2015
08.29

2015年8月29日 デザイン

らかす日誌

東京五輪のエンブレムのデザインは盗用か否か。

まあ、その、私はデザインの専門家ではない。アップルのパソコン、タブレット、スマホのデザインは秀逸だと思うが、あの時計に関しては

「何であんなものが欲しいんだろう?」

程度の感想しか持たないド素人である。

そのド素人が見て、あのエンブレムの盗作疑惑、

「ちーとやばいよな」

とは思っていた。
それでも、オリンピック委員会が盗用ではないというのだから、まあ、デザインの世界とはそのようなものかと思っただけで、忘却に任せていた。

間もなく、同じ佐野研二郎氏がサントリーのプレゼント用トートバッグ用にデザインしたものに盗作の疑いが指摘され、佐野氏がデザインの一部を取り下げた。そこまでは

「弱り目に祟り目、泣きっ面に蜂やなあ。デザインなんて、いくらかはパクリの要素も入らざるを得ないんだろう」

と、私はにこやかに受け流していた。

その私が、

「ん?」

と思ったのは、佐野氏の、バッグデザインに関する謝罪である。

「他人の作品をスタッフがトレースした」

これ、どこかで見た風景である。そう、政治家が多用する

「秘書が、秘書が」

だ。つい最近も、我が群馬県から出ている小渕優子が多用していたのをご記憶の方もいらっしゃるだろう。私は、この弁明をきっかけに関心を強めた。

この弁明は、2つの疑問を引き起こす。

この弁明が真実であったとしよう。佐野作品としてサントリーに納めたデザインが、実は部下のデザイナーが作ったものだった。となれば、名もなきデザイナー=部下の作品を、名のある佐野氏の作品としてサントリーに納め、高い料金をふんだくったことになる。これは間違いなく詐欺である。ばれたあとで撤回しても、犯罪は犯罪だ。検察庁が捜査に入り、サントリーが損害賠償を請求してもいいはずだ。
ふむ、デザイナーが一等地に事務所や自宅を持ち、人もうらやむ贅沢な暮らしを楽しむ背景には、このような詐欺行為があったのか。汗水垂らして真面目に働くのが馬鹿馬鹿しくなる話である。

だが、この弁明は、本当にホントなのか?
盗作疑惑を突きつけられて慌てふためいた佐野氏が、数多の政治家が使い倒した手法を思いだし、その応用を企てた。この場合、

「秘書が」

では通らない。秘書さんがデザインをするはずはないからである。となると、責任の押しつけ先は、事務所で安月給で働いている部下のデザイナーしかない。こいつらがやったと世間に言ったところで、俺に文句をいうヤツはいまい。もし文句をいうようなら、この世界から干してやる! 俺は世界の佐野だぞ~。俺を知らないデザイナーはモグリであるぞ!!

にしても、だ。佐野氏の奥様によると、佐野氏は「監修」だけはされたという。だから、佐野作品と名乗ってもいいというつもりなのだろうが、おっと、となると、盗作の最終責任は佐野氏にあることになることまでは気が回らなかったか。


という過程を経て、私は東京オリンピックエンブレムの原案なるものを見た。

「何じゃ、これは?!」

東京のTに、日の丸の赤い丸をくっつけただけ。こんなものが104点の中から選ばれた? 何かの間違いでは? 確かにこれなら、ベルギーのリエージュ劇場のロゴとは似ても似つかない。しかし、似つかない分だけ魅力がない。他の応募作品はもっとひどかったのか?

疑惑が生まれるのはここからだ。大会組織委員会はデザインの修正を佐野氏に依頼する。修正は2度に渡った。当初は、長い棒と2個の直角二等辺三角形で構成されていたデザインが、1回目の修正で、三角形の長辺が円弧になって3個になり、うち2個は長い棒の下に配置された。Tの一部だった右上の三角形は、赤い丸に取って代わられた。
これでもデザインは完成せず、最終的には左下の三角形がなくなり、今のものになった。つまり、リエージュ劇場のロゴと似通うものになった。

という流れを見る。
確かに、当初案はオリジナルだろう。だが、その分、完成度が低い。つまり、

「これでよく選ばれたな」

というつまらないデザインである。ここに、選考過程についての疑惑が生まれる。最初から佐野デザインが選ばれることに決まっていた出来レースだったんじゃないの? というわけだ。
そして、採用されたはずのデザインに、何故か修正が求められる。修正されるうちに、確かにスマートに変身した。そして、スマートになりすぎて、リエージュ劇場のロゴに赤い丸を付け加えただけ、ともいえるものになってしまった。

となると。だ。
佐野デザインに決まったあとの疑惑は、修正の過程にある。デザインの洗練度を上げる作業をする間に、ネットか何かで、ふと目についたものがあったのではないか? それを参考にして三角形の長辺を円弧にした。そして、三角形の数を増やし、赤い丸の位置を変えた。これなら、デザインの盗用と言われずに済む。ところが、またまた

「修正せよ」

と言われてしまった。
そうか、やっぱり左下の三角形は余分か。これを外せば、確かにすっきりするもんなあ。だって、そもそも、頭の中に残っているどこかのロゴも、三角形は2つで、だからすっきりしていたし……。

というようなことは、本当になかったのか。

私は元々、東京五輪には反対である。
これだけ栄耀栄華を極めた都市・東京で、どうして再びオリンピックを開かねばならぬのか? 東京一極集中がさらに進みかねない開催は、政府の地方創成事業と真っ向からぶつかる。東京だけ栄えて地方はすべて衰退してもいいのか? アクセルとブレーキを同時に踏まれる日本は何処に行くの?

だから、大会のエンブレムなどにはまったく関心がない。だが、世界中から、日本の不正が疑われるのは関心を持たざるを得ない。私は真面目で、日本人であることに誇りをもつ日本人である。この際、国立競技場も抜本的に見直したのと同じように、エンブレムも見直していただきたいと思う。

そうそう、その国立競技場。建設費用を1000億円減らすために、冷房設備を入れないのだそうだ。
おいおい、真夏の開催だぜ。開会式は7月24日だぜ。エアコンもないところに沢山の人が集まったら、それこそ熱中症患者が続出して、千葉や埼玉、神奈川、群馬からも救急車が駆けつけ、

「日本はいったい何を考えているのか」

と世界中から批判されるんじゃないのかな?
それでも1550億円。北京、ロンドンの3倍である。このわずかの期間に、そんなに物価、人件費が上がったかなあ?

東京五輪。
信じられないことのオンパレードが始まった。