10.27
私と朝日新聞 2度目の東京経済部の15 サンディエゴでは遊んだ記憶しかないのです
サンディエゴでは、国境の検問所を見た。アメリカからメキシコへ、メキシコからアメリカへ、人や車が行き来していた。国境が海の上にある日本では絶対に目に出来ない風景である。
東京銀行の方々は週末もお付き合い下さり、シーワールドに案内して頂いた。
「えっ、30過ぎて遊園地?」
と腰が引けた私に、
「いや、これは一見の価値があります」
という言葉で引きずられた。
見物はシャチのショーだった。大きなプールで数頭のシャチが泳いでいる。プールの周りに観客席があり、ここで様々なシャチの芸を見物する。
獰猛で知られるシャチが、飼育員の合図に従って跳んだりはねたり、様々な曲芸を見せる。思わず目を奪われていると、その目前で1頭がはね、大きな水しぶきを上げながら再び水中に飛び込んだからたまらない。大量の水しぶきが上がり、観客席の前の方は水浸しになった。私もその一員だった。
「くそ、やられた!」
と思いながら、でも楽しい休日だった。
そのシャチのショーは、2017年1月で打ち切られたらしい。2010年、トレーナーがシャチに殺されたことから厳しい目が向けられるようになり、飼育動物愛護団体の反対運動も高まっていたそうだ。
しかし日本では、動物園の飼育係がライオンなどに殺されても、ライオンの檻を閉鎖しろ、という声は出ない。ここは日米の国民感情の互いか。
それに、動物愛護団体というのはどうも理解しがたい。牛肉、豚肉などは平気で食べながら、イルカを守れ、鯨を守れ、そしてシーワールドではシャチを守れ、とくる。彼らは守るべき動物と食べてもいい動物をどう区分けしているのだろうか? シャチのショーは楽しかった。それを取りやめさせるとは……。いい加減な運動と思えてならない。
サンディエゴで宿泊したホテルで、ピアノの伴奏でJphn LennonのImagine、Loveを歌ったのも思い出の1つである。そのいきさつは「「とことん合理主義 – 桝谷英哉さんと私 第6回 :たこ焼き先生 III」で書いた。ついでだから、該当箇所をここにコピペしておこう。
私も米国のサン・ディエゴに行ったとき、本を買った。ビートルズの写真集、ジョン・レノンの伝記、それにあと2,3冊。
ホテルに戻り、買った本をロビーで眺めていると、ボーイが寄ってきた。寄ってきて、
「お前はジョン・レノンが好きなのか?」
と聞いてくる。
日本語でこう書くと、
「客を客とも思わない生意気なボーイだ」
ということになるが、英語で
“Hi!, do you like John Lennon?”
と書くと、失礼な感じがしない。むしろ、人なつっこいいい人という感じがする。不思議なものである。
それを切っ掛けに、私のおぼつかない英語で雑談をしているうちに、
「お前は、ジョンの歌を歌えるか?」
ときた。
「いや、その、歌えないことはないが……」
「では、今日の夜、このホテルのバーで歌え」
「え、でもここにはカラオケはないだろう」
「大丈夫である。私はピアノの演奏ができる。私が伴奏する」
「でも……」
「歌えと言ったら、歌え!」
「はい」
大変なことになった。
歌わされる曲は、ジョンの名曲、「Imagine」である。
ちょっと待てよ、歌うには歌詞がいるぞ。覚えているかなあ…… ?
それから部屋に戻って2時間あまり、四苦八苦してノートに歌詞を書き出した。
その夜。
バーには、当然10数人の客がいた。そこで歌った。みんな拍手してくれた。アンコールを求められ、「Love」も歌ってしまった。一段と拍手が大きくなった。
ギャラもなければお捻りもなかった。でも、気持ちよかった!
定年後は歌手にでもなるか?
こうしてみると、私は「San Diego」の日本語表記を3種類使い分けている。新聞記事に書いたときは「サンジェゴ」、最近は「サンディエゴ」、そして「音らかす」に書いたときは「サン・ディエゴ」。いい加減なものだ。
そろそろ、そのサンディエゴともお別れである。しかし、こうして必死に記憶を蘇らせているのだが、遊んだことは明瞭に浮かび上がるのに、さて、ではどんな仕事をしたのかとなるとほとんど覚えていない。きっと、仕事は楽しくなかったのだろう。
次の目的地はメキシコシティである。