10.18
妻女殿、明日退院!
妻女殿が明日退院される。入院日数は初日と明日を入れると71日。実に長期にわたるおつとめであった。
前橋日赤では退院は午前10時と決まっている。よってそれまでに前橋日赤まで行かねばならない。遅くとも8時半には家を出る必要があるだろう。とすると、明日の著食はロカボの食パン1枚か。まあ、いい。
妻女殿の入院は、出産を除けばこれが4度目である。
最初は私が名古屋での単身赴任から戻ってすぐのことだった。持病の膠原病が悪化したのだった。川崎市民病院に半年あまりお世話になり、残された私と3人の子どもたちは、平日は高校生だった長女が家事をこなし、私の休日は私が当番になることで危機を乗り切った。
この間妻女殿は入院病棟内でメキメキと頭角を現し、婦長にはなれないものの、患者長の役割を自ら弾き撃ておられたようにお見受けした。
2度目は左足大腿骨の骨折であった。キッチンで、換気扇を掃除しようと椅子に乗って作業に取り掛かったまでは良かったが、どういうはずみか椅子から転落し、左足大腿部をどこかに激しく打ち付けたらしい。
たまたま私は家にいたから、土曜か日曜のことである。私は痛みに悲鳴を上げる妻女殿を背負って1階に降り(横浜の我が家は2階にキッチン、ダイニングルームがある)、車の後部座席に押し込んで鶴見の休日当番医に向かった。不思議なことに、救急車を呼ぼうという考えは全く浮かばなかった。このような事故は、当事者が処理するのが当然だと思ったのである。
たどり着いた休日当番医は
「私は骨折の治療は専門外です。整形外科を紹介しますのでそちらに行ってください」
とおっしゃった。では、もう一度妻女殿を車に押し込み、紹介された医者前行くのか?
「いや、「この傷み方ですから、それは無理でしょう」
と医者が救急車を呼んでくれた。
3度目は右大腿骨の骨折である。隣の犬の散歩を買って出たまでは良かったが、その犬に引きずられて転倒しての骨折である。私が出社中の出来事で、川崎市民病院に運び込まれた後、電話で知らせを受けた。
散歩のしつけもされていないバカ犬の仕業だが、でも、どんな転び方をしたら大腿骨を折るのだろう? それも、今度は右足とは! 左右の足を同じにしてバランスを取ろうとでもいうのか?
そして今度が4度目である。1度目には及ばないが、2ヵ月以上に渡る入院は長かったと言わざるを得ない。
長期の入院は体力を奪う。特に、カテーテルによる手術を受けたあとは寝たきりだったはずで、だとしたら、元々足が弱り、押し車がなければ歩けなかったのだから、日常生活が不安である。だから、退院が近づいたころ
「リハビリをきちんとやって、家の中でちゃんと動けるまでは出て来なくてもいいぞ」
といった。妻女殿は立腹されたようだ。しかし、家に戻って寝たきりになっては私の暮らしも成り立たない。そもそも、何をするにも夫を呼んで支えてもらわなければならない暮らしは本人だって気詰まりのはずである。娘には
「お父さんはひどい!」
と言われたが、こればかりは当事者でなければわからないことだと思う。寝たきりになってしまえば別の考え方もある。しかし、妻女殿はリハビリで失われた筋力を取り戻せる身体らしく、前橋日赤でもリハビリのプログラムを作っていた。だとすれば、
「もう自分で歩ける」
というまでリハビリのプログラムを病院でこなした方がいいと私は考える。
いずれにせよ、明日からまた、妻女殿と2人の暮らしが始まる。またまた犬も食わない夫婦喧嘩をするのだろうなあ……。