02.11
2013年2月11日 3連休
も今日で終わり。
さて、この間、私は何をしたか。
ま、したといえば、映画を見たことでしょう。最近、我が家に保存されているアカデミー賞受賞作454本を後ろから、つまり新しい方から見ている。
やっぱり、いいものは良く、ま、中には
「何でこんなものが?」
と首をひねるものがないわけではないが、それなりに楽しんでいる。
で、連休中に見たのは、
「ナルニア国物語」
これ、第1作の「ライオンと魔女」が2005年のメイクアップ賞を受賞した。子供のおとぎ話の世界だが、スピルバーグの作品と一緒で、はまるとはまる。
受賞したのは第1作だけだが、勢いで「第2章:カスピアン王子の角笛」、「第3章:アスラン王と魔法の島」まで見てしまった。
子供たちの正義と勇気のファンタジー。現実世界でなかなか目にできなくなったものである。だから、こんな映画に惹かれるのだろうか?
にしても、だ。
ネットで遠隔操作ウイルスを駆使し、ほかの人物になりすまして大量殺人予告などをしていた犯人らしき男が逮捕された。
江の島のネコの首に、このウイルスを記憶させたマイクロカードを取り付け、その事実をマスメディアなどにメールで送りつけていたらしい。そのメールを元に、お巡りさんが江の島のネコを探し出し、防犯カメラの映像などから男を割り出したという。
まあ、今回は真犯人のようである。だけどなあ……。
考えてみるとこの男、人を傷つけるようなことはなにもしていない。ただ、
「いっぱい殺すぞ!」(という文章だったかどうかは別として)
と、ネットに書き込んだだけである。
「それって、言論の自由の範囲内ではないのか?」
などと子供じみたことを書くつもりはない。
だが、この男が犯したといわれる犯罪は、ただ、沢山の人を脅しただけであることは書きとめておきたい。脅して、自分の正体を見破られないために遠隔操作ウイルスを使った。
それだけのことで、テレビでも新聞でもトップニュースとして扱われる。その扱いは、20人、30人を本当に殺した殺人鬼と比べても、劣るものではない。
この男、そんなに悪人か? 悪人だとすれば、何が悪かったのか?
遠隔操作ウイルスという、ネット時代を象徴するような道具は使った。だけど、やったことといえば、教室のみんなが無視していたどうでもいい男が、ある日突然、
「そんなに僕を虐めるのなら、僕、君たちを全員殺してやるからね」
と涙を浮かべながら宣言したに等しい。
その子が、大量殺人を遂行できるような武器や弾薬を持っていないことは誰もが知ってる。宣言されたクラスの子たちは、
「なんかよくわからないけど、あいつ、怒ってたみたいだなあ」
とひそひそと言い交わし、でも、3日たてば頭の片隅にも記憶が残っていない。
その程度のことではないか?
無論、自分の顔を堂々とさらして宣言するのと、自分の匿名性を守りながら社会に向かって発信することの違いはある。どこの誰とも分からぬヤツが、大量殺人を予告すれば、不安を覚える人もいるかもしれない。それは、
隣は何をする人ぞ
というほど人間関係が希薄になった現代社会の病理である。いまは、人が人を信用できない時代なのだ。
「この人、私の身体だけが目当てなのよ」
という不信は、いつの世もあった。それを利用して成り上がった女傑もいた。
しかしいまは、町中で突然包丁を振り回すヤツがいて、秋葉原でナイフで刺しまくるヤツがいる。バスジャックをするヤツもいる。だから、大量殺人予告に怯えてしまう。
そんな世の中になってしまった。
さて、こんな時代、今回の捕り物を見つつ、
「確かに、どう見てもオタクだよな」
「30にもなって猫カフェに入り浸り? キモイ!!」
といっているだけですむわけがない。逮捕された男が真犯人で、長期間収監されるとしても、彼の代わりは必ず現れるのである。
なぜ、時代の病理を一身に背負ったような人間が、次々と現れるのか。
「いまの日本、どっかおかしくないか?」
では、何がおかしいのか?
格差の拡大か? 経済の縮小か? 団塊世代の後遺症か? 小泉が世の中を変えたのか? 階層の固定化か? 親の劣化か? 教育の歪みか? メディアの不勉強か? それとも……。
どうにも、敵の姿が明瞭に見えないのも、今の時代の特徴か。
悪があり、暴力がある。だからそれと闘って平和なナルニア国をつくらねばならない。タイムスリップした子供たちがナルニア国のために剣と弓を取って闘う。恐れがあり、勇気があり、自己犠牲がある。全員で作り上げる王国がある。「ナルニア国物語」が何となく懐かしい。
日本は、何ともやっかいな時代を迎えた。