2025
04.23

初見ではのどに異常はいそうです

らかす日誌

本日、足利日赤で咽部のCTを撮ってきた。

咽の内側が腫れているような気がして耳鼻咽喉科の開業医を訪れ、その命て足利日赤に通い始めたことはいつか書いたと思う。開業医の手に負えず、総合病院行きを命じられたのだからやや心配したが、足利日赤での診断は

低異形度異形成

という耳慣れないものだった。私の声帯から組織をこそぎ取り、培養した結果の診断である。
低異形度異形成とは読んで字の通り、私の声帯の細胞が分裂する際、新しく生まれた細胞が完全なコピーにはなっていないということらしい。この異形度が進めばがんになるのだろう。ネットで調べたら、低異形度異形成ががんになる確率は15%ほどとあった。ただ、私を診断した若い医師はたいして心配はしていなかったから、異形の度合いは極めて小さく、がんに進む恐れは大きくなかったのだと思われる。そして、

「じゃあ、これから治療をするんですか?」

と聞くと、

「いや、問題の組織は前回すべてこそぎ取りましたから、もう治療は必要ありません」

とのことだった。それでも、毎月1回通院するように命じられた。念のため1年ぐらいは様子を見たい、ということなのだろう。
そして漢方薬が出た。咽の違和感を無くす効能があるというのだが、ずっと飲み続けているのに違和感はちっとも消えてくれない。ひょっとしたら誤診か?
そんな疑いを持った私は先月の受診の際、担当医に脅しをかけた。

「おっしゃる通り、声帯はもう正常なのかもしれない。しかし、咽の違和感が消えないということは別の病があるということを疑わせるのではないか? このまま漢方薬での治療だけをやっていて、数ヶ月、数年経ってその病が表に出て命にかかわるようなことになったら、あなたの誤診が原因ということになるのだが、いまのままの治療を進めますか?」

若い担当医がどう受け取ったのかは分からない。だが、彼は

「わかりました。それではCTを撮りましょう」

と決断を下したのである。そして今日のCT撮影となった。

部屋に通され、硬いベッドに寝かされた。右手を出せと言う。何でも造影剤を注射するのだそうだ。右手を出した。私は仰向けに寝ているから、右手の様子はよく分からない。突然ひじの内側がチクッと痛んだ。これまで採血されたことは何度もあり、その痛みには慣れていたが、今日の痛みははるかに大きい。

「なんか、太い針を刺したようだね」

ときくと、看護師は

「造影剤を入れるので、針が太いんですよ」

と答えた。細い針では入りにくいとしたら、造影剤はかなり粘度のある液体なのか?

やがて

「造影剤を入れます。体が温かくなります」

とのアナウンスがあった。そういうものかと思っていると、確かに胸の辺りがボーッと暖かくなった。

「はい、動かないで、息を止めて」

硬いベッドに寝てからこの間、10分足らずだろう。

「はい、お疲れさまでした」

の声でベッドから開放された。

担当医の診察は、それから1時間ほどして始まった。

「まだ放射線科からの分析レポートが届いていないので確定的なことはいえませんが、このCT画像をみるゐ限り、心配するようなところはありません。だから、詳しい結果は次回の診察の時にご説明します。あ、放射線科からの報告に急を要するようなことがあればすぐにお知らせします」

というので、

「じゃあ、あれだね、便りがないのはいい便り、ということだね」

といったら、何となくけげんな顔をしている。

「No news is good news. ともいうよ」

と付け加えたら、納得顔になった。彼、どう見ても日本人だが、頭の中はアメリカ人なのか?

いまは静岡大学に通う敬樹から、久々に電話が来た。

「どうした、金の無心か?」

とからかうと

「いや、そんなんじゃないよ」

という。では、何だ?

「19日、クラプトンのコンサートに行ってきたのよ。でさあ、クラプトン、80になったんだけど、2年前にボスと行ったコンサートの時より、はるかにできがよかったわ。指も動いていたし、80歳の俺の演奏を見てくれ、聞いてくれ、って感じで、うん、よかった」

そうか、そうか、クラプトン、頑張っているか。

「ところで啓樹よ、俺さあ、最近Queenがいいな、って思い始めているのだわ。いやあ、これまでまじめに聞かなかったけど、いい曲がいっぱいある。でも、あいつら、ライブの方がはるかにいいな。スタジオ録音したアルバムは、何となく精彩がない。Queenはライブバンドだな」

75歳の爺と20歳の孫の会話である。孫とこんな会話ができる。もって瞑すべきである、と喜んでいる私である。