07.05
世の中、いい話が少なくなりました。私達は嫌な時代に向かっているのでしょうか?
今月号の「選択」を読んでいて、気分が滅入ってしまった。暗い。私には何をする力もないが、それでも
「何とかならないか」
と落ち込んでしまう暗い話が多すぎる。
「選択」は国際ニュースから始まる。これが、ほぼ中国問題一色である。
・西側同盟は中国に勝てるのか
中国に対する西側諸国の結束はまだ弱く、それを見越したかのように中国政府は国内で共産党に刃向かう勢力の弾圧を続ける。国連人権理事会では、香港とウイグル自治区に懸念を示す声明が読み上げられたが、署名国は40数カ国で、逆にベラルーシが提案した「この声明は内政干渉だ」という中国支持の声明には65カ国が署名した。相手国の弱みにつけ込んだ中国の金権外交が成果を上げている。
欧州経済は中国依存を深めており、中でもハンガリーは政治的にも中国に傾斜している。
金と軍事力で覇権を伸ばそうという中国の姿勢は一貫しており、中国を押さえ込めるかどうかはバイデン大統領の本気度にかかっている。
・南米電力市場で進む「中国支配」
南米の電力事業が次々と中国資本の傘下に入っている。最も進出が目立つのはチリ。ブラジルにも10数社が出ている。ボリビアには3つの中国が絡んだ水力発電所計画があり、アルゼンチン、ペルーには各2つ、コロンビアとボリビアに1つずつ。国のエネルギーの根幹を中国に握られた国々にどんな未来が待つのか。
さらに、ダムを作るについて環境評価のでたらめさ、ずさんな工事、地元住民を追い払うような姿勢が目立つ。反対運動の指導者が自宅で射殺されたのはホンジュラスである。
ブラジルでは電力利権を手に入れるための、政府高官への贈賄も明らかになっている。
・中国がアジア各国で「土地収奪」
近隣の東南アジア諸国で中国資本による土地収奪が進んでいる。
・様変わり「ユーラシア鉄道輸送」
大陸輸送の中核が、かつてのシベリア鉄道から、中国の「中央班列」に移った。プーチン政権は焦っているというが。
・中国が南シナ海で狙う新「人口島」
中国はフィリピン、ベトナム、マレーシアで囲まれた海一帯を戦略的トライアングルと位置づけ、その実効支配の要になるスカボロー礁の人口島造成開始のタイミングを測っている。
・「世界の工場」中国の凋落
Made in Chinaのタグが世界中で嫌われているため、生産工場を中国から外に出すメーカーの動きが目立ち始めた。サムスンは天津市、恵州市のスマホ工場を閉鎖、iPhoneの生産を請け負っているホンハイは、中国での生産を減らしつつある。
12本の原稿のうち、実に7本が中国問題である。見出しだけでは芸がないので、へたなダイジェストをつけてみた。記事の趣旨が十分お伝え出来ないかも知れないが、そこはお許し願いたい。
いかがだろう。私は夜布団の中で読みながら、ある瞬間、ページをめくるのが嫌になった。私達は、中国共産党のごり押しで生まれたきな臭さがますます強まるのににどう対処したらいいのだろう?
相手は隣国。人口は10倍以上、軍事費ときたら……。かわぐちかいじ氏の漫画では、日本の自衛隊には優れた戦闘能力があり、度重なる中国の挑発を、ほとんど紙一重のところでかわし続けて事なきを得るのだが、現実はどうなるのか?
あえて中国関連の8本目を上げれば、巻頭のインタビューである。答えるのはマイルズ・ユー(余茂春)元米国務長官主席顧問。
このユー氏によると、
「毛沢東も鄧小平も『平和共存』を唱えた。だが、実際に平和的だったことは一度もない。隣国インドやベトナムと戦争し、領土をめぐって韓国やミャンマーとも争った。/毛・鄧と習近平の違いは、過去の二人は、中国の暴力について現実的な見通しを持っていたこと。習近平は、中国には野心を実現するだけの能力があることを知っている」
全くもって恐ろしい時代である。インタビュー氏も同じ思いなのだろう。こんな質問を発した。
「中国に弱みはありますか?」
ユー氏の答はこうである。
「中国国内には、非常に大きな緊張がある。それは国民の不満だ。/中国政府は自国民との間の大きな緊張関係に置かれている。中国当局は心の底から自国民のことを恐れている。それは、国防費よりも、はるかに多額の資金を、人民の監視、国内治安に使っていることからも明らかだ」
そうだろうなあ。中国は共産党独裁の国である。独裁者が恐れるのは民衆。それが古今東西変わらぬ真理だろう。とすると我々は、中国の民衆が立ち上がるのを待つほかないのか?
ユー氏の話にこんな一節があった。
「六月に復旦大学(上海)で、解雇された元教員が党委書記の准教授を殺害する事件が起きると、『よくやった』という賛辞の嵐が起きた。党幹部への憎しみが表面化した例だ。/一九九〇年の時点で、ソ連崩壊は予測出来なかっただろう。だが民衆は『こんな体制が続くわけがない』と確信していた。同じことが今の中国にも言える。中国内部からいつ、変化の波が襲ってきてもおかしくはない」
「選択」を購読していると、
「あれ、中国経済はまだ崩壊しないのか?」
という思いに襲われることがある。中国経済はここがネックだ、限界が近づいている、崩壊の足音が聞こえてくる、みたいな記事を何度読まされたか。7月号の「『世界の工場』中国の凋落」も、ひょっとしたらそんな記事の1本かも知れない。だから、いくら元米国務長官主席顧問殿がおっしゃっても、
「本当にそうなりますかいな?」
という疑念がないわけではない。
しかし、香港といい、ウイグル自治区といい、今回紹介した記事に採り上げられた事例といい、今の中国を見るにつけて、
「本当にそうなって欲しい」
という思いが募る。
歴史の歯車は、いつカチリと音をたてて進んでくれるのだろう?
やっとの思いで国際ニュースを読み終えると、次は政治ネタである。今月号によると、ガースーが率いる官邸は秩序が崩壊している。コロナに襲われて敵前逃亡しながら何故か隠然たる力を持つらしい安倍前首相はガースー降ろしのタイミングを測っているらしいが、さて、じゃあ誰を次の首相にするのか? 人材不足は永田町の悩みの種、いや、国民の悩みの種である。
目を経済に転ずると……、いや、もう止そう。ますます気分が落ち込むだけだ。あえてもう一本採り上げるとすれば、
・五輪選手村は「集団感染」の修羅場に
これまでの感染リズムを見ると、オリンピック開催時期が第5波と重なる危険が極めて大きい。だから、ワクチン接種と検査態勢の強化が是非とも必要なのだが、これが心許ない。まず、ワクチン接種は五輪参加の必須条件とはされていない。
「大会直前にワクチンを接種して体調を損ねたくない」
という選手たちが少なくないらしい。金メダル候補の日本選手は故ワクチン接種を断ったというし、その周囲の3割はワクチンを打っていないはずだと語っている。
こんな有様で、本当にクラスターの発生を防ぐことが出来るのか?
さて、間近に迫った東京オリンピックは、実に心許ないコロナ対策で幕を開けようとしている。一時はそのポピュリストぶりに期待した小池のおばさんも動こうとしない。
やっぱり、やっちゃうのかね、オリンピック。世界中に日本の恥をさらすことになりかねないと思うのだが……。