05.17
2008年5月17日 頭のいい子
四日市の長女の長男・啓樹は、今年から幼稚園児である。3歳保育に通い始めた。
この幼稚園、珍しいことに家庭訪問があるそうな。で、長女は本日、初めての家庭訪問を受けた。
「それがさあ、啓樹君って頭のいい子ですねえ、っていうのよ。何か言うとすぐに理解するんだって。そして、ちゃんと覚えているっていうのよ」
長女が誇らしげに妻に電話をしてきた。私は妻からその話を聞いた。
長女よ、誇るのではない。感謝しなさい。素晴らしい父(つまり。私)を持ったことに。敬樹の頭の良さは隔世遺伝であるぞ。
今日は土曜日。いつものように次女が瑛汰を連れてやってきた。いあ、正確に書くと、いつものように私がお迎えに上がり、お送りした。
瑛汰も、同じ年頃の子供と比べると語彙も理解力も優れているというレポートを次女から得ている。贔屓目もあるだろうが、ひょっとしたら瑛汰も私の遺伝子を受け継いでいるのか?
にしても、私の遺伝子って、そんなに強力なのか?
これは、爺馬鹿、いやボス馬鹿、なのだろうなあ。
さて、今日は本箱を仕上げたい。
本題に入る前に、画像を1つお示ししたい。前回、「写真がないので説明が難しい」と書いた垂直ドリルである。
写真は、買ってきた垂直ドリルに、手持ちの電動ドリルを取り付けたところである。これで、この器具がどのような働きをするか、ご理解いただけると思う。
【側板を作る】
できるだけコストを抑えるには、木材の使用量を減らすしかない。この大命題のもと、私は2×4材3枚をダボでつなげば簡単にできる側板を、あえて複雑な構造にした。構想図を次に示す。
左右には2×4材をそのまま使う。が、真ん中には15cmの長さに切った2×4材を一定の間隔で挟み、2枚の2×4材をつないでしまおうというけちくさい構想だ。
いや、けちくさいといってしまっては我がアイデアが泣く。あえて空間をとることで、総重量を減らす。これも狙いの1つである。
点線は、2×4材をつなぎ合わせるためのダボである。
こういうものを作りたくて、前回、垂直ドリルを使い、ダボ用マーカーで位置決めし、再び垂直ドリルを使ってダボ穴を開けた。
2×4材の一方のダボ穴に木工ボンドを入れ、ダボを金槌で打ち込む。他方の2×4材のダボ穴にも木工ボンドを入れ、あわせて、2×4材の接合面に木工ボンドを塗ってダボ穴をあわせて2枚の2×4材をつなぐ。この際、どちらかを金槌で叩かなければならないが、その際は木材の歯切れを間に入れ、棚板になる木材に打撃痕が残らないように気をつける。
これで、見事につながるのである。
あれっ? 見事につないだはずなのに、2枚の2×4材がフラットにつながらず、何か角度ができてるぞ……。
もう1カ所作業をしてみた。
あれっ、今度はずれてる。ダボ用マーカーまで使って性格にダボの位置を決めたはずなのに、何が起きた?
このままでは、あちこちでズレが出てしまう。ズレては壮大な私の設計が生きない。原因を探った。2っ見つかった。
1,2枚の2×4材を床に置いてダボ用マーカーでダボ穴の位置を決めたとき、どちらかの下に木くずが挟まったらしい。このため、一方の2×4材が浮いてダボ穴の位置がずれた。
これは次回から注意すればいい。深刻なのはもう一つだった。
2,垂直ドリルにガタがある。垂直ドリルに取り付けた電動ドリルを動かしてみた。本来なら微動だにせず、ドリルの刃は垂直に下に降りるべきものである。ところが、この垂直ドリル、固定した電動ドリルが動く。垂直の穴を開けているはずが、時には斜めの穴があく。2種類あった垂直ドリルの安い方を選んだためか、困った。
ちなみに、高い方の垂直ドリルは、確か3000円少々であった。いまとなっては、わずか1500円を惜しんだ報いか、と後悔しても始まらないが……。
が、まあ、たかが木工である。多少の狂いは最初から織り込み済みだ。何とかなるだろう。
【ダボ棚受けを取り付ける】
ダボ棚受けといっても、ご存じない方も多かろう。そこで、まず写真をお見せしよう。
左の写真で、棚板を受け止めている小さくて丸い金属がダボ棚受けである。
これは外に出ている雄ねじと、写真では見えない雌ねじでできている。まず、側板に雌ねじを入れる穴を電動ドリルで開ける。この穴に雌ねじを金槌で叩き込み、その上で雄ねじをねじ込む。
いずれの世界でも、女とはは叩かれて初めて役に立つものと見える。
何度も計算を繰り返したのは、このダボ棚受けの間隔、棚板間の間隔である。
市販の本棚はこの間隔が杜撰だ。見た目の良さを重視するのか、材料費をケチろうとするのか、中途半端に広すぎるものが多い。本を収めると、普通の本では上が空きすぎる。もったいないスペースである。かといって、雑誌や大判の絵本を入れようとすると入らない。
本棚に本を横にして入れるのははなはだ美観を害する。さて、どの程度の間隔にしたら無駄なスペースが最小となり、しかも、雑誌や大判の絵本を縦に収納できるのか?
