06.22
私、車を買い換えておりました、の3
これからお読みいただく原稿は,昨夜いちどは完成したものである。一部をゴチにする、赤字にする作業もすべて終え、あとはアップするばかりと「公開」ボタンを押したら、突然WordPressがバグった。もう一度同じことをしろ、つまりアップは完了していないから、もう一度やれれ、というメッセージが出た。このメッセージが出たら万事休すである。WordPressには自動保存の機能がない。このメッセージが出たということは、手動で保存した原稿以外は宇宙のどこかに吸い込まれれてすべて消え去るということである。そして、昨夜完成しはずの原稿は、前々日に書いて保存しておいた所を残して、全て消え去った。
同じ目には、これまで数回あっている。だから、『下書き保存」「公開」のボタンをクリックする時は、必ず全文をコピーし、万が一に備える習慣を身につけていたはずである。それが昨夜に限ってコピーしなかった。わが身の迂闊さを呪って、昨夜は再度原稿を書く気にはな慣れなかった。
これ、加齢ゆえの惚けのせい? 注意しなければ。
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沼田屋の社長の長男、Ko君には年が明けて、
「車を替えようと思っている。X3を探してくれないか」
と依頼していた。
いま、新型コロナウイルス騒ぎに始まった半導体不足で新車の生産がままならず、そのあおりで中古車市場は玉不足が続いていると聞いていた。中古車はお金持ちが新車を買わなければ市場に出でてこない商品だからだ。おかげで、中古車価格もKo君にいわせれば
「30万円〜50万円上がっています」
まだX3を買う気はなかったが、市場の動きを知りたいと思ったのである。
だが、なかなか返事は来なかった。そりゃあそうだろ。3年落ち、走行距離2万キロ以下、300万円まで、という条件を付けたのだから、そうそう見つかるものではない。
だが、X3が見つからなかったことが幸いした。私が買おうと決めた車種は前回書いたようにX2になったからだ。
「というわけで、X2を買うことにした。よろしく」
と依頼したのは、前橋まで出かけた翌日だったと思う。
時は1月下旬か2月のはじめである。乗り続けていたBMW 320dは3月末に車検を迎える。それまでに購入する車を決めなくてはならない。
「こんなものがありましたが、どうですか?」
という連絡が数件あった。だが5年落ちで、色も白か黒。おいおい、ひょっとしたら今度の車は私が最後に乗る車になるかも知れないのだよ。5年落ちは避けたい。白、黒などという色気のない車もごめんである。
「ガソリン車ならそこそこあるんですけどね」
という連絡もあった。が、ハイオクが1リットル180円前後もする時代である。年金生活者である私には、ガソリン車に乗る勇気はない。
「もっと探してよ」
だが、見つからない、そうこうしているうちに320dの車検が迫ってきた。あわてざるを得ない。
X2の中古車、そんなにないものなのか? ネットで探してみた。ないというけど、ネットには結構ある。なんだ、あるじゃないか。
しかし、値段札をよくよく見ると、私のいう3年落ち、走行距離2万キロ以内、ディーゼル車、となると、なるほど、あまりない。あっても400万円を超えようかという価格ばかりである。そんな金はない。
何度か探す内に、1台の車が目にとまった。3年落ち、1万4300キロ、もちろんディーゼル車である。高齢者にはありがたいシートヒーターもある。そして、X2では最高グレードのMスポーツである。価格は300万円を少し出ていた。
翌日、Ko君に連絡した。
「ネットではそこそこのものが出てるよ。
彼もネットで同じものを見てくれた。
「ありますねえ。だけどね、大道さん」
Ko君によると、ネットで表示されている価格は,裸の価格なのだそうだ。いざ購入しようとなると、まず3年落ちだから車検を取らねばならない。名義変更の手数料もかかる。車を私のもとに運んで来る運送費だってバカにならない。トータルでは400万円に近づくのではないかという。それは困る。
「とにかく、いまの車が車検を迎える前に買う車を決めなくてはならない。必死で探してよ」
とお願いするしかなかった。
彼が、
「業者間取引、というのがあるんですよ」
それから数日後のことである。私が見つけたX2を売りに出している店に、沼田屋として話をする。あなたがお持ちのX2をほしいという客がいる。沼田屋が仲介するから、その車を譲ってほしい、と話をすると、表示価格よりも安い価格で譲ってくれるかも知れない、というのである。そうすれば車検その他は沼田屋でやる。コストは下がるはずである。
もう320dの車検は目前である。ほかに選択肢がなければ、この話に乗るしかない。
数日後、Ko君から電話が来た。
「業者間取引で譲ってもいいといっています。この話、進めてもいいですか?」
320dの車検が2週間ほど先に迫っていた時期である。私にNoという選択はなかった。
こうして、BMW X2が我が家にやって来たのは3月20日を数日過ぎてからである。色は紺。好ましい色ではないが、選択肢はなかった。価格は360万円。私は朝日新聞内の信用組合に預けてあった定期預金、300万円を解約した。15年前、定年になると同時に預けた300万円だが、利子は5万円ほどしかついていなかった。安倍、黒田のせいである。切り刻んでやりたい!
いずれにしても、この車は妻女殿の乗降性を最優先にして選んだ車なのだ。私の好みを優先させていれば、新型の320dを選んでいたはずである。であれば妻女度に乗っていただかねばならない。
その機会は、数日後に来た。どこかの病院への送り迎えを命じられたのである。
で、乗り降りしてみて、前の車より楽になったかな?
「ドアの開け閉めが軽くなって楽になったわ」
?
ドアの開け閉め? 320dのドアの開け閉めは確かに重かったが、だったら油を差せば解決できていたんじゃないのか?!
何とも割り切れない思いで妻女殿のお言葉を承った。
「この車が、乗り降りは一番楽」
とあんたが言ったから、この車にしたんだけどね。
以来、何となく割り切れない思いを抱えて日々を過ごす私である。
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原稿とは不思議なものである。失われた原稿を復元しようと同じ私が書いても、仕上がりは違った文章になる。しかも、なんだか前の原稿の方がよかったような気がする。前の原稿にはX2が不人気車種だということも書き込んでいたはずなのに、いま書いた原稿ではその事実を差し込むところが見つからない。
人は日々進化するのか、それとも日々退化してしまうのか。あ、私は後期高齢者になってしまった。退化するのは当たり前か?