の判断は保護者の選択とする」

と従わなかった。
スバルとその関連の工場が支える太田市は、おそらく共稼ぎ世帯が多いのだろう。児童生徒を家庭に閉じ込めることで親が働きに出られないようなことになれば工場の稼働にも響く、という事情もあったに違いない。

しかし、私の解釈はややひねくれていた。ここの清水市長は何かと目立つことが好きである。だから様々な話題を提供してマスメディアには評判がよろしいのだが、私のようなひねくれ者には、単なる

「いい格好しい」

に見えてしまう。だから

「俺は国の市指針に盲従するような柔な市長じゃないぜ」

と、またまた大段平を振ってみせたのではないか、と見えたのである。大丈夫かね? 相手は目に見えないウイルスだぜ。多分、太田には感染者は出ないと踏んだのだろうが、出たらどうする? というわけである。

その太田市で群馬県初の感染者が出た。そして、遅ればせながら、市内の小中学校の休校に踏み切った。

とここまで舞台が進めば、

「それ、見たことか!」

と切って捨てるのが従来の主張からすると筋なのかも知れなのだろう。
ところが、私はむしろ、最高責任者の孤独を思ってしまったのである。俺、どこか狂ったか?

国が小・中・高校の臨時休校という指針を示した。市政を預かる長として一番楽な選択は、国の指針に素直に従うことである。何しろ政府が言うのである。混乱は起きるだろうが、その責任は政府にあるのだ。俺、知らんもんね! と知らぬ顔の半兵衛を決め込んでいれば済む。

ところが清水市長は、多少の芝居っ気はあったのだろうが、国の指令より地方自治の原則を上に置いた。高校は県の管轄だが、小中学校は市が取り仕切る。そこに国が指を突っ込むことは許さない! 多少格好良くいえば、清水市長の決断はそういうことと解釈できる。背景には、臨時休校が引き起こすだろう家庭の混乱、職場の混乱、市経済の落ち込みなど、小中学校を休校した場合に予想される混乱を避けたいとの思いがあったはずだ。何しろ、群馬県ではまだ感染者が出ていないではないか! それなのに一斉休校は行きすぎではないか?
太田市長はあえて火中の栗を拾ったともいえる。

そのまま感染拡大が終息していれば、太田市長は勇気ある市民派市長として記憶されたかも知れない。だが、あろうことか、群馬県初の感染者が太田市内から、それも保育所の保育者から出てしまった。園児や職員3人にも症状があるという。さて、清水市長は歴史にどう記されるのか。

しかし、感染者が出たあとの対応はすばやかった。保育所名をすぐに公表し、

「いったいどこの保育所? まさかうちの子が通うところでは?」

などという疑心暗鬼が生まれるのを防ぐ措置を執った。情報の扱い方としては高く評価できる。そして、小中学校の臨時休校に踏み切った。格好良く国に逆らってみせた直後である。ばつが悪かったかも知れないが、前言に固執することなく、君子豹変す、を実践した姿勢は清々しい。

にしても、太田市といえば桐生の隣。大丈夫か、桐生? 感染者が出たら、迅速な役所の対応は期待できるか?

さて、関西方面で多数の感染者を出しているのが大阪のライブハウスである。どうやら複数のライブハウスが感染場所になっているらしい。
知らぬ間にコロナウイルスに感染した方々は被害者である。知らぬ間にコロナウイルスに感染し、知らぬ間に誰かにう移してしまった人も被害者だろう。だが、コロナウイルスの感染拡大が懸念され、密閉空間に多数が詰めかけるような場所は避けようという専門家の指摘がありながらライブハウスにノコノコ出かけ、その結果感染した方々は、果たして「被害者」か?

コロナウイルスに汚染されたクルーズ船から下船した方々を公共交通機関で帰宅させたお役人同様、

「危機感が足りない!」

と指弾されても仕方がないと思うのは私だけか?
平和惚けと言われる日本での緊急事態は、普段は表に出てこない我々の一面をあぶり出しているようである。

さて、中国である。昨日から今日にかけての死者数は22人。一時は1日の死者数が100人を超えていたから、一段と沈静化が進んだといってもいいと思う。
中国で初の死者が出たのは1月10日。それから2ヶ月たって中国はここまでこぎ着けた。日本はいつ頃ピークを打つのだろう? 中国が2ヶ月でできたことを、オリンピックまで引きずるようなことになったら、安倍政権、厚生労働省、感染症の専門家と呼ばれる方々の責任は重大と言わざるを得ない。
まあ、オリンピックが中止になれば私は喜ぶ方であるが、新型コロナは一日も早く押さえ込んでもらいたい。