2007
11.07

2007年11月7日 小沢一郎さん・その2

らかす日誌

民主党の小沢一郎代表が辞意を撤回した。 わずか2日での翻意。新聞では「迷走」などの単語が踊る。

だが、今回の騒動を、自民党と公明党の間に亀裂を入れることを狙った謀(はかりごと)と解釈する私の見方は違う。

後出しジャンケンのようだが、小沢一郎さんには2つしか道はなかった。翻意して代表を続けるか、代表を辞して裏側から民主党を指導し、実質的な選挙対策本部長を務めるか、である。要は、間近に迫った衆議院選挙で第1党になれればいいのだ。そのため、自民・公明の間にできた亀裂にくさびを打ち込んで仲を裂くには、民主党にとどまり、党を動かさなければならない。

今回の辞意撤回は、いわば予定通りの行動なのだ。

くどくなるが、今回の騒動の図式を改めて記しておく。

いまの自民党は衰えが見えてきた商店である。長い間消費者の信用を得て大きな店構えを誇ってきたが、成功しすぎた体験が裏目に出たのか、消費者の嗜好が変わったのか、あまり客が来なくなった。このままでは店が潰れる。

そこで彼らは延命策を考えついた。規模は小さいものの、熱狂的なファンを持つ商店、公明党との提携だ。2つ合わせれば、まだ業界No.1の地位を保てる。新しい商品を売り出す際、公明党の店にしか行かなかった客を回してもらう。そうすれば売り上げは落ち込まない。

「自民公明屋では、ちょいと語呂がねえ」

と違和感を漏らす店員もいたが、

「何をいう。あの銀行業界にだって、三井住友銀行というのがあるではないか」

と押し切って1999年、自民屋の主人、当時の渕造は公明屋の娘・公子と同棲を始めた。当時は自由党とも同居していたため正妻にはできなかったのだ。2000年、渕造を継いだ新店主、森造は、晴れて公子を正妻とする。いったん嫁に入れば、店主の座を降りた旦那とは離別し、新店主が嫁に迎えるのがこの業界のしきたりなのである。

狙いは当たった。手を携えて業界No.1の地位を保ち、我が世の春を楽しんできた。

ところが、である。自民屋の店員に不祥事が相次いだ。お客様に預かった金に手をつける。店の金に手をつける。手口は様々で。領収書偽造、領収書をコピーしての2重請求など、もう、何でもありである。

消費者離れは、通信販売部門から始まった。代わって伸してきたのは、これまで歯牙にもかけなかった民主屋である。素人の集まりだと思ってバカにしていたら、なんと通信販売の売り上げが逆転されてしまったのだ。

通信販売の売り上げは、相対的には小さい。だが、放っておけば収益の半分以上を占める店売りにも影響が出かねない。自民屋にとっては失態である。

業績不振の責任を取って、前の主人安造が引退した。公明屋からの嫁・公子は新店主・福造の嫁になった。

新店主・福造は考えた。

「このままでは自民屋は立ちゆかない。何とかしなければ」

業界No.1の座は責任を伴う。それとともに、余禄も伴う。現在の地位を守り抜くのが福造の使命なのだ。

「これしかない」

決意を固めた福造は、女ながら民主屋を仕切るいっちゃんにデートを持ちかけた。余人を排して2人だけで2回会った。

自民屋と民主屋の業務提携、絆を強固にするための2人の結婚という話がどちらから持ち出されたのか、あまりはっきりしない。いっちゃんは

「福造さんから」

というが、福造は

「あうんの呼吸」

と煙に巻く。

それはまあいい。いずれにしろ、いっちゃんはその気になった。ところが、店に戻って幹部に説明したところ、大反対を受ける。店のためを思って決意したのに、そんなら私、仕事辞める、といいだしたいっちゃんにあわてた幹部が、あんたに辞められたら店が存続できなくなるといって引き留めた。

というのが、大まかな流れである。

私は長い間結婚生活を続けている者である。だから、福造といっちゃんの秘めた関係があからさまになったことで、どうしても公子が気になる。

そりゃあ、政略結婚だったかも知れない。だが、歴代の店主と蜜月を続けてきたことも事実だ。実家の援助もたくさん引き出した。私がいなければ、いまの自民屋はないはずである。なのに、新しい亭主は、こともあろうに、商売敵と思っていた民主屋のいっちゃんと結婚したいという。民主屋って、共通の敵じゃなかった?!

「だったら、私って何だったの? 私ってどうなるの? 悔しい! !!」

公子は、当然そう考える。公子の実家・公明屋も苛立っているに違いないし、公明屋の本家、創価屋にいたっては、

「これまでの恩義を忘れおって。そもそも、いまの売り上げを保っていられるのも、創価屋の協力があってのことではないか。この裏切り、どうしてくれよう!」

と怒り心頭に発しているのではないか?

そこから思いついたのが、前回書いた民主党による謀略説である。

すべてが小沢一郎代表と民主党幹部が次の衆議院選挙に勝つために書いたシナリオ。だとすれば、シナリオには最後まで小沢一郎さんの存在は欠かせず、代表の辞意撤回もシナリオの一部である。シナリオのもう少し先には、自民党と公明党の間にできたに違いない亀裂にくさびを打ち込み、仲を決定的に裂く手法が書いてあるはず……。

私の読み筋が当たっているのか、いないのか。

この話で公明党、創価学会の動きがちっとも伝わってこない。記者や評論家といった専門家は、私のようには見ていないらしい。取材を重ねてデータが豊富で、その道の勘所も押さえているはずの彼らが彼らが一顧だにしない読み筋。

やっぱ、違ってるのかなあ?

それでも公子が気になる私である。