12.01
2015年12月1日 師走
12月は先生も走るという。だが私は走らない。いつも通りのマイペースである。
「先生と呼ばれるほどのアホでなし」
という。とすれば、私はアホではないようだ。
かつ、先生でも走り出したくなる時期に、いつもの通り、走りもせず、昼間からソファにひっくり返って読書に勤しみ、起きては机に向かって算数の問題を解く。夜ともなれば採り貯めた映画を鑑賞する。
私は、「師」と呼ばれる方々を遥かに超えた人格者になったのか。
などいう言葉の遊びは横に置いて……。
で、だ。師走といえばクリスマスである。私は迷惑なのだが、世間が、小さな瞳が許さない。私がサンタさんにならねばならない、年に1回の、財布がすこぶる軽くなる時期である。
なにしろ、私のもとには、ピーピー鳴きながら餌を求めて口を開けて親鳥を待つ雛のような生きものが4つもいるのだ。いまごろ
「ボスに何をもらおうかなあ」
とワクワクしながら思案を重ねている4つである。
うち一人は、早くも方針が決まったらしい。横浜の璃子である。
「あのねえ、璃子、リカちゃん人形がほしいの」
というクリスマス対処方針が私に伝えられたのは、もう1ヶ月ほど前のことだ。ただ、リカちゃん人形といっても、付属品をどれにするかでかなりの種類があるらしく、いまだに最終決定は出ていない。
残りの3人は、まだ方針を出せずにいる。ま、迷うのも楽しみのうちなのだろう。
だが、いち早く方針を出した者には1日の長がある。果たして璃子は、そのような計算をしたのだろうか?
「ボス、リカちゃんの洋服ダンスを作って」
10日ほど前、追加リクエストが来た。
「だって、ママには作ってやったんでしょ?」
ん、俺が次女に、リカちゃん人形用の洋服ダンスを作った? まるで記憶にない。そんな面倒臭いことを、俺がやった?
「だって、作ってくれたジャン」
とは次女の言である。長女も間違いないというし、妻女殿に至っては
「これくらいの大きさで、白木で、ハンガーを掛ける棒が通っていて」
と、具体的な描写までされる。俺、本当にそんなもの、作ったか?
「だったら、それはいま、何処にある?」
とお伺いを立てたら
「いらないものは捨てるのよ」
という返事が間髪を入れずに戻ってきた。
そうか、捨てられたか、俺の力作(多分)。いらないものなのか。
我が妻女殿には、人の情に欠けるところがある。
「ね、だから璃子にも作ってほしいの」
以上の前提でそういわれれば、私としては断る理由が見つからない。
「わかったわ」
と約束して、数日前から構想を練り始めた。
洋服ダンスねえ。じゃあ、
・小物入れの引き出しと、大物入れの引き出しもくっつけるか。
・扉は磁石で止まるようにしたいなあ。
・扉を受けるちょうつがいは何処に取り付ける?
・ちょうつがいの一部はどうしても外に出る。怪我対策に皮をかぶせよう。
・前面はフラットにしたい。ということは下に引き出しを作るから……。
・ハンガーを掛ける横棒は、どれくらいの太さがいいのか?
・……。
構想はおおむねまとまった。
だが、図面が描けない。板の厚みが決まらないからである。1㎝前後あれば充分だと思うが、工作がしやすくて見た目がいい板で手に入る厚みはどの程度なのか?
近々、太田のジョイフル本田まで下見に行かねばならない。
ついでに考えたのが、我が事務室用の、キャスター付き本棚である。
私は何処に行っても本につきまとわれ、この部屋でも本が溢れかえっている。中でも始末に困っているのは、算数、数学用の参考書や問題集、それを解いたノートの置き場所である。
それを収める本棚を作るのなら、楽譜も入れたい。未読の本を入れておくのもいいじゃないか。色々と妄想は進んで、3段程度の本棚を2つつくり、それをちょうつがいでつないで開閉できるようにすることにした。下にキャスターをつけ、開き気味にしておけば、ちょっとさわった程度では倒れないだろう。
これも、リカちゃん用タンスと一緒に作っちゃえ!
季節は師走。屋内で作業をしては部屋中が木くずで覆われる。作業は外で。寒風にさらされながら作業を続ける私の姿がまざまざと目に浮かぶ。
走るような愚かな真似はしないが、それなりに忙しい師走になりそうである。