何度も本のサイズを測り、計算を繰り返した。その結果、最下段には35cmを与えることにした。その上は、基本を24cmとした。中途半端に残ったところは17cmを2段とった。
我が家にある、最も背の高い本は34cmだった。通常のハードカバー本は、19cmから22.5cmに収まる。17cmには高さ15cmの文庫本を収める。
という計算ができるところが、自作の最大のメリットである。
が、時には不具合も起きる。高さが17.5cmある新書を収める棚を忘れた。17cmには入らない。24cmでは隙間がたくさんできる……。
という思いがけない結果も、自作の楽しみである。
ということにするしかない。
【構造用棚板】
側板はまっすぐ立っていればそれでいい。多少サイズが狂ってもたいした問題はない。
だが、構造用棚板は正確な長さがいる。長すぎても短すぎても、ものの役には立たない。こういうとき、木工では、やや長めに切る。短すぎれば修正が効かないが、長すぎる分には、余分なところを再度カットすればいいからである。
ということで、側板と同じ手法を使い、6枚の構造用棚板を作り上げた。長さはすべて90cmである。気楽な作業だ。
【ニスを塗る】
今回の工作の要諦は、側板と構造用棚板の製作である。これが私のオリジナルなのだ。我がアイデアがうまく機能するのかどうか。ここまで来たら、一刻も早くそれを見てみたいのは人間の性であろう。
が、かなりキチキチに作ってある。一度組み上げたら解体するのが面倒だ。組み上げる前に、ニスを塗っておいた方がいい。
と考えて塗装作業を始めた。本棚作りに取りかかって4日目の夜だった。
作業は部屋の中で行う。外では、埃などが付着しかねないからだ。床に新聞紙を広げる。その上に、長さ3m30cmという長大な棚板を置く。刷毛を使ってニスを塗る。ダボ棚受けの雌ねじ? そんなもの、無視して塗るしかないじゃん。
のちに、その後遺症に苦しむことになる。雄ねじがなかなかねじ込めなかったのだ。ニスがねじ山にくっついたか?
【組み立ててみた】
水性のニスは乾きが早い。その分、価格も高いが。
乾いちゃった。組み立ててみようか。
「おーい、ちょっと手伝ってくれ!」
2階にいた妻を呼んだ。まず、一番長い3m30cmの側板を立てる。こいつは天井に届いているから、立ててやれば自力で立ち続ける。
右端の1m80cmは、少し斜めにして立てかけておけばいい。その間に2本の側板が立つ。これは妻に支えておいてもらわなければ、構造用棚板を間に入れて固定する作業ができない。
床に近いところから構造用棚板をはめ込む。3枚ともすんなり入った。これで上部の構造用棚板3枚をはめ込めば本棚はしっかりと己の足で立つはずである。少なくとも、そのように設計した。
2枚まではすんなり入る。当たり前だ。そして3枚目。入らない。ちょいと長すぎたらしい。夜にもかかわらず、電動丸鋸のけたたましい音をさせながら、すこしばかり短くする。あれ、まだ入らないか。もう一度。よし今度は入った。
本棚はしっかりと壁面にたった。美しい。透明のニスを塗られた白木が、部屋の雰囲気を明るくする。
「うーん、やっぱり白木はいいわ」
棚板を支えていた妻がいった。その言葉で私は、最終チェックを忘れた。それが、最終的には誤算となる。
【棚板作り】
これで構造体は完成した。残るは本を載せる棚板を作ればいい。
のだが、私は杜撰な男である。この段階に達するまで、棚板が何枚必要なのかを計算していなかったのである。
さて、棚板は何枚いる? すでに作業を終えたダボ棚受けを数えてみた。そうか、この本棚には22枚の棚板が必要なのか。
棚板は構造材ではない。本の重みに耐えてくれればいい。とすると、長さは90cm弱でいい。3枚つなぎ合わせて1枚の棚板ができるから、1×4材3枚で2枚の棚板ができる。22枚の棚板を作るには33枚の1×4材があればいい。
メジャーで寸法を出し、曲がり尺でカットラインを引いて電動丸鋸で切断する。電動サンダーで磨く。66枚の棚板予備軍を作り上げる。あとはダボでつなぐだけだ。
ここまで考えて、ふと憂鬱になった。ということは、ダボ穴をいくつあければいいんだ?
90cmの1×4材は、3つのダボでつなぐことにした。とすると、1枚の棚板を作るためにあけなければならないダボ穴は12になる。22枚だと、264。ダボ用マーカーで位置決めをしなければならない箇所は132箇所。それって、避けたいなあ……。
考えを巡らせた。巡らせた結果、楽な方法を思いついた。同じところに穴をあければいいんだろ?
こう考えた。3枚の板に、それぞれ一方の端から同じ距離の3箇所を測定する。この3箇所で、接合面の真ん中に穴をあければ、3枚は正確にくっつくはずだ。
では、真ん中をどう出すか。3箇所のそれぞれから、等距離に線分を引く。で、その線分の……。
えーい、文章ではなかなか難しい。図で示すと、こういうことである。
おわかりだろうか。穴をあけるところから等距離にある2本の線分と板の端でできる点の対角線を引くと、板の中心、穴をあける場所が分かる。
こうして、棚板を2枚作った。作ってあきらめの境地に達した。プランニングが数学的に正しくても、できがったものが正確であるとは限らないという真理に直面したからだ。できあがった棚板は、板と板の継ぎ目で波打っていた。
安い垂直ドリルは、垂直な穴を保証してくれなかったのだ。
2枚を見ながら私は悟りを開いた。
まあ、これはたかが素人の木工ではないか。究極の正確さを求めるのは間違いである。なんとなく使えるものができればいいのではないか?
残る20枚の棚板のダボ穴は、面倒な位置決めを避けた。板の一方の端から寸法を採って穴をあけるべき場所は出した。しかし、接合面の真ん中は目分量で出した。どうせ狂うのである。目分量で出してないが悪い?
接合面で波を打った棚板がたくさんできた。ニスを塗って乾かした。
【ということで完成した】
ということで、ニスが乾いた棚板を本棚にはめ込んだ。実に見事な作品である。
これが素人大工の作品に見えようか? 見えるはずがない! 部屋の形状を最大限に生かし、というか、部屋の形状に制約されながら、最大の効率を求めた見事な作品ではないか!
とはだれもいってくれないから、自分で称えておく。
【反省することも】
まず、次の2枚の写真を見ていただきたい。
できあがった作品の狂いである。
左の写真、側板と構造用棚板がずれて、構造用棚板が飛び出してる。失敗である。
何故飛び出したか、右の写真を見ていただきたい、側板が壁から浮いている。構造用棚板の一部に長すぎるところがあり、それが押し出しているのだ。だから、上の写真のように構造用棚板が飛び出してしまう。
構造用棚板を取り外し、長すぎるところを修正すればこの不具合は治せる。最終チェックを忘れた、と書いたのはこのことである。側板と構造用棚板しかないときだったら、それほどの手間なしに修正ができた。でもいまは、棚板が入り、本が並べられている。
ここまで来ると修正しようという気力が出ない。完成写真でご覧いただいたように、実用には全く問題がない本棚ができたのである。もういいだろ。
というところまで書いたところで、書きながら飲み続けた焼酎による酔いを自覚した。この辺でキーボードを置く。
これで本棚作りのレポートを終える。
ご愛読を感謝する。
自分でも作ってみたいという方の問い合わせには、できるかぎりお答えする所存である。