2025
07.12

あなた、投票に行く気になりますか?

らかす日誌

しかし、つまらぬ選挙である。ひょっとしたら自公政権が参議院で過半数割れに追い込まれるかもしれない政権選択の選挙だというのに、なんとも気分が沸き立たない。日本の政治ってここまで劣化したかと嘆きが先に立つ。

争点は物価高対策なのだそうだ。そのため、全国民に1人2万円をばらまくか、消費税をいじるか、が対立軸なのだそうだ。私見によれば勘違いも甚だしい。

1人2万円を少し考えてみよう。物価高の中心は何といっても米だろう。最近の1人当たりの米の消費量は1年間で50kg強である。米離れが進んだ結果だから、米を中心に食べている人は80kgぐらいは食べるのだろう。そこで米の値上がりを計算してみる。
値上がり前は、おおむね5kgで2500円だった。つまり1kgロ500円である。1年に50kg食べれば25000円だ。80kgなら4万円である。それが2倍近くになったから、50kg組は2万5000円の追加負担である。80kg組は4万円も余計に払わねば同じ量の米が食べられない。これだけで、すでに2万円を上回っている。
そして上がっているのは米だけではない。ずっと続いているガソリン価格もそうだし、食料品は軒並みの値上げである。だとすると、国民の1人あたりの負担増は5万円にも10万円にもなっているわけで、2万円ぽっちでは焼け石に水であることは誰に目にも明らかだ。

しかも、である。この1人あたり2万のばらまきの財源は税金である。総額は3兆1000億円にも上る。それでなくても国の借金は1300兆円を超えているのだ。そして国の借金である以上、税金で利子を払い続けなければならないし、いずれは税金で総額を返済しなければならない。ほとんど効果が期待できない「物価高対策」に3兆1000億円を支出すれば、いずれは税金で3兆1000億円を埋めなければならないのだ。もらった分はいつかは取り返される。国民からすれば、まるでタコが自分の足を食べているようなものである。
それを政策と呼べるのか? 一度書いたが、朝令暮改にも似た

「税金を使った買収

というしかないではないか。

では消費税の減税は?
これもひとえに財源の問題に行き着く。消費税の総額は30兆円近い。消費税を全廃すれば、新たに30兆円の税金をどこかから持ってこなくてはならない。増税である。
だからだろう、「全廃」を唱えるのはれいわ新選組と参政党だけである。現状維持を主張する自民、再生の道をのぞけば、食品だけ、税率引き下げなど、財政にもある程度の配慮を見せてはいる。だが、そのどれをとっても、税収は減る。減った分はどこかから取って埋めねばならない。どこかに新しい税を課さなければ国は回らないのだ。れいわ新選組、参政党、みんなでつくる党が唱える「国債発行」は論外である。もっとくに借金を増やせってか? 「税収の上振れ分から確保すべき」と日本維新の会、国民民主党、日本保守党、チームみらいはいうが、では、税収が下ぶれしたらどうするのか。再び消費税を現状に戻すのか?
加えて言えば、こもれも

「税金を使った買収」

の1形態である、と私は思う。税制を論じるのなら、基本から議論を積み上げなければならない。目先の経済動向、目先の選挙対策として軽々しく国民に問うものではない。

それに、である。2万円の一律給付にしても、消費税率の問題にしても、それって「物価高対策」なのか? 物価が高騰して暮らしが窮屈になっている国民の救済策ではある。だが、物価高対策ではない。

米価の急騰は、農林水産省が進めてきた減反政策が根底にあり、食料米の生産が消費を下回っていたのが原因と指摘され始めた。だとすれば、米の「物価高対策」を進めるには、農水省の政策転換が必要なのだが、そんな論点を打ち出した政党がどこかにあるのかな? それを知らないのは私だけか?

ガソリン価格を始めとする物価高の原因は、1ドル=140円台に張り付いた円安である。日本の金利が低く抑えられていること、日本経済の低迷が円安の原因だと思うのだが、日銀の金利政策を論じた政党があるか? 日本産の活性化策を政策に掲げた政党があるか?

と考えると、1票を投じようと思う政党が1つもない

しかしまあ、日本の政党地図も多彩になってきた。聞いたこともない政党がたくさんあり、怖いことにトランプまがいの「日本人ファースト」を唱える右翼政党まで登場した。日本の停滞が続き、

「何となく、私は損をしているのではないか?」

という層が広がった。それが極めてエゴイスティックな極論を掲げる政党を支える基盤になっているのだろう。トランプ現象、欧州での右翼台頭と同じ構図である。
日本もおかしな国になってきた。