2019
03.18

2019年3月18日 悪戦苦闘 その2

らかす日誌

現在、午前9時25分である。異例の早い時間に日誌を書いている。

今日は午後から仕事がある。そのまま宴会になだれ込むのが今日の予定で、明日は朝から宇都宮に出かけ、一泊する。明後日は会議と宴会である。
と考えると、私もなかなか忙しい。忙しさにかまけていると、MacBook Air騒動の詳細を忘れてしまうかも知れない。ために、このような時間に書き始めた。
これでいて、私はなかなか律儀で、真面目なのである。お分かりいただけたかな?

さて、土曜日16日の朝は再び「移行アシスタント」の操作から始まった。
その準備として、iMacの書類フォルダーから、容量の大きい音楽ファイルを外して外付けハードディスクに納めた。デスクトップからも写真の入ったフォルダーを外した。移行するデータ量を減らすためである。準備は整った。

今回はうまく行くはずだ。そう思って操作を始めた。私は前向きなのだ。
待つこと1時間。再び操作は「残り約1分」までたどり着いた。移行するデータ量は前回よりはるかに少ない。であれば、間もなく終わるはずである。そう思って待った。

再び待つこと1時間。あいかわらず

「残り約1分」

である。何故だ? と思わざるを得ない。どうしてここで作業が止まってしまう?

再度待つこと1時間。ディスプレーにはまだ、

「残り約1分」

が表示され続けている。おかしい。やっぱりおかしい。これはキャンセルである。私の手では作業が続けられそうにない。

「移行アシスタント」は再びキャンセルを拒んだ。ご主人様の命令を2度も拒むとは、太いヤツである。やむなくMacBook Airを強制終了し、再び立ち上げた。さて、何がおかしいのか?

起き上がったMacBook Airのディスプレーを見て愕然とした。

「内蔵のメモリーがほとんど満杯です」

という趣旨のウォーニングが現れたからだ。満杯? だって「移行アシスタント」は2度に渡って私の指令を実行しなかった。何も移ってきてはいないはずではないか。であれば、もともと内蔵メモリーに入っていたのはOSだけのはずである。それなら20ギガにも足りない量だ。それなのに、256ギガの内蔵メモリーが満杯?

どこにそんな大量のファイルがある? 思いつくところをすべて調べた。せいぜい50ギガ程度しかない。それなのに、内蔵メモリーだけは250ギガを超える使用領域がるあると告げてくる。どこに200ギガのデータがある?
お手上げである。ここまで来ると、私の手には負えない。アップルの専門家の手助けがいる。電話をした。

今回出てくれたのは、大成(おおなり)さんという女性であった。頼もしいことに

「最後までお付き合いをします。ご心配なさらないで下さい」

と冒頭にいってくれた。うん、ありがとう。こうなったら、私は最後まで貴女についていくから、可愛がってね!

私の話を聞いた大成さんは、リモートで私のパソコンに入りたいといった。アップルのサイトからアプリをダウンロードし、入ってきてもいいよのボタンを押すと、ディスプレー上に赤いポインタが現れた。向こうでも、私と同じ画面を見ているらしい。

見ながら彼女は、次々に指令を出した。私は、もちろん従う。あれを開き、これを開き、思いつく限りを点検した彼女はいった。

「この大量のファイル、どこにも見つかりませんねえ。でも、確かに内蔵メモリーは250ギガを超えて使われている。うーん」

私も少しは彼女のお役に立ちたいと思った。いや、彼女の役にたつということは、私のMacBook Airを健康にすることだから、本当は自分の役にたつといって方がいいのかも知れない。彼女の役にたつ振りをして自分の幸せを求める。これは、私の彼女への甘えか?

「移行アシスタントは途中まで作業を進めていたから、多分、大量のデータがこちらに移っていて、1回目は入りきらない量だったから最終段階で挫折した。最終段階を終えないと、すべてが不可視ファイルになって我々から見えないのではないですかね? だから、2回目の作業では使える領域がほとんどのこっておらず、これも最終段階まで行けなかった」

「うーん、そうかも知れませんねえ」

専門家でもあまり体験したことがない異常事態に私は直面しているようである。
私は提案した。

「お手伝いいただいた操作で、不要なデータが見つからないとすると、取り除くことは不可能ということになります。であれば、一度内蔵メモリーを初期化して綺麗にし、改めてOSをインストールした上で移行アシスタントの作業をしたらどうかと思うんですが」

「確かに、それしかないかも知れません。しかし、時間がかかりますよ。やってみます?」

私はやってみると答えた。彼女は初期化の仕方、ネットを介してのOSインストールの方法、その際の注意点を細かに説明してくれた。私がメモをとったのは言うまでもない。

「では、それが済んだらお電話を下さい。そこから2人で作業を始めましょう」

私は勇気を持って初期化、再インストールを始めた。勇気? いや、だって、そうしなければ私のMacBook Airは使えないのだから、これは勇気ではない。ほかに道がなければ、勇気があろうとなかろうと、その道を進むしかないのだから。

その作業は1時間ほどで終わった。さて、大成さんに電話をかけ、その指示に従いながら、慎重にデータ移行作業に取り組んだ。時間がかかるので、一度電話は切った。大成さんは

「心配です。私は7時までの勤務なので、勤務が終わる前にもう一度お電話を差し上げます」

といってくれた。ここまで熱心に指導をしてくれる人も珍しい。ひょっとしたら、電話越しにが芽生えたか?

