03.19
ふきのとうの料理に失敗した話。
「大道さん、ふきのとうを食べましょう。僕なんか、今日は25個も食べました」
と電話口でしてくれたのは高崎のS院長である。ふきのとうには抗がん効果がある、ちょうど今が旬だから食べない手はない、というのである。
念の為、「ふきのとう 抗がん」でググってみた。おお、何と岐阜大学のページが出て来た。岐阜大学 高等研究院・連合創薬医療情報研究科が研究を続けており、クラウドファンディングで研究費を募っているではないか。
それによると、ふきのとうには「ペタシン」という物質が含まれており、こいつががんの増殖、転移を防ぎ、副作用が極めて少ないことが分かったというのである。
「ペタシンはほとんどのタイプのがんが共通して依存している活発な栄養・エネルギー代謝経路を特異的に阻害していることがわかりました」
とあり、これも糖質制限と同じように、どうやらがん細が餌を手に入れるのを邪魔するらしい。
こんな図表もついていた。
なるほど、こんな研究結果が出ているのか。嬉しいことに、この図表によれば、前立腺がんも「ペタシン」によって全滅するらしい。
ただ惜しいことに、この結果が出た実験の詳細はここには記載されていない。「ペタシン」を投与したのは人間なのか、実験動物なのか。それも生体に投与したのか、取り出したがん細胞に作用させたのか。この結果が出るのに、どの程度の「ペタシン」を、どれくらいの期間投与したおか。その量は、ふきのとうを何個食べれば得られるのか。
患者としてみれば、知りたいことはたくさんあるが、まあ、ここは
「食べないより、食べた方が良かろう」
と考えることにした。
少し蛇足をつけ加えると、岐阜大学の研究チームは、「ペタシン」の構造の一部を変化させれば、抗がん作用がより強い薬を創り出せる可能性があるという。その研究資金を得るためのクラウドファンディングなのだそうだ。
ふむ、このような研究が、クラウドファンディングで金を集めなければできないとは! このような研究にこそ、国は資金を投入すべきだ、と考える役人、政治家はいないのかしら?
というわけで、今朝ヤオコーに買い物に行ったついでに、ふきのとうを2パック買って来た。そこまではよかったが、さて、どう料理したら食べられるのだろう?
「私は、知らないからね。料理するんなら自分でやって」
とは、我が妻女殿のお言葉である。まあ、これが我が家の現状であるかぎり、自分でふきのとうをやっつけるしかない。
ネットで調べた。何でも下処理が必要なのだそうだ。まず根元の部分を切り離し、変色した葉っぱも取り去る。その上で、塩、または重曹を入れた湯で3、4分茹でる。ここまでが下処理である。あとはテンプラにするか、それとも味噌和えにするか、とあった。
鍋に湯を沸かし、重曹を加えてふきのとうをぶち込んだ。なるほど、これなら下処理をしなければ食べにくいはずだ。湯が、見る見る緑になる。下処理をせずに口に入れたら青臭くて吐き出したくなるに違いない。おー、泡まで緑だぞ!
もうよかろうと火を止めたのは、恐らく4、5分後である。まず、ザルで湯を切る。
「あれ?」
何だか、ふきのとうが半分溶けてしまっている。ネットで見た映像では立派に形が残っているのに、いま目にしているのはグズグズになって原型をほとんど止めないふきのとうである。あれま、茹ですぎたか?
が、捨てるのはもったいない。まず冷水で洗う。溶けてしまったところが流れ落ち、ふきのとうらしきものはほとんど残っていない。まあ、失敗は成功の母である。今回はこれで我慢しよう。
ボールに移し、冷水を張る。まだ溶けちゃったふきのとうの屑がたくさん水に浮く。いかん、水を取り換えねば。
数度水を入れ換え、やっと形あるものだけが残った。これではテンプラは無理である。味噌和えにするしかない。
ふきのとうの水気をできるだけ切り、をみじん切りにする。用意するのはフライパン、ココナツオイル(これはお好みで)、味噌、みりんである。ネットで見たレシピには「砂糖」もあったが、糖質制限中でなくても私は砂糖を嫌う。勝手にレシピから除く。
フライパンでココナツオイルを溶かし、そこにふきのとうを入れて炒めた。もう良かろうというところでみりんを振りかけ、味噌を加えた。いかん。味噌が固まる。これは、味噌をみりんで溶いた上で振りかけた方が良かったか? と今さら考えても遅い。やむなくかき混ぜる。味噌が固まらないよう、必死にかき混ぜる。
出来上がった。一口食べてみた。まあ、歯ごたえはほとんどないが、食べられないことはない。うむ、今晩の酒の肴にしよう。
というわけで、初めて挑んだふきのとう料理は散々のできに終わった。しかし、失敗の原因は分かっている。近いうちに再挑戦し、立派な料理に仕上げてみせる、と心に誓う私であった。