04.27
桝谷さんの原稿復刻作業が終了しました。
2月から連載しているから、思い立ったのは1月の後半か。
コツコツと続けてきた桝谷さんの原稿の復刻作業が目出度く終了した。すでに予約投稿をしたので、8月下旬まで順次「らかす」上に現れ、皆様の目にとまるはずである。
当初は手打ちで原稿を入力した。あまりの煩雑さにOCRの活用を考えて見たものの、見当たるところにOCRソフトがなく、しばらくの間は手打ちを続けたが、ふとした弾みに、キヤノンのプリンターに付属していたソフトにOCR機能があることに気がつき、使い始めた。
といっても、最初から順調に進んだわけではない。
まず、桝谷さんの雑誌原稿をスキャナで読み取る。イラストや写真が混じった画像がとれる。それにOCRをかけたのだが、何のことやら判別出来ぬ文字列が現れて断念。
「そうか、イラストや写真交じりではうまく行かないのか」
と思い直して、次は活字部分だけを切り抜き、OCR。これでうまく行くはずが、出て来たものは再び判別不能だった。
困惑して、
「これは3段組になっているためか?」(雑誌の原稿は横3段に組んである)
と、1段ずつ切り離してOCRをかけ、やっと期待通りの、といっても読み取りミスが目立つ日本語だが、作業の足がかり、というか簡略化に繋がる日本語を手にしたときはホッとした。
もっとも、後に3段すべてが入った画像に
「もう一度試してみよう」
とOCRをしたところ、スラスラと日本語が出て来てびっくり。最初に失敗したのは何故? と不思議だったが、1段ずつ切り抜くよりはるかに楽になり、いつの間にか疑問は忘れて作業を続けた。
とはいえ、イラスト、写真交じりのページがほとんどである。こいつらが混じるとうまく行かぬことが解っているので、そんなページは、やっぱり1段ずつ、あるいは1段と2段、という具合に別けねばならぬ。週末に1日つぶして作業をしても、こなせるのはせいぜい2、3か月分だった。
さらに、イラスト、写真がある。これもスキャンした画像から1枚ずつ切り抜き、Macに付属している「写真」というソフトに移してトリミングし、画像補正をほどこした。これも手間のかかる作業だった。
ここまで済むと、原稿の点検作業である。元の雑誌と見比べながら、OCRが読み間違ったところを手作業で修正する。そう、OCRとは、とんでもない間違いを引き起こしてくれるもので、まあ、コンピューターだから仕方ないか、と思いつつ、コンピューターにはこの程度のことしか出来ないかと想うと、開発が進む自動運転車は大丈夫だろうかと心配になる。
ということで、いよいよWordPressを使ってWeb に移植という運びになった。テキスト部部分をコピペし、適当なところにイラスト、写真を貼り付ける。もちろん、テキスト部分の再点検をしながらの作業である。Wordでは見付からなかった「1」が「l」になっているところを多数発見したのは、この再点検作業のおかげである。
とはいえ、人の能力、特に私の能力には限りがある。もともと粗雑なたちであるため、すべて正確に復刻出来たかとなると一抹の懸念は残る。このあたりは
「それでも桝谷さんの言いたかったことは解るでしょ?」
と読者の方々に向かっては開き直りつつ、桝谷さんには
「間違っていたらごめんなさい」
と申し上げることにして作業を急ぐ。
出来た。出来たら、まずプレビューである。
一見して、
「あ、こりゃいかん!」
と想ったはの図や表である。WordPressは、アップ出来る写真、図の最大容量が1Mということになっている。そこで、2M、3M、時には6Mもあるものを1Mまで減量してアップするのだが、これだと文字や細い線がぼやけてよく見えないのだ。写真は多少ぼけても仕方がないが、図や表が正確に読みとれないのは読者に不親切である。どのような回路で、どのような部品を使ったのかが解ってこその桝谷原稿であるはずだ
もちろん、50年近く前に桝谷さんが書かれた原稿を元にアンプの製作に取りかかる人はいないはずで、回路図や文字情報が読み取れなくても差し障りはないとも考えたが、出来ることならすべてを伝えたいと想った。
となればPDFであろう。WordPressでPDFは使えるか? ネットで検索すると、使えるとある。使えるのなら使わずばなるまい。
PDFにしたい画像を、再びキヤノン付属のソフトでPDFにした。これをWeb上の回路図や表の下に挿入した。画面では下線の付いた青い文字で表示される。これをクリックすると、鮮明な文字、図が現れて
「これなら元の図よりきれいなほどだ」
とひとり自己満足にふけった。随分手間のかかる自己満足であった。
というわけで昨日、すべての作業を終えたのであった。
桝谷さんは真空管式のプリアンプ、次いでメインアンプで名器と呼ばれるものを創り出し、やがてメインアンプはトランジスタの方が音が良いと、「君子」ぶりを発揮されてP-35Ⅲの元となるP-35を設計・製作された。そこまでは私の手元にあった原稿で辿ることが出来た。
ところが、プリアンプは相変わらず真空管のままである。トランジスタ式のプリメインアンプ、ICを使ったミニアンプの製作記事はあったが、トランジスタのプリアンプの製作記事はお預かりした原稿の中には入っていなかった(なお、原稿では自画自賛されているが、ご本人は「失敗作だった」といっておられたので、念の為)。
しかし、音質を追求した桝谷さんが最後に残したのは、Mark8D、P-35Ⅲの組合せである。桝谷さんが真空管のプリアンプを離れ、トランジスタのプリアンプに取り組むところを、私は読んでみたかったが、その原稿は私の手元になかった。私は大変に残念である。全国のクリスキットファンも、きっと同じ思いをお持ちのことだと思う。
桝谷さん、そんな原稿をどうして私に託してくれなかったかなあ……。
ということで、今日以降は、桝谷原稿が定期的にアップされるのと同時に、私が書き散「らかす」日誌も同時並行的にアップすることになる。同じ日に2本の原稿がアップされることもあると思う。お読みになる方には重荷かも知れないが、よろいくお願いしたい。
しばらく続いた、久々の桝谷さんとの会話に、とりあえず幕を下ろした卿の私である。