02.27
2008年2月27日 Mad Labs: Audio Spotlight
昨日昼間、S氏からメールをもらった。前回の日誌に登場したIT関係のS氏である。全文を引用する。
「今日の話のネタになればと思いまして。下のビデオを見てください。
http://www.youtube.com/watch?v=veDk2Vd-9oQ
詳しくは今晩。
それでは」
見た。これをお読みのあなたも、いま是非ご覧になって頂きたい。
ご覧になった? どんな感想を抱かれただろうか?
私は律儀に返信した。
「見ましたが……」
私が見たのは指定されたビデオだけではない。右に出てくるRelated Videosから、Mad Labsとタイトルにあるものをいくつか見てみた。その結果、これは単なるお楽しみビデオ、はっきり言えば、ショートショートのSF映画、さらにあけすけに言えば嘘であると断定じた。だって、犬用の携帯電話とか、1人乗りのヘリコプターとか、どう考えても現実に存在するものとは思えない。
離れた場所から、1点だけに音を送る装置。それがAudio Spotlightだが、そんなことができるはずがない。これも嘘に決まっている!
で、「小菊」に着いた。H氏は先に来ていた。早速議論が始まった。
S:どうでした?
私:あれって、フェイクでしょう。だって、あんなことできるわけないジャン。
S:ところが本当なんですよ。本当にできるんです。
当然、H氏が割ってはいる。彼は口から先に生まれた人間である。黙っていられるはずがない。S氏が概略を説明した。
H:面白いね。ビジネスになるかも知れない。
私:待ってよ。原理的に不可能じゃない、こんなこと。だって、指向性の高い、人の耳に聞こえない高周波で音を特定の場所に届けるっていうんでしょ。人の耳に聞こえない音が、どうやったら特定の場所だけで人の耳に聞こえる周波数に変わるのさ? そこに別の端末でもおいて置くわけ? だったら無線通信と一緒だよ。それに、音は空気の粗密波だよ。空気の粗密波を作り出すためには、スピーカーのような振動体がいる。このビデオでは、そんなものはない。一体、何が震えて空気の粗密波を作り出すわけ? どう考えても冗談だって、これ。
H:あ、だからあんたの会社はダメなんだよ。最初からそんな風にに可能性を排除してものを考える。だから新規事業ができないんだ。こういうのはねえ、面白いと思ったらまず事業化を考える。何に使えるか、どこに売り込めるか。そこに知恵を絞るんだよ。その見通しが立ってからでいいんだよ、本当にできるかどうかを検証すするのは。
私:へーっ、君のところはそんないい加減なことで事業計画を書くのか。千三つだな。君の会社の社員って、仕事をするふりばっかりして、無駄に「忙しい」「忙しい」って走り回ってるんじゃないの? 上がバカだと、下もバカになるからなあ。下は大変だ。
私とH氏の 論争は、周りが聞けば罵り合いに聞こえる。まあ、言葉の力で相手を組み伏すことを至上の快感とする2人であることを理解しない人にそう聞こえるのは仕方がない。が、当人同士は、これで結構楽しんでいるのである。それに、言葉と論理の力でねじ伏せるには、限りなく頭を使う。極上の知的遊戯。2人にとっては楽しい惚け防止対策でもあるのだ。
S氏が割って入った。
S:これを開発した研究者が3月末に来日するんです。僕にも会いたいっていうから、3人で会いません? そうすれば、疑問点も聞きただせますし。
私もH氏も、直ちに同意した。
2人の論戦の決着は、3月末まで持ち越された。
さて、どんなMad Scientistが姿を見せるのか。楽しみでもあり、心配でもある。
私は、英語に関してはヘレン・ケラーに近い。H、Sの両氏が通訳してくれるのだろうが、論争に勝ちたいH氏、頭から信じているS氏が、正確な翻訳をしてくれるか? 私はごまかされるのではないか?
顛末は、そのうち報告することになるはずである。
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