2024
05.14

私と朝日新聞 桐生支局の15 人体は放射線に弱くて強い

らかす日誌

第3章 人体は放射線に弱くて強い

放射線の人体への影響。
X線が身体の組織に当たると、その中で2次電子が発生して、それが細胞をよぎると細胞内にイオン化(電離)の作用を起こす。細胞は大部分が水であるので、主に水分子がイオン化する。正の電荷を持った水分子(H2O+)は普通の水と反応して水酸遊離基(OH)を作り出す。これは強い化学反応力を持つ毒物で、放射線作用の主役である。
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化学に弱い私には難しい説明である。ここは、放射線が人体に当たると、そのために細胞内に水酸遊離基という毒物ができる、程度の理解しかできない。
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体重50kgの人は、体内に100gのカリウムがある。このカリウムの1万分の1、つまり0.01gは放射性カリウムで、放射線を出している。3000ベクレルの能力を持つ。つまり、体重50㎏の人の体内では、毎秒3000の放射線が発射されている。主にベータ線で、10分の1がガンマ線。ベータ線は250個の細胞を通過すると消滅する。これで計算すると、毎秒75万個の細胞が被曝しており、被曝の量は0.1ラド=0.001グレイ=0.001シーベルト=1ミリシーベルトとなる。
つまり、日常生活の中で、私たちは被曝を続けている。

話は変わる。
女性が妊娠すると、受精卵は6日目に数十個まで増え、子宮壁に着床する。 それから1週間たつと、母胎から栄養をもらう準備が整う。
3週から7週にかけてを胚子期という。この期間に、各種の器官、つまり神経、心臓、手、足、目、耳、口、外部生殖器のもとができる。この時期に母胎が放射線や薬物に曝されると、高率で奇形が発生する。
8週から37週は胎児期で、胎児は人の形になり、放射線や薬物にも抵抗力を持つようになる。
妊娠から出産まではこのような経過をたどる。

では、なぜ胚子期は奇形発生の危険が高いのだろうか。それは、細胞が活発に分裂を繰り返す時期だからである。各器官の原型に小さな傷ができると、細胞分裂で細胞の数が増えるにしたがって目にみえる奇形になると考えられている。

しかし、放射線被曝の影響を知るためにこの時期を観察するのは容易ではない。だから、成人になってからも細胞が活発に分化している血球組織で放射線の影響を調べる。

体内で、赤血球は毎秒200万個生産されている。もとになる細胞が12回細胞分裂し、赤血球になる。
白血球の主要成分である顆粒球は、13回から14回の分裂で生産される。

分裂する細胞は放射線に弱い、というのが経験法則である。だから、放射線を浴びると、これほどの回数分裂を繰り返して作り出されている赤血球、白血球の生産が中断する。
放射線を被曝をすると、白血球は10日後と30日後に減少する。しかし、赤血球はほとんど減らない。これは白血球の寿命が数日と短いのに対し、赤血球の寿命は120日もあるためである。寿命が短い白血球は被曝で生産が止まると、すぐに減り始める。しかし、寿命が長い赤血球は一時的に生産が止まっても、ほとんど減らない。
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本にはここまでしか書かれていない。やや分かり難いので、以下は私の解釈である。
この文章の趣旨は

1,分裂しない細胞では、放射線の影響は出ていないこと
2,放射線の影響を受けて一時的に赤血球、白血球の生産は止まるが、その後生産は再開されること

だと思う。
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精子の減少は200ラド=最低2シーベルト(最低と書いたのは放射線によって荷重係数が違うからである)の被曝で現れる。この場合、約半年後に精子数が最低になり、回復には1年~2年かかる。
精子の生産には13~14回の細胞分裂が必要である。その中でも減数分裂(難しいので、説明は省略するが、知りたい方はリンク先を見ていただきたい)の時期が一番放射線に弱くなる。
健康な子孫を残すための精子は人類にとって極めて大切なものである。このため、欠陥精子をつくらないように、精子をつくる過程では何回も検査があり、少しでも傷ついた細胞があると、その細胞の自爆装置のスイッチが入り、その細胞を殺す。この作用をアポトーシスという。

皮膚や胃、腸、肺などの表面の細胞の入れ替えも、細胞分裂で行う。しかし、沢山の細胞で分担する体制をとっているため、精子ほど放射線に弱くはない。中でも皮膚は強く、致死量の放射線を浴びても皮膚に障害は起きない。
放射線に弱いのは①生殖腺②骨髄③腸④皮膚、の順序である。

では、分裂期の細胞は、なぜ放射線に弱いのだろう。
それは、細胞内のDNAの2本の鎖が2本とも切られてしまうからだと考えられている。200ラド=2シーベルトの放射線を浴びると、1つの細胞で2本ともDNAの鎖を切られる箇所が60ほどできる。このうち90%は身体が直してしまうが、 修復が完成しなかった1割の傷を持ったまま細胞分裂するのでその傷が拡大され、致命傷になると考えられている。

しかし、このように、傷ついた細胞が自動的に死んでしまう(アポトーシス)ため、我々は生き続けていける。
放射線だけでなく、私たちの細胞は紫外線や薬物で毎日数千個の傷ができている。それでも元気で生き続けているのは、まず、修復できるところは修復する。修復できないものはアポトーシスで自動的に殺し身体から出してしまう、という働きのためである。

マウスに放射性水素入りの水を飲ませ続けたところ、年間の被曝量が30ラド=300㍉シーベルトまでではがんは全くできなかった。300㍉シーベルトを超えると強い発ガン力があった。
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いかがでしょうか。専門家はこんな研究をしているんですねえ。
この先生があくまで正しいとは申しませんが、研究の成果は生かさなければならないと思います。