やっては見るものである。今度はうまく行った。アプリも私が作ったファイルも、みごとにMacBook Airに移っている。

次の点検は、アプリが正常に動くかどうかである。まず、MicrosoftのOfficeである。立ち上げるとIDとパスワードを聞いてきた。えっ、IDとパスワード? そんなもの、どこかに記録していたか?
後回し
データベースソフトのBento。これは、プロダクトキーを入力せよという。そんなものあったかなあ……。
後回し
メール。アカウントの設定をせよ。うーん、面倒! がここが我慢のしどころだ。iMacを見ながら入力。パスワードは「……」、えっ、違ってる? じゃあ、こっちのメモが正しいのかな?
入力を終えると、なんと900件近いメールが届いた。サーバーに残っていたメールがすべて流れ込んだらしい。
これで、少なくともメールは出先でも利用できる!

夕食をとっていると、大成さんから電話が来た。約束はきちんと守る。私に似て律儀な方である。
おかげでうまく行ったことに礼を述べ、進行状況を説明した。まだすべてのアプリが動いたわけではないので、できれば明日日曜日に電話をもらえると助かる、とお願いした。大成さんが日曜も出勤されることを聞いていたからである。

「午前中は電話対応の約束が入っているので、お昼近く、あるいは午後になりますがよろしいでしょうか?」

とおっしゃるので、もちろん、とお伝えした。

その夜は映画鑑賞を1本だけにし、9時頃からアプリを設定する作業に没頭した。
Office。ない、IDとパスワードが見つからない。では、iMacのキーチェーンアクセスで分からないかと探したが、見つからない。うーん、これが使えないとなると、MacBook Airを移動オフィスとして使うのは難しくなるぞ……。だが、ないものはない。もう一度買うのか?

Bento。古い書類をごそごそ探していたら、あった! プロダクトキーが含まれたWebの画面をプリントアウトした紙が見つかった! なかったらどうしよう、もうBentoは売ってないし、Filemakerを買う? 5万円するぞ! と悩んでいたが、助かった。これが使えないと、膨大な映画コレクションが整理できないもんな。

Webの「お気に入り」もすべて移ってきた。そう、お気に入りが移ってくれないと、MacBook Airで「らかす」の編集も、頼まれたホームページの更新もできないから、これも助かった。

残りはOfficeのみである。

こうして、日曜日を迎えた。大成さんはきちんと電話をしてくれた。

「というわけで、残りはOfficeだけになりました。以前、移行アシスタントを使ったときは、アプリごとの設定も移っていたと思うんだけど、どうして今回はこうなったんですかねえ?」

「はい、前のコンピューターからすべてを移行すればいいのでしょうが、今回はMacBook Airの容量が小さいので、選択したものしか移行しませんでした。それが原因だと思われます」

なるほど、専門家でも「思われます」としかいえない世界か。私に分かるはずがないな。

「それで、Officeについて、何とかならないかといろいろ調べてみました。しかし、うまい方法が見つからなくて」

まあ、仕方がない。代替策を私が考えるしかないことなのだろう。

「ところで大成さん、実は昨日、古い書類を探索していたら、貴女の名前を書いたメモを見つけました。貴女には一度お世話になったらしい。大成、と書いておおなり、とふりがなをつけていました。不思議なご縁です」

アップルのアドバイザーは何人いるのだろう? 同じアドバイザーにお世話になるというのはかなり珍しいことではないのか? それとも、いちいち名前をメモすることがないので、気がつかないだけなのか?

こうして、やっと昨日午後になって、私はMacBook Airをなんとか使える状態までこぎ着けたのである。気持ちにゆとりが出た私は昨夕、久々に「らかす」を更新した。

そして、追伸である。
今朝になって、Officeが動いたのだ! IDとパスワードが思わぬ処から見つかったのである。いや、同じ書類には何度も目を通していたのだが、気がつかなかっただけだ。私、目が悪くなったのか? まあ、間もなく古希。悪くなっても不思議ではないし、確かに最近、朝の起き抜けに目の焦点が合いにくくなっているが……。

これで準備万端整った。働くぞ! というのは、古希にしては張り切りすぎか?