2024
06.18

私、車を買い換えておりました、の1

らかす日誌

「私と朝日新聞」の連載に追われて、報告していなかったことがある。
私はを買い換えた。この3月のことである。

ことの起こりは昨年の大晦日だった。いま我が家は子どもや孫たちがほとんど来ない。妻女殿が拒絶されるからである。別に仲違いしているわけではない。膠原病という難病を抱えてすでに74歳になった妻女殿は、子供や孫が我が家にやって来ると疲れる、といってここ数年、お断りになっている。私はもっと頻繁に顔を合わせて酒を飲み、語り合いたいが、私にその自由はない。

「来てくれたら、家事を全て任せてお前はのんびりしていたらいいではないか。その方が楽だろう」

と説得したこともあった。が、頑として耳をお貸しにならない。交渉決裂である。

ということが続いているが、やはり子どもたちはたまには両親、つまり私と妻女殿の顔を見たいのだろう。あるいは、妻女殿の病の現状を知りたいのだろう。横浜の次女一家が昨年12月31日、桐生に来た。ところが前述した理由から我が家には姿を現さず、市内のファミレスで一緒に昼食を取るというおかしな形での会合であった。

集合場所がファミレスだから、私と妻女殿は我が愛車、BMW 320dでファミレスまで行った。ほぼ同時刻に横浜勢も到着し、昼食を取るべく店内の人となった。瑛汰、璃子を交えて総勢6人である。
席に着いたかつかなかったかの頃だったと思う。次女が突然

「お父さん、車、買い換えなよ」

突然の話である。不意を突かれた私は

「いや、来年の3月に車検を受けてあと2年乗るつもりだ。でも、なんで買い換えなきゃいかん?」

と聞いた。

「だって、お母さんが乗り降りが不自由じゃない」

それは私も気が付いていた。妻女殿は近年、足がかなり弱っている。杖なしでは歩けないし、いや、杖でも危なくてこのところは手押し車に頼っての移動である。それほどの弱り具合だから、確かに座席が低いセダンであるBMW 320dの乗り降りにはかなり苦労をしているようだった。spれは十分にわきまえていた。しかし、この時点で車を買い換えるか? まだ快調に走っているぞ。

今年3月、BMW 320dは11年目の車検を受けるはずだった。車は13年を過ぎると税金が上がる。だから、次の13年目の車検を受ける前に買い換えようとは思っていた。頭にあったのはBMW X3である。これまで一度も乗ったことがないSUVである。これならシートの座面が高い。ヨッコラショと乗り降りしなくても、ふっとシートに腰を下ろせば乗れるし、降りる時もヨッコラショと立ち上がる必要はない。

ただ、問題はあった。まずは資金である。新車など端から買えるはずもない。だが、中古でも3年、2万㎞あたりがほしい。そうすれば、手数料5万円ポッキリでオークション落札してくれる沼田屋に頼んでも、300〜400万円はするだろう。そんな金は手元にない。あるのは頼まれた原稿をコツコツ書いて8年間でためた200数十万円である。とてもじゃないが間に合わない。だが、あと2年待てば、中古車を買うぐらいにはなるのではないか?
2つ目はデザインである。私はSUVのデザインが嫌いなのだ。美しさはセダンに劣る。あのでっかい車の運転席に座っている自分を思い描くと、なんだかしっくりこない。やっぱり、次もBMW 320dの新型にしたい。
デザインを採るか、乗り降りの楽さを採るか。と考え続けてい履いた。が、なーに、まだ2年先のことである。早急に結論を出すこともなかろう、と放っておいた。

その私に、次女がナイフを突き刺すような勢いで

「買い換えなよ」

と迫ってきたのだ。ふむ、どうあしらおう?

「いや、2年先には買い換えるつもりだが、いまは考えていない」

「お母さんのことを考えてあげて。お父さんだってもうすぐ後期高齢者なんだよ。お母さんが楽に乗り降りできて、ぶつからない車にしないと危ないよ」

「うん、自動ブレーキがある車がいいないとは思っている。それも含めて考えてはいるが、いまは金がない

「お金は何とでも……」

おっ、いかん。娘が出す金、正確に言えば娘の旦那が稼ぐ金で私の車を買うわけには行かない。それに、次女の話に乗ってしまうと、スバルのアイサイト設置車を押しつけられそうである。あんな車に乗りたくはない(もし乗っていらっしゃる方がおいでになれば、暴言をお許し願いたい)。やはり私は、惚れ込んだBMWを乗り継ぎたい。

とは思うが、私は逃げ場を失った。

「分かった。考えてみるわ」

その場ではそういうほかなかった。車更新作業が始まった。