2012
07.03

2012年7月3日 天声人語

らかす日誌

 Vox populi vox dei.

これ、ラテン語である。ウィキペディアに頼って日本語訳すれば、

「民の声は天の声」

ということになるらしい。朝日新聞1面の下に連載されているコラム、「天声人語」の出典である。
恐らく、民に主権があるとする民主主義を、最も良く表す言葉として選ばれたのだろう。そこに異論はない。民主主義とは、そのような政治制度である。

だけど、だ。最近、このコラムは民の声ではなくなっているんじゃねーの?
と、今朝の朝日新聞を読んで、つくづく思い知らされた。

いろいろと悪口を書く前に、お読みになっていない方のために、今朝の天声人語を全文転載する。

 

 子どもの頃、お祭りの露店で「カラーひよこ」を買ったことがある。面白うてやがて悲しきというか、愛玩用の幼鳥は毒々しい赤や緑に着色され、思い返せば 哀れな姿だった。〈染められてなお売れ残るひよこたち〉古俣麻子▼チルドレン、ガールズと十把一絡(じっぱひとから)げに呼ばれる国会議員の行く末を思う たび、この川柳が胸をよぎる。実力者の色に染まってバッジをつけたはいいが、「数こそ力」の駒に使われ、先々の保証はない▼子飼いのひよこたちを引き連れ て、民主党の小沢元代表が離党する。衆参50人ほどで新党だという。離党届を小沢氏に預けていた議員は、身の処し方までを、有権者ではなく親分に委ねたことになる▼離党者に多い当選1回組は、世論が雪崩を打った「政権交代バブル」で永田町に職を得た。失礼ながら大半は、バブル崩壊の民主党では再選がおぼつ かない。ここは選挙上手に身を任せ、反増税、なんなら脱原発も掲げて生き残る策だろう▼朝日歌壇に、先の句と対照をなす一首がある。〈自らの色で濃くなる 苺(いちご)ジャム私は私であり続けよう〉大堂洋子。煮詰まるほどに紅(くれない)を深めるジャムには、他力で飾らぬ無着色の潔さがある。政治家もかくありたい▼激動の世で問われるのは「自らの色」だ。着色に甘んじ、独り立ちしないチルドレンは消えてゆく。ひよこじゃないとお怒(いか)りの皆様、集団離党 の次のステップは自分で決めませんか。余計な色を落として出直すもよし、国政の経験を生かして転職するもよし。

 

私の違和感は、ただ1点である。
小沢と一緒に民主党を出た連中は、小沢の色に染められ、小沢に箸の上げ下ろしまで教えてもらわなければ身を処せないアホウ揃いである、とこの筆者は言いたいらしい。あわせて、次の選挙で当選することしか頭にない卑劣漢の集まりである、との断罪も見える。

なるほど。
では、あなたに伺おう。

増税などしないというマニフェストを掲げ、自民党に政権を任せていたら増税です、我々に任せていただければ増税などしませんと声を大にして有権者に訴えかけたにもかかわらず、舌の根も乾かぬうちに消費税増税法案に賛成した連中を何と表現すればよろしいのか?
彼らは自らの色を持っているのか? 持っているとしても、カメレオンのように周りに応じ、時に応じて変わる色ではないのか? 小選挙区制のもと、2大政党の一方である民主党にいなければ、次の選挙は落選するという恐怖に駆られて色を変えた奴らが大多数ではないのか?
親分のドジョウにしてからが、ずっと野党でいれば真面目な政治家と呼ばれたかも知れないのに、政権政党になって財務相や首相になったばかりに、財務省に屈服し、率先して色を変えた主犯ではないか。
そういう、コロコロ変わる色を、あなたは「自らの色」と呼ぶのか? その色は、赤? 青? 黄色? 緑?それとも、紫?

どんな色に変わるか分からない体色を持つ政治家どもと、少なくとも、国民に政権を委ねられたときにまとった色を大事にしようという政治家たちが目の前にいる。
天声人語氏よ、あなたはカメレオンを選ぶのが天の声だと豪語するのか?

あなたがどれほど優秀な頭脳をお持ちであろうが、あなたになにかを説いて欲しくない。あなたは、あなたの論理性と感性と判断力の欠落を深く恥じるべきである。

このままでは、天声人語は、天性人後(生まれつき人に劣る)と呼び習わされることになると断言しておく。