2022
12.28

私の車には自動修復機能が装備されているのか?

らかす日誌

愛車、BMW 320dでおかしなことが起きている。
事の発端は16日。この日、タイヤをスタッドレスに取り換えた。作業をお願いしたのはタイヤを預かってくれている町の整備屋さんである。

付け替えてしばらく走っていたら、ディスプレイにウォーニングが出た。タイヤの空気圧を検知できないという。

「というウォーニングが出たんだけど、どうしたらいい?」

と電話で整備屋さんに問い合わせた。

「あ、済みません。初期化するのを忘れてました」

タイヤを取り換えたら、タイヤが替わったぞと車に教えてやらねばならないらしい。操作法を聞いて、私が自力で初期化した。ウォーニングは直ちに消えて車は正常に戻った。

いや、戻ったと思っていた。問題は、その正常化が3、4日しか続かなかったことである。
その日、車を始動した。すると、消えたはずのウォーニングが姿を現した。おかしい。お前は一度は消えた身ではないか。それなのに、なぜ再び姿を現す?

ウォーニングに気がついた時、私は目的地に向かって走行を始めていた。ウォーニングはタイヤの空気圧が計れない、ABS(Anti-lock Breake System)が作動しない、という2つである。まあ、取り換えたタイヤの空気圧は正常であるはずだ。ABSなんて使うことはまずないから、これも心配はいらない。だからウォーニングは無視してもいいはずだ。気にはなるものの、私はそう判断して走り続けた。
すると、走り始めて2、3分たった頃、ウォーニングが突然消えたのである。

「スタッドレスに取り換えたもらった直後から、という不思議なことが、車を動かすたびに起きるんだけど。私の車、どうなってる?」

数日して、あの整備屋さんに車を持ち込んだ。

「いまは、ここまで走ってきたからウォーニングは消えてるし、いまエンジンをかけても出ないのよ」

恐らく、整備屋さんとしては困った相談ではなかったか。不具合が目で確かめられれば判断のしようもある。だが、暖まった車では再現しないとしたら、私の話だけで故障を見つけなければならない。

しかし、車も変わった。いまやコンピューターで制御されるところが増え、車に異常があれば記録が残るのである。整備屋さんは専門の端末を取り出し、我が愛車いつないだ。

「ああ、やっぱりそうだ」

彼の話によると、タイヤの回転数を見張るセンサーが異常を起こしているという記録が残っているという。しばらく端末を操作していた彼は、

「はい、異常ログは全部消しましたので、これで大丈夫だと思います」

といった。しかし、その場で車が正常になったかどうかの判断はできない。何しろ、車が冷えていなければ出ないウォーニングなのである。ここまで乗り付けた我が愛車は、まだホットな状態にある。

「ありがとう。明日エンジンをかけたときに出なきゃいいんだけどね」

というしかない。私はそのまま帰宅した。

確かに、数日はウォーニングを見ることはなかった。

「あ、直ったんだ!」

と私はホッとした。

ところが、なのだ。数日すると、再びウォーニングが出始めた。しかも、暖まれば消えていたウォーニングが出っぱなしである。どれほど走っても消えてくれない。

「ということになったんだけど」

と再び整備屋さんを訪れた。

彼の話によると、センサーが検出しているのはそれぞれのタイヤの回転数である。空気圧が減ったり、パンクしたりすればタイヤの直径が微妙に変わり、回転数がおかしくなる。それを読み取って

「空気圧が異常だよ」

「パンクしてまっせ」

と教えてくれるのだそうだ。ABSこの機能を使っているため、ABSのウォーニングランプもセットで点灯するとこになる。

「センサーだよな」

彼は右後ろのタイヤを取りはずし、センサーをむき出しにすると、配線の接合部に接点復活剤を吹き付けた。

「これで乗ってみて下さい」

乗った。やはりウォーニングはつきっぱなしである。

やむなく、BMWのディーラーに電話を入れた。

「このウォーニング、何が原因なの?」

「あ、それはセンサーの異常ですね。センサーを取り換えなくちゃ。1個2万円ぐらいです。でも、1個がダメになったということは、他の3個のセンサーも寿命に近づいていると考えた方がいいですよ。一度にやってしまえば、工賃もその分安いですし」

となると、修理代で10万円以上かかる。
私の愛車は5年落ちで買った中古車である。それから間もなく5年になるから、10歳になる。老朽車といってもいい。そのうち買い換え時期が来るのは目に見えている。それに10万円以上の修理費をかけるか?

「ねえ、このウォーニングランプがついたままで走って危険はないの?」

修理費を惜しむ私はそう聞いてみた。

「あ、大丈夫です。空気圧を定期的に点検しておけば、まあ、急ブレーでもかけなければABSは使いませんし、全く問題ないですよ」

うん、しばらく我慢してみよう。どうしても気になったら、銀行強盗でもして10万円用意するか? それとも宝くじで当てるか?

そう思って今朝も車を動かした。年末、医者の休暇中に薬が切れては事なので、片道10㎞少々の整形外科医に行ったのである。
行きはウォーニングランプと付き合い続けた。帰りも、医者を出るときはウォーニングランプが点灯した。
ところが、である。戻る途中、セブンイレブンで現金を引き出して車に戻り、指導ボタンを押すと、何と、ウォーニングランプがつかないではないか!

「いや、あれほどしつこく点灯し続けたランプである。走っている途中でつくんじゃないか?」

愛車を疑いつつ走った。だが、ディスプレーは正常なままだ。

「一度止めて、再発進したらつくのではないか?」

疑い深い私は、薬局で処方薬を受け取り、車に戻ったときに考えた。

「えっ、つかないよ!」

今度はつくのではないか? と恐々スタートボタンを押したのは、電気代、水道代、ガス代をコンビニで支払って出て来たときである。だが、

「やっぱりつかない!」

不思議である。車とは機械でしかない。機械とは壊れたら壊れっぱなしになるものである。タイヤ回転数センサーのどこかが壊れたはずの我が愛車は、それにもかかわらず自力で正常に戻った。この車、近未来のロボットのように、ちょっとした故障なら自分で直してしまう機能を備えているのだろうか?

さて、明日はどうなるだろう? やっぱり点灯して私をガッカリさせるのか。健気にも、私に元気な姿を見せてくれるのか。

実に気を揉ませる、