2024
05.28

私と朝日新聞 桐生支局の29 記者クラブの1 桐生市役所には記者クラブが2つあった

らかす日誌

記者という仕事は何かと批判を浴びるものである。中でも記者クラブへの批判は根強い。曰く、権力・取材先との癒着、曰く、併催性、曰く、情報の独占……。

どれもこれも頷ける批判である。私が経験しただけでも、霞ヶ関の各官庁はもちろん、業界団体、個別企業で記者クラブを設けているところがある。地方に行けば都道府県庁、市役所にも記者クラブがある。長く記者を務めてきた私には見慣れた風景である。
確かに、記者クラブが置かれている場所は、それぞれの地域の一等地である。そこに記者のために部屋を確保し、受付の女性まで用意する。報道各社のデスクが用意され、電話まで引いてある。この費用、すべて記者クラブを設置した側の負担である。報道各社は一切の費用を負担していない。これでは癒着を疑われても仕方がない。最近は記者が皆スマホを持つようになったから電話料金だけは報道各社がそれぞれ負担するようになったが、基本的な構造は変わっていない。

私が10年ぶりに記者として赴任した桐生市にも記者クラブはあった。桐生市役所の2階である。それまで私が巡り歩いてきた記者クラブと比べれば狭くて設備も整っていないが、それでも立派な記者クラブである。予定された記者会見が始まる時間を待つ、暇な時間を読書でつぶす、そんな目的で結構利用させていただいた。

ただ、漫然とその部屋を使っていたわけではない。私はより良き記者クラブにできないか、と考えながら利用させていただいた。

まず気になったのは、桐生市役所には記者クラブが2つあることだった。いまでも多分2つある。
ひとつは朝日、毎日、読売、上毛、NHKなどが所属するクラブである。私は朝日の記者だからそこに所属した。ところが、取材先でよく顔を合わせる桐生タイムスの記者はクラブ員ではない。ある日、私は聞いてみた。

「君たちは記者クラブに入っていないの?」

私の問いかけに、桐生タイムスの記者はけげんな顔をして答えた。

「いや、朝日さんがいる記者クラブには入っていませんが、記者クラブはもうひとつあるんですよ。そこに所属しています」

確かめてみると、桐生市役所の同じ2階に、第2記者クラブとでもいうのだろうか、そんな部屋があった。
おかしなことをするものである。記者クラブを設けるのがいいか悪いかは別にして、設けるのならひとつの部屋に全ての記者を押し込める方が合理的なはずだ。

「どうして記者クラブが2つもあるの?」

「いや、そこまでは分かりません」

市の職員にも聞いてみた。私の「なぜ」に答えられる人はいなかった。
ひょっとしたら、朝日、毎日をはじめとするエスタブリッシュメントが、

「ローカル新聞と同じ記者クラブに入れるか」

と横車を押したのか。
それとも、気骨のあるローカル記者が

「手前立ちみたいな、偉そうな顔をして中身はすっからかんの記者と同じ部屋の空気を吸えるか」

と第2記者クラブを立ち上げたのか。真相は分からないままだった。
だが、である。これって無駄じゃない?

聞くと、記者クラブが2つあるため、桐生市は記者会見を同じ日に同じテーマで2度開いているのだという。私が所属する記者クラブ向けと、第2記者クラブ向けである。

「それって、究極の無駄だろう!」

私は2つの記者クラブを統合すべきだと考えた。が、それには部屋の問題もある。私が所属する記者クラブの部屋Bには、今以上の机を置くスペースがなかった。記者クラブの統合を推し進めれば、市役所に

「もっと広い部屋を用意せよ」

と求めることになる。それはいかがなものか。
だが、目の前に無駄がある。それはなんとかしなければならない。

「記者会見を一本化しようよ。記者会見を開くのは1回だけ。そこに2つの記者クラブに所属する記者が出ればいいじゃないか」

あちこちを説得して回り、この構想は実現した。市の職員からは

「お陰様で記者会見の負担が減りました」

と感謝された。
いま思い起こせば、それが私が手がけた記者クラブ改革の第1弾だった。