12.24
2007年12月24日 フォレスト・ウィテカー
いまWOWOWでは、クリント・イーストウッドが時の人である。去年話題になった「硫黄島からの手紙」が23日にオンエアされ、1月になれば「父親たちの星条旗」も放送される。それを盛り上げるためだろう。クリント・イーストウッドの古い映画も数多く番組表に並んでいる。映画ファンには嬉しい採り貯めの季節である。
私が採り貯める1本、「 クリント・イーストウッド アウト・オブ・シャドー」を今朝、ハードディスクからDVD-Rにダビングした。2000年にテレビ用に作られたものである。
ダビングしながら、冒頭を見た。よく映画で見かける顔が次々に登場し、口々にイーストウッド賛歌を歌う。
そのうちの1人が頭に引っかかった。坊主頭で丸顔、優しい目をした黒人俳優である。フォレスト・ウィテカー(Forest Whitaker)と、画面に名前が出た。
「あれっ、この顔、この人の演技で泣かされた記憶がある」
それがとっかかりだった。そして、印象の残るそのシーンを、「シネマらかす」で書いたはずだと思いついた。
「でも、何という映画だっけ?」
頭がこのように回転し始めると、ほかのことは目に入らない。目の前のテレビも、まだ画像が映っているのに単なる置物である。我が脳は記憶のどこかにあるはずのデータを引っ張り出すのに集中する。残念ながら私の脳は、2つ、3つの作業を同時にこなすマルチタスク仕様にはなっていない。聖徳太子はどんな脳を持っていたのだろう?
必至で考え始めた。やがて、そのシーンで、この人は右手に義手をつけていたことが思い当たった。確か、客がほとんど来ない自動車修理工場の経営者だった。そこに黒人の子供が訪ねていく。…………。その先が思い浮かばない。
次に、なんだか作家が絡んでいた記憶が浮かび上がった。作家は1人でアパートに住んでいて、そこに黒人の子供がやってくる。
ん? 何という映画だっけ?
黒人の子供が出る。作家が登場する。「小説家を見つけたら」? 違う。あれはショーン・コネリーが隠棲中の小説家を演じていた。が、フォレスト・ウィテカーは出てこない。
うーん、ほかに作家が登場する映画を書いたっけ?
どうしても思い出せない。
さて、私のホームページを愛してくださる皆さん。これだけのヒントで映画の題名が出てきますか? 出てきたら、少なくとも私より遙かに優れた映画博士です!
どうしても気になる。ネットでフォレスト・ウィテカーを検索し、彼の作品一覧を見た。あった!
「スモーク」。「シネマらかす」の掲載順で言うと、「小説家を見つけたら」の1本前に書いた作品だった。お隣さんの題名を思い出せないなんて……。
茂木健一郎氏の講演の動画配信を前回紹介した。この中で茂木氏は人の脳とコンピュータの違いを説明している。それによると、違いの一つはコンピュータが隅々まで正確に記憶するのに比べ、人の脳は記憶が苦手なことにある。
私は茂木先生の材料である。私は今日、私が典型的な人間、人間の中の人間であることを朝から証明した。同時に茂木説も証明したのである。
もって慶賀すべきことである。のかな?