04.06
2016年4月6日 圧縮
事の起こりは、極めて望ましいものであった。横浜の瑛汰が、どうやら日本の歴史に深い関心を持ったようなのである。
「ねえ、ボス、TSUTAYAって知ってる?」
突然かかってきた電話で、瑛汰はそういった。
「知ってるさ。ボスはネットでTSUTAYAからCDをレンタルしてる」
「だったらさ、大河ドラマをレンタルして瑛汰につくって」
ほう、瑛汰、お前はその歳にして早くも大河ドラマに関心を持つか。だがな。
「大河ドラマか。あれなあ、いいのもあるが、どうしようもなく下らないのもあるし、そもそも歴史を歪めてるのもあるぞ」
「いいの、いいの。で、瑛汰ね、坂本龍馬と織田信長と徳川家康と豊臣秀吉と武田信玄に関心があるんだ。ね、借りてよ」
「借りるのはいいが、でもお金がかかるぞ」
「うん、だから瑛汰、ボスがつくってくれたら1000円払うよ」
「瑛汰、1000円ではとてもじゃないが足りない」
「えっ、1000円で足りないの? だったら2000円あげる」
「それでも全然足りない」
「だったら、瑛汰の誕生日プレゼントでいいから、ねえ、借りて」
そこまで言われたら引き下がれないではないか。
「わかった。TSUTAYAでどれが借りられるか調べてみるわ」
結果わかったのは、瑛汰のリクエストに応える大河ドラマは
・龍馬伝
・風林火山
・徳川慶喜
・秀吉
・信長
・武田信玄
・徳川家康
・国盗り物語
であった。龍馬伝はDVDで全14枚、他は「国盗り物語」(これは総集編しかなく、全2枚)を除いてては13枚である。直ちに予約した。
私は平等をもって主義とする。瑛汰にやってやることは啓樹にも璃子にも嵩悟にもやってやらねばならぬ。
「啓樹、瑛汰がこんなのを見たいというんだが、お前は見たいか?」
これが私の平等主義である。そう問い合わせて
「いらない」
というのなら、瑛汰にだけつくればよろしい。
「見たい」
なら、2枚ずつつくる。それだけのことだ。
「うん、僕も見たい。それからさあ、源義経、ない?」
ほうほう、戦国時代から400年ほど時代をさかのぼるか。よし、じゃあ
・義経
も借りるか。
こうして、壮大なコピー事業がスタートしたのは先週のことであった。
まず、「龍馬伝」から届き始めた。それはよいのだが、リッピングしてみると、DVD1枚の容量は7ギガを超していた。普通のDVDディスクでは収容できず、DL(ダブル・レイヤー)という、記録面を2層にして2倍近く録画できるディスクがいる。
困ったのは、このディスクが高いのだ。普通のDVDディスクが1枚20円~30円で手に入るにの、これ、1枚100円近くする。ということは、だ。依頼された大河ドラマをDVD枚数にすると107枚である。瑛汰、啓樹用に加え、バックアップとして我が家にも置くとすると、総量321枚。つまり3万2000円かかる。
加えて、レンタル料は16枚で3050円である。これで2万円ほど必要だ。
「おいおい、ちょっと待て」
考えようによってはたいした金額ではない。しかし、考えようによってはたいした金額である。
レンタル料は削減不可能だとしても、ディスクのコストを引き下げる方策はないか? そもそも、どうしてDVDディスクが、ブルーレイディスクの2倍もするんだ?
と怒りを交えて種々検討した結果、圧縮ソフトを使って安価な普通のDVDに焼き付けるにこしたことはない、との結論に達し、圧縮ソフトをネットで探した。
あったことはあった。MacでWindows用のDVD Shrinkというソフトを動かすのだという。そんなことができるのか、と驚きつつ、ネットでたどり着いたページを見ながらやってみたのだが、これ、なかなか思ったように動いてくれない。ネットから持ってきたDVD Shrinkを確かにインストールしたはずなのに、このソフトが何処に存在するのかがわからないのである。従って、利用するたびにインストールし直すという手間がかかる。馬鹿馬鹿しいことこの上ない。多分、私のやりかたが間違っているのだろうが……。
8000円近くする有料ソフトはある。が、私の狙いはコストの削減である。有料ソフトなどとんでもない。
で、あちこちネット上を散策しているうちに、ディスク作成ソフトToast Titaniumに圧縮機能があることがわかった。このソフト、私も持っている。
「助かった!」
ところが、である。
いま現在、使い方がわからないのである! 機能があっても、使い方が不明では意味がない。
というわけで、今日は課題の積み残しである。
と観念したら、つい先ほど、TSUTAYAから、大河ドラマのDVD16枚を発送した(何故16枚かというと、この枚数が1枚当たりの単価が最安になるのである)とのメールが来た。ということは、明日、16枚のDVDが届く! レンタル期間は1ヶ月だから、まあ、それなりに時間はあるのだが、さて、私はぶつかった壁を乗り超えることができるのか? それとも大枚の金を使わねば瑛汰、啓樹のリクエストに応えることができないのか?
課題の解決を迫られている私である。