2015
03.08

2015年3月8日 お買い上げ

らかす日誌

桐生から北関東自動車道に乗り、東北道から首都高へ。用賀で降りて246号。

昨日、息子の指示に従い、朝8時半に家を出て、息子のマンションに向かった。渡米前にマンションも車も売り払って万全の態勢で臨んだにもかかわらず、わずか1年半での帰国。
とりあえず住むところは何とか賃貸マンションを確保したものの、車がない。だから、車を買うのだという。

「そうか。だけど、車がなくてどうやってディーラーまで行くんだ?」

と電話で質問したのが命取りとなり、

「分かった。じゃあ、俺が車で行ってやるわ」

となってしまった。その、息子の車ショッピングが昨日だったのである。

246号の渋滞にいらつきながらも何とか息子の新しい住まいにたどり着き、紅茶を1杯いただいてディーラーに向かった。

「親爺、俺に運転させてよ」

ん? それはいいが、お前、車がないんだから車の保険にも入ってないよな。事故を起こしたらどうする?

「車についてるでしょ」

確かに車の保険には入っているが、支払金額を安くするために運転者を限定している。さて、息子の場合は大丈夫だっけ?
まあ、いいか。

という流れで、私は助手席の人となった。

息子はアメリカではカンパニーカーを使い、割り当てられたのはフォードのエスケープという車種だったという。その妻女殿(同じ職場)は日本車のホンダだったそうだ。

「これが、どっちもつまらない車でさ。フォードはシートは悪いし、アクセルを踏んでもボーボーいうばかりでちっとも加速しない。ハンドルは甘々で、足回りはフニャフニャ。運転するのが苦痛なんだよ」

「ホンダもひどかったですよ。車によってこんなに違いがあるんだ、って認識しましたもん」

息子夫婦は日本にいたころ。BMW318i Touring Wagonに乗っていた。3年落ちの中古で買って、確か6年乗った。それと比べての車評である。

「久しぶりに乗ったけど、やっぱいいね、BMW。アメリカではさ、レンタカーを借りることも結構あって、でもBMWはレンタカーじゃないんだよね。それで、ベンツとか色々乗ったけど、BMWの右に出る車はないね」

というほどのBMWファンになったのは、まあ、私の影響であろう。私が買わねば、息子がBMWに乗る機会はなかったのである。
だから、帰国してBMWにするのは自然な流れだが、実は息子は、BMWの新古車を買う予定であった。30㎞、50㎞しか走っていないBMWが、昨秋から大量に出回り始めた。新車に比べ、価格は100万円~150万円も安い。
ディーラーの苦し紛れである。

最近、日本のBMWはワーゲン、ベンツ差をつけられっぱなしだ。ドイツに車に乗りたいという人々は、まず

評価が高いのに価格が適当な

ワーゲンに向かう。輸入車販売実績トップである。

ドイツ車に乗るんなら、やっぱりブランドだよ、という人々もいる。盲目的なベンツ信者である。
このところのベンツは

「トヨタの車作りに学び、ブランド力に頼って極力手抜きをするようになった」

といわれる。数時間座り続けるとシートがへたる、エンジンはボーボーいって回るだけでちっとも力感がない、など、最近のベンツの悪評は各種あるのだが、それでもブランド好きはベンツに向かう。

「Aクラス、Bクラスは、ベンツと呼ぶのが恥ずかしくなるベンツだ」

ともいわれるが、町中には結構走っている。
私なんぞは、あのグニャッとした曲線多様のデザインに虫ずが走り、武張ったフロントデザインに下品さを感じる。
それでも、ベンツは売れる。不思議である。

で、その2社に、BMWは置いてきぼりを食いかけて、輸入車販売台数万年3位の座を動こうとしない。恐らく、輸入代理店も危機感を持ち、

「○○台以上売ったら、△△円の販売奨励金を出す」

などと、リベートの甘い蜜でディーラーの尻を叩いたのだろう。
あと1台、2台売ればそのリベートがもらえるディーラーは、どうしても目標台数が捌けなければ

「えーい、どうしても売れないんなら、足りない分を売れたことにして中古車に出しちゃえ。それで出る損よりリベートの方が大きいから、結果として得だ」

と判断するのは、極めて合理的である。
こうして新古車が市場に出る。かつて日産のディーラーが多用した裏技だ。そして日産は経営危機を迎えた。危ういかな、BMW。

が、これからBMWを買おうという人には、これ以上ない朗報である。ほとんどまっさらの新車が、100万円~150万円も安く買えるのなら、利用しない手はない。
息子もそのひとりだった。

その息子を、私がいまの車を買ったディーラーに誘ったのは、私の愛車への的確な診断と、明瞭な指針を示してくれたことへの敬意である。
ただ、車を買うのは息子であって私ではない。

「息子は新古車を買おうと思っている」

というお断りをした上での訪問であった。

息子がほしいと思っている車に試乗して戻り、担当員と息子夫婦の交渉が始まった。

「いまなら、これぐらいはお引きできます」

驚くほどの値引き額である。その担当員が席を外した隙に、息子にいった。

「新古車との価格差が5、60万円だったら、新車を買っておいた方が、保障なんかの面で有利だと思うけどね」

戻ってきた担当員と話すうちに、価格はさらに下がった。彼はとうとう、

「少しお待ちください」

と席を外した。上司と相談しにいったようだ。戻ってくると

「プラス15万円の値引きを取り付けました。これがギリギリです。御願いします」

私の車よりランクが高い車種であるにもかかわらず、私が払った金額よりずっと安い。息子が前のめりになるのが分かった。私の買い物ではない私は冷静である。
BMW、販売でそこまで苦労しているか。乗ってみれば、ベンツやワーゲンより、ということは、あらゆる国産車に比べても、ずっと楽しい車なのになあ。


結論を出さぬまま、店を出た。が、息子は、見に行く予定だった新古車の店に行こうとはしなかった。
ディーラーの担当者から私に電話が来たのは、今朝のことである。

「おかげさまでご契約いただきました。本来なら、ご紹介者ということで相応のお礼をしなければならないのですが、何しろ今回は、鼻血もでないほど値引いたものですから、もうすっからかんで何もお礼ができなくて……。この電話を感謝の表れと受け取っていただければありがたいのですが……」

そうか、息子は決めたか。
納車まで2週間とか。恐らく月末には、新しい車に乗って挨拶に来るのではなかろうか?


で、昨日はいつものように瑛汰、璃子の家に泊まった。夜は息子夫婦と川崎の「松の樹」で食事をし、戻ったのは10時前だったが、瑛汰は起きて待っていた。

「今日もボスと寝る」

といっていた璃子は、すでにママのベッドでお休みだった。

「ねえ、ボス。明日もいっぱい本を買うからね」

と言う瑛汰と添い寝して、今朝はラゾーナの書店。
すでに瑛汰の勉強は小学生用の国語辞典では間に合わないほど進んでいるので、まず「新明解国語辞典」を買う。あとは瑛汰と璃子に読みたい本を適当に選ばせ、ついでに私は

蒙古襲来」(服部英雄著、山川出版)

を買った。
瑛汰はいまや、完璧に読書の楽しみを知った。ページをめくるたびに新しい世界に触れ、自分の世界が広がる喜びを自分のものにした。そんな瑛汰は、どんな少年になり、どんな大人になるのだろう?
瑛汰の影響だろう。璃子も本が大好きだ。昨日、私が着くなり、

「ボス、紙芝居を読んで」

ソファに座る私の前に、自分が座る小さな椅子を運んできて紙芝居鑑賞態勢をとった。
今日も、お買いもの中のママが書店にたどり着くまで、3冊読み聞かせをさせられた。そのほかに、自分が読みたい本を買った(正確には、私に買わせた)のはいうまでもない。
璃子は知性美輝く女性に成長するか?

四日市の啓樹、嵩悟と会う機会は限られる。ベタベタする時間が、瑛汰、璃子ほどないのは可愛そうだとも思う。でも、四日市ですくすくと成長してるよな。
そう、啓樹には、瑛汰に買ったのと同じ国語辞書をアマゾンで送っておいた。
啓樹、嵩悟、本を読むんだぞ!