2022
10.29

首相とはなんと気楽な稼業であることか。ばらまきをみて、そう思った。

らかす日誌

総額39兆円。事業規模72兆円。岸田内閣が打ち出した総合経済対策を見て、

「首相とはなんと気楽な商売であることか!」

と唖然とした。岸田さん、ほんとにあんた、頭使ってんの?

急激な円安である。油を中心とした輸入物価が勢いよく跳ね上がり、ガソリン代、電気代、ガス代に止まらず、日用の食品にまで高騰の波が押し寄せてきた。インフレーション。国民生活の危機である。ここまでは、岸田さんと私の認識は多分、余り変わらない。

違うのはその先だ。
インフレーションには原因がある。その最大の原因はいまの円安だろう。それに国内産業の弱体化が乗っかっている。その根本原因に手をつけず、

「とりあえず、物価が上がった分だけお国の方から手当しますから」

というのは対処療法に過ぎない。対処療法を繰り返しても、病原を退治しない限り病が癒えないのは子どもでも分かることではないか。国のトップともあろうものが、対処療法しか思いつかないか?

しかも、だ。対処療法として使われるのは国のお金である。国のお金とは国民が納める税金である。つまり、我々のポケットから国が吸い上げたお金が、物価高対策として私たちに戻ってくるだけなのだ。
しかも、である。いま国の金庫から出ていくお金は、税金として私たちから強制的に持って行くお金だけでは足りていない。足りない分は国債を発行して賄っていることはみんなが知っていることである、つまり、いま日本国は借金経営であり、気前よく金をばらまくゆとりなんて何処にもないのである。それなのに、あたかも政府は国民の暮らしを懸念しているような顔をして39兆円もの金をばらまく。ばらまいていただいたお金は、やがて増税として私たちのポケットから吸い上げられるのは火を見るより明らかではないか。
岸田内閣は国民に、腹が減ったから己の足を食うタコになれと言っているのである。それって、おかしくないか?

しかも、だ。富めるものには薄く、貧しきものには厚くという金の配り方なら幾分怒りを和らげてもいい。電気代、ガス代を引き下げる手法がどのようなものか知らないが、一律に引き下げる施策だとすると、電気もガスも、より多く使うのは富者である。電気代、ガス代が国の金で安くなれば、料金引き下げ幅が大きくなるのは富者である。貧しくて電気もガスも倹約している家庭は1000程度の恩恵しかないのに、富める者は1万円の恩恵を受ける。それって、おかしくないか?

さらに唖然としたのは、所得制限なしに育児手当10万円を出すと宣うたことだ。おいおい、年収1億円家庭にも、2歳までの子どもがいれば10万円くれてやるってか? あなたは政府による富の再配分という近代国家の機能の1つを無視するのか?

それに、である。そもそも育児手当とは少子化対策の施策であるはずだ。それが緊急経済対策として打ち出される。それって、単に金をばらまいて、落ち目の支持率を何とかしようという魂胆が見え透いているような気がするが、皆様はどうお考えになるだろう?

経済を取材する記者さんたちにもお願いしたい。
円安の最大原因は日米の金利差である。だが、日銀の黒田総裁は頑として金融緩和を継続すると繰り返している。いま国内金利を上げれば景気回復の足を引っ張るという理由であると私は理解している。

確かに、日本の産業の弱体化は目を覆いたくなるほどだ。バブル終焉から30年ばかり。その間、日本経済はちっとも成長しない。明るい話がちっとも出て来ない。だから、いま金利を引き上げるべきではない、というのは1つの理屈ではある。
しかし、私が日銀総裁の記者会見に出たら、1つだけ聞きたいことがある。

「金融緩和も間もなく10年になります。だが、日本の経済力はちっとも立ち上がってこない。ゼロ金利は何の役にも立っておらず、日本経済停滞の原因は他にあると思われるが、いかが? それでも金融緩和を続けるのですか? 日銀は物価の見張り番であるはず。いまの輸入インフレを止める気はないのでですか?」

どこかに、そんな質問をした記者がいるのかも知れないが、この疑問に対する黒田総裁の見解がニュースに出て来ないので、あえて書いた次第である。

そうそう、薬を飲み始めて3日。心なしか、尿の出が良くなった気がする。ひょっとすると大過はないか? ま、これは希望的観測ではあるが。