2025
01.22

いまのアメリカはファシズム国家への入口にあるのか?

らかす日誌

アメリカでトランプ政権が動き出した。その初日に40を超す大統領令に署名した。マスメディアは一斉に批判を始めた。

・パリ協定からの離脱、排ガス規制とEV義務化の撤廃
——あんた、地球をつぶす気か?

・軍隊を使って不法入国を阻止
——そもそもアメリカは、ネイティブ・アメリカンが住んでいた土地にヨーロッパからの不法入国者が建国した国ではないか!

・言論の自由の回復と政府による検閲の禁止
——言葉はきれいだが、要はあんたが繰り出すFake Newsを野放しにしろってことだろ!」

・議会に乱入したトランプ支持者たちへの恩赦
——アメリカは法治国家ではなくなったのか?

ま、そんな感じの批判である。それには全く異議はない。いや、EV義務化の撤廃だけは実に理にかなったことだと思うが。

メディアの目はいま、トランプ政権がどんな政策を打ち出すかに集中しているように見える。だが、私は

「そんな短視眼でいいのかな」

と不安に感じている。ひょっとしてトランプ政権というのは、ワイマール体制の民主主義の中で政権を握ったナチスと同族ではないかと思うからである。

第1次世界大戦で打ちのめされたドイツは国を再建しようとワイマール憲法を定めた。20歳以上の男女による普通選挙に基づく議会政治、国民の直接選挙による大統領制、そして労働者の団結権を定めた民主的な憲法だった。ドイツは民主主義を国の礎にしようとした。
だが、巨額の賠償金を課されたドイツでは極端という言葉が生易しいほどのインフレーションに見舞われた。1920年に10個で3.9マルクだった卵が、1923年には3兆マルクにまで跳ね上がったのだ。国民の不満は沸騰する。そこに現れたのがナチスだった。巧みな宣伝活動で国民の不満を一手に引き受け、普通選挙のもとで第1党になった。
この辺りまでは高校の世界史の常識である。

報道によれば、トランプはアメリカの中流以下の不満層の支持を取り付けた。君たちから仕事を奪っているのは不法移民である。中国をはじめ、メキシコ、カナダからの輸入である。民主党はいま、金持ち、知識階級の代弁者だ。君たちのことなど何も考えていない。俺は今のシステムをひっくりかえす。君たちの暮らしを豊かにする。どうだ、俺に任せないか?

どうだろう。私の歴史知識は少ないが、ワイマール体制下で政権政党に上り詰めたナチスと、民主主義の母国と言っても過言ではないアメリカでトランプが大統領に就任した構図を重ね合わせると、ほとんど同じではないか、と見えてくるのである。今に不満を持つ国民の支持を、実現できるかどうか分からない過激な言論、宣伝で幅広く集めたことである。

ファシズムの正確な定義は知らないが、普通には「独裁主義」と考えればいいだろう。いま、トランプ政権は「独裁主義」の道を歩き始めた。

俺の発信する嘘に手を出すな!
死刑制度を復活する!
「メキシコ湾」を「アメリカ湾」に名称変更する!
議会に乱入したトランプ支持者たちへの恩赦!

すでに署名した大統領令だけでも、「独裁主義」は明瞭ではないか。
このあとも、続々と大統領令が出てくるといわれている。独裁者・トランプの姿がもっと明瞭になるはずだ。世界最強国であるアメリカはファシズム国家になるのか?

ヒトラーはそのような過程を通って全権を握り、世界を混乱の渦に巻き込んだ。トランプもそうなるのか? しかも、トランプはっせかいさいきょうこくの大統領なのである。
唯一の救いは、トランプの大統領在任は4年しかないことである。トランプのあと、誰がアメリカ大統領になるのかで事態は大きく変わるはずだ。トランプ路線を引き継ぐ共和党大統領を米国民が選べば最悪である。

だから、民主党に期待を寄せるしかないのだが、バイデンの後継者としてハリスしかいなかった現状では心許ない。それよりも、いまやアメリの吾エリート層の政党に成り下がった民主党に、アメリカ社会の奥深くで煮えたぎる不満、不安、絶望をすくい上げる意欲と機能と組織と能力があるのかどうか。
刑事訴追された息子を大統領の恩赦令え救ったバイデンを押し上げた党である。果たして彼らに、米国社会の変貌を呑み込む能力があるのかどうか。

他国の話である。だが、日本にも響いてくる話である。アメリカがファシズム国家になったらどうするのか?

少々酔った。今日はこれまでとする。