2016
04.21

2016年4月21日 同日選挙

らかす日誌

我が家には、新聞が合計8紙届く。すべて会社が支払うので懐は痛まない。それはよいのだが、会社の金で届く以上、すべての新聞に目を通すのが仕事の一部になる。

8紙中1紙は桐生タイムスで、これは夕刊紙だから、朝は7紙届く。朝日、上毛、読売、東京、毎日、日経の順に手に取るのが、いつの頃からか朝の習慣となった。今朝も朝日新聞から眺め始めた。

1面は熊本の震災関連、三菱自動車の燃費不正問題(懲りない会社だね、まったく)、井山の囲碁7冠独占。で、2面、3面と開き、4面に

「同日選 慎重論に傾く」

の記事があった。
安倍政権は、夏の参議院選挙にあわせて衆議院も解散し、一緒に選挙をやっちゃうのではないか、という観測が広まっていた。

景気に勢いがない。こんな時に消費税を上げたら消費者の財布の紐が一気に固くなり、景気が急速に悪化する。税収も落ちる。だが、来年4月に消費税率を上げるのは安倍政権の約束である。だから、ここで衆議院も解散して、どっちみち与党が勝つしかない選挙だから

「消費税率引き上げを先延ばしすることへの国民の理解が得られた」

という形にするのではないか。

そんな観測に加えて、衆参同日選挙となれば、自民党の集票マシンがフル回転する。ここで一気に国会での多数与党を盤石にし、政権の延命を図るという計算があるのではないか、との見方が加わった。
だって、衆議院解散を先延ばしすれば、日を追って景気が落ち込んで、イヤイヤ消費税率引き上げ先延ばしに追い込まれる。そうすれば、安倍政権の責任を問う声が、国民の中からだけでなく、党内からも沸き起こっちゃうのではないか、という解説もあった。

しかし、雲行きは少しずつ変わってきたようだ。
北海道での補欠選挙で、与党の候補と野党の候補がいい勝負をしているらしい。もしこれに負けたら野党を勢いづかせる。なにせ、無理に無理を重ねて安保関連法を成立させたのである。夏に衆議院選挙までやれば、北海道で勢いづいた野党にやられかねない。まさか政権交代までは起きないだろうが、念願の憲法改正に一歩を踏み出せないばかりか、大敗した選挙の責任を問われて安倍首相の政権基盤が揺るぐ恐れがある……。 

であれば、衆議院解散はやめて、当面は今の議席を保持した方が得策ではないか? 
だけど、さて、これだけ同日選挙の風を吹かせてきたのである。いまさら掌を返すように 

「やらない」 

とはいいにくい。さて、どうしたものか。 と思案していたところ、熊本地震が起きた。 

「おお、これだ!」 

というあたりの流れではないのか。 

起きるべくして起きた流れだが、朝日はまだ 

「慎重論に傾く」 

と慎重である。 
上毛新聞は、多分共同通信の配信だろうが 

「同日選見送り強まる」 

と、朝日よりやや強い調子。 
読売新聞はさらに慎重で 

「同日選 与党から回避論」 

と見出しを立てた。よほど同日選をやってほしいのか、

「首相サイドは両にらみ」 

ともある。憲法改正に前向きな読売らしい。 
東京新聞は朝日、上毛と似たニュアンスで、毎日新聞は触れていない。取材しなかったのか? 

驚いたのは、最後に開いた日本経済新聞である。 

「首相、衆参同日選見送り」 

と断定した。記事を読み進むと、 

「政府高官は20日、連立を組む公明党幹部に『同日選はない』と伝えた」 

とある。なるほど、こんな話を聞き出せば、見出しで断定もしたくなるわなあ。この一節、朝日にも読売にもなかったもん。 
経済が専門の日経は最近、経済ニュースで後塵を拝することが多い。日経のエリート記者の取材力が落ちる一方で、多分エリートではない政治部記者の取材力が上がっているということか。 

どうやら同日選なし、消費税率引き上げは先延ばし、というのが当面のスケジュールのようだ。 


上でも触れた三菱自動車。思わず 

「懲りない会社だね、まったく」 

と書いたが、しかし、よくよく考えると、すべての自動車メーカーが懲りていない。ねえ、あなたも車をお持ちでしょうが、カタログに表示されている燃費ですんだことって、あります? 私、ない。 
リッター燃費、18.4㎞とあっても、実際に走ってみると、12、3㎞しか走らない。確かに、運転が下手であることもあるのだろうが、だったら、運転の上手いヤツって誰だ? それが当たり前のように通用しているのが日本である。 

車の雑誌によると、国産車の実用燃費は、良くてカタログの6、7割。欧州車は8割前後、とある。ということは、だ。普通のドライバーが、カタログに記された燃費で車を動かすことができないのだから、燃費偽装なんて、この業界では当たり前なのである。 
もともと偽装されたカタログ燃費である。それを、たかが数%偽装したって、どれほどの問題なんだ? 

という気がしないでもない。 

あの「空飛ぶタイヤ」だって、トラックメーカーはほとんど同じ部品を使っていたという指摘もあった。ということは、たまたま三菱のトラックが事故を起こしただけで、他のメーカーのトラックが事故を起こしていても何の不思議もなかった、ということである。ま、今回も三菱であったことが問題を複雑にしてはいるが。 

目先の問題に捕らわれすぎると、本当に見なければならない本当の問題が見えなくなる。 
私にとっては、三菱の燃費偽装より、全メーカーが談合でもしたかのように続けているカタログ燃費偽装の方が大問題に見えるのだ。 三菱自動車? どうでもいいんじゃない?

私と同じ視点を訴えるメディアは、私が目にした限り1つもない。情けない。