2024
06.04

私と朝日新聞 桐生支局の36 PANTA桐生公演の1 PANTAがやって来る!

らかす日誌

頭脳警察のリーダー、故・PANTAが桐生まで遊びに来てくれた。いつのことだったか、記憶にない。「らかす日誌」を丁寧に見返せば書いているかも知れないが、その根気はない。よって日時不明のまま書き進めることにする。

PANTAとは朝日ホール総支配人の時に知り合ったことはすでに書いた通りである。大学生のころから頭脳警察、PANTAのファンだったから、知り合いになったことで有頂天になり、多分、

「2009年4月から桐生支局長になります。気が向いたら遊びに来て下さい」

とでもメールをしたのだと思う。来てはほしかったが、芸能活動を続けるPANTAが来てくれるとは、あまり期待していなかった。それが突然、

『桐生に行きます」

という知らせが来て、当時境野町だった我が家に姿を現した。
PANTAは左利きである。ギターも左利き用のものを使う。そして我が家に来た時は、ギターを持ってきていなかった。だが、話が盛り上がってPANTAのギター演奏が必要になると、私のギターを抱いて演奏を始めた。私は右利きである。ギターも右利き用のMartinである。それをみごとに弾きこなすのを見て、

「左利きとは器用なことをするものだ」

と感心した。
昼食は鰻をご馳走したのではなかったか。

私はPANTAのライブが聴きたかった。桐生でライブをやってくれたらこんなに楽しいことはない。そこで、

「こんなところでライブをやってみない?

と桐生市の有鄰館、隣のみどり市のながめ余興場を案内した。PANTAはながめ余興場がたいそう気に入ったようで、舞台を見たり奈落を見学したりした。それでも

「やりましょう」

という話にはならず、逆に

「大道さん、あなた、滑舌がいいからラジオのパーソナリティをやったらいいと思うけどなあ」

と私をあおる始末だった。
そんな話が出たので、どこかのラジオ局に紹介してくれるのかと思いもしたが、その後は連絡がない。

「さては、私の顔、体はテレビ向きではない、ということを遠回しに言ったのか?」

と思い直したりした。

PANTAの知人が、桐生市のとある人と知り合いで、その縁でPANTAは時折桐生に姿を見せた。あれは何度目の来桐の時だったろう。

「やっぱり、桐生でライブをやってみない?」

と切り出すと

「じゃあ、こいつと話してよ。話がまとまったらやるから」

えっ、本当に桐生でライブをやってくれるのか?
「こいつ」とは、多分PANTAのマネージャーなのだろう。早速電話をかけたことは言うまでもない。

「こいつ」と話していて、私のPANTAライブ計画に重大な見落としがあったことが判明した。PANTAを桐生に招くには招聘元が必要なのである。つまり、ライブ公演に責任を持つ経営主体である。
私は確かに、朝日ホールの総支配人を務めた。数々の公演を主催者としてこなしてきた。だが、実務はディレクターに任せるのが私のスタイルだった。何をやったら公園を実現できるのか? 私にはその知識が皆無だったのである。

招聘元になるということは、採算に責任を取るということである。PANTAには事前に約束したギャラを支払わねばならない。払えるほど観客が集まればいいが、客が少なければ赤字になる。その赤字は招聘元の負担となる。客を集めるには何をしたらいいのか? まさか、朝日新聞で

「頭脳警察のPANTAが桐生でライブ!」

なんていう予告記事を書くわけにも行かない。では、私にできるか?

何人かに

「PANTAの桐生ライブをやりたいんだけど、招聘元になってくれない?」

と打診してみた。首を縦に振る人物は皆無だった。ある人物はこう言った。

「確かに、頭脳警察、PANTAは知る人ぞ知るビッグネームだけど、集客力はどうなのかなあ……」

確かに公演の成否を決めるのは集客力である。東京でPANTAのライブに行った時のことを思い出した。あの時何人ぐらい客がいただろう? 400人? 500人? してみると、サザンオールスターズのような集客力はないようだ。では500人だったとして、東京の人口は1400万人。桐生は10数万人。ざっと100分の1である。とすると、桐生でお金を出してPANTAを聞きたいというのは4,5人? 採算を取るなんて無理なのか?

が、何としてでも桐生でPANTAのライブをやりたい! こうなれば自力と、桐生における私の人脈で実現するしかない。だが、どうすればいいのだろう?