『とことん合理主義 – 桝谷英哉さんと私』全21回目次

【目次】とことん合理主義 – 桝谷英哉さんと私

徹底した合理主義を貫いた「クリスキット」の生みの親・桝谷英哉氏。彼と過ごした12年間の日々と、その強烈な個性、そして彼から学んだ「理屈」の記録です。

全21回・エピソード一覧

  • [第1回:前史] – 異音を発し始めた愛用の真空管アンプ。買い替えを模索する中、八重洲ブックセンターで一冊の本に出会う。そこに書かれていたのは、当時のオーディオ界の常識を「パタパタ叩いて実験してみなはれ」と一刀両断する強烈な合理精神だった。

  • [第2回:奥さんの声] – 「あんたの奥さん、どないな声してまんねん?」。アンプの音質を問う筆者に対し、桝谷氏が放った伝説の逆質問。言葉による虚飾を排し、「能書きはええから、まず聴いてみなはれ」と迫る桝谷ワールドの洗礼。

  • [第3回:虜になった] – 日付変更線を越えて届いたバラバラのパーツ群。8時間を超える格闘の末に産声を上げたクリスキットは、ジョン・レノンの歌声から未知のクラシックの世界まで、真実の音を連れてきた。筆者は、その日からオーディオ雑誌を捨て、音楽の虜となる。

  • [第4回:たこ焼き先生 Ⅰ] – 桝谷氏のルーツ。病弱な少年時代、音楽とメカへの執着。V社の最高級ステレオを「これは家具だ」と断じる謎の技術部長との出会いが、素人をアンプ設計の道へと引き摺り込んでいく

  • [第5回:たこ焼き先生 Ⅱ] – 英語はプロだが電気は素人。そんな桝谷氏に、たこ焼き先生は「アンプを作れるまで教える」と宣言。たこ焼きを頬張りながら、物理法則の深淵へと足を踏み入れる奇妙な師弟関係。

  • [第6回:たこ焼き先生 Ⅲ] – 通信教育と洋書の独学、高級舶来アンプの解体。10数年の歳月をかけ、「理屈が通ればメーカー製を凌駕できる」ことを証明したMark VIの誕生。

  • [第7回:君子の上] – 桝谷氏は「君子」であった。過去の自説に縛られず、理屈に合わぬと知れば昨日の自分を躊躇なく捨てる。その徹底した「豹変」こそが、クリスキットを進化させ続けた。

  • [第8回:君子の中] – 「「夏は足元が暑い」という理由から始まったトランジスタへの挑戦。偏見を捨てて物理特性に向き合った結果、ついに「球の時代は終わった」と断言するに至る。

  • [第9回:君子の下] – 「大新聞がバカな記事を!」朝日新聞への怒りから始まった、LP派からCD派への鮮やかな鞍替え。過去の評価に縛られない「君子」の合理主義。

  • [第10回:安いのを買え!] – 「高いものを買うたらあきまへん」。300円の豆腐より100円の豆腐が旨いこともある。常識を逆転させる「安いCDプレーヤー推奨」の理屈。

  • [第11回:ケーブルの話] – 1m1万5000円の「方向性があるケーブル」の嘘を、銅線の製造工程から論破。電気の速度を考えれば、ケーブルの左右の長さなど関係ないという、目から鱗の合理主義。

  • [第12回:1本24円] – 「140万円のアンプより音がええ」のはなぜか。佐渡島で焼かれる高級抵抗から、宣伝費をかけないキットの強みまで、安さと高品質を両立させる合理的な裏舞台。

  • [第13回:5万円] – 鼻の穴まで真っ白になる凄絶な「削り」の木工作業。親友カルロスのために、そして桝谷氏の依頼で5万円の「ホーン・ヘルパー」が誕生するまでの苦闘の記録。

  • [第14回:マルチチャンネル] – ベニア板をゴムバンドで締め上げ、理想の「指数曲線」を作る驚異の設計。JBLを捨てテクニクスの安価なドライバーで「本物の音」に到達した、マルチアンプの到達点。

  • [第15回:ホーンなんですが……] – 航空ベニアを削り、割り箸とゴムバンドで無理やり湾曲させる。ゴムが弾け、石膏に悩み、理想と妥協の間で格闘した、執念のマルチセルラー・ホーン製作実録。

  • [第16回:客とは] – 資源の無駄を嫌いファックスの余白に怒る。演歌を聴くなら売らん! 金を払う前は客ではない。桝谷氏が貫いた「売る相手を選ぶ」という凄まじい矜持と、エバンゲリスト大道氏の苦労。

  • [第17回:趣味] – 寅さんの二カ国語放送で英語を学び、バイオリンを自作し、ドイツ製カメラの「ピントの甘さ」をテストで暴く。何事もプロはだしまで究めなければ気が済まない、桝谷流「趣味の極意」。

  • [第18回:Macintosh入門] – 楽譜作成ソフト「Finale」のためにMac導入を決意した桝谷氏。キーボードの電源キーすら知らない師に対し、大道氏の遠隔授業が幕を開ける。「師弟逆転」のMacintosh入門記。

  • [第19回:Macintosh学習] 神戸から「電話をくれまへんか」のワン切りで始まる120分の遠隔授業。マウス、アイコン、クリック……。概念すら持たない70歳の師に、言葉だけでMacの魂を吹き込む無謀な大事業。

  • [第20回:Macintoshマスター] – 授業料10円の「電話授業」を経て、師は驚異の進化を遂げる。楽譜作成、顧客データベース構築、さらには本の版下作成まで。自力で「ドヴォルジャーク」の綴りを探求し始めた愛弟子の出藍の誉れ。

  • [最終回:さようなら、桝谷さん] – 2000年12月1日、BSデジタル放送開始の朝。新しいメディアの幕開けを見届けるかのように、巨星は静かに堕ちた。一人で飲む「祝いと通夜」の酒。師が遺した強烈な記憶と、クリスキットへの招待。

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