2024
11.18

行政のデジタル化の現実

らかす日誌

本日、桐生市の職員に、行政事務のデジタル化を強くお勧めしてきた。いや、私が市職員研修の講師として招かれたわけではない。役所の窓口で私に対応してくれた女子職員に強くお勧めしたのである。市の事務処理に関するクレーマーのひとりに私がなった、と言った方が分かりやすいか。

ことの起こりは、、妻女殿が1級の障害者認定を受けたことである、大動脈弁狭窄症の手術を受ければ自動的に対象者になるらしい。妻女殿が入院した前橋日赤で説明を受け、書類を整えて1ヶ月ほど前に申請していた。今日、

「障害者手帳が出来ました」

との連絡を受け、桐生市役所の担当窓口に出向いたのである。

1級の障害者に認定されると、様々な支援がある。所得税や地方税の控除、医療費の無料化、自動車税の減免、高速道路料金の割引……。窓口で私に対応してくれた女子職員はパンフレットを見ながら丁寧に説明してくれた。そこまでは良かった。
良くなかったのはそれからである。

「所得税や地方税の控除については税務課へ……。あ、税理士さんに頼んで確定申告をしていらっしゃる。じゃあ、その税理士さんに奥様が1級の障害者に認定されたことをお伝え下さい」

そこまではまだ良かった。次から殻が問題だった。

「医療費の無慮科については6番窓口で手続きをして下さい。自動車税の減免は県税事務所での手続きになります。高速料金は、あ、ETCをお使いですか。そうすると、奥様名義のETC カードをお使いにならないと……」

私は、この辺りで切れかかった。

「ちょっと待ってよ」

切れても、言葉は決して荒げてはならない。

「いま、行政事務のデジタル化ということがいわれるよね。それに、この市役所内は恐らくLANでつながっているんじゃないかな? だとすれば、1つの窓口で手続きをするだけで、関連するすべてのサービスが受けられるというのが、求められる行政サービスのあり方じゃないの? 何で手続きに来た市民の方があちこち動き回らないといけなんだ? 行政のデジタル化って職員がパソコンで仕事をすることじゃなく、市民に手間暇をかけないワンストップサービスのためにあるんじゃないの?」

これが私のクレームの全体像である。

無論、窓口の彼女にそんなことをいっても仕方がいことは十二分に承知している。だから、その場で口にしたのは腹立ち紛れではない。私は長年生きてきたが、このような手厚い行政サービスを受けるのは、成人してからは初めてである。市役所とは転入の手続きをする、住民票を取る、その程度の役所でしかなかった。だから、行政事務が現場でどう進められているかについての知識は皆無だった。私は彼女に話しかけながら、初めて体験した行政の不効率に唖然とし、それをどう理解したらいいのかを言葉にするために話していたのだと思う。

途中で彼女はこう言った。

「はい、そう申されましても、担当課が違うのもですから、そちらに行っていただかなければ手続きが出来ません」

思わず私の口に出たのは

「それが縦割り行政といわれていることでしょ? そんな旧来の役所の理屈で、市民があちこち動き回らねばならないのはおかしいと思いませんか?」

結果として今日は、桐生市役所で2つの窓口に行った。これからやらねばならないのは県税事務所に行って自動車税の減免措置の手続きをすること、妻女殿名義のETCカードを作ること。忘れていたが、携帯電話の割引もあるらしい。すべてをひとつひとつ、私がやらねばならない。

DX(デジタルトランスフォーメイション)とは、デジタル技術、いまやインフラとなったネットワーク網を使って暮らしを便利にすることだと私は思う。その推進に向けて政府は旗を振るが、暮らし、行政の現はこの程度である。全く進展は見られない。

日本はDX後進国なのだろう。市役所のひとつの窓口で手続きを済ませればすべての行政サービスが受けられる日は来るのか?

何だか、日本の現状を考えると心寂しくなる日であった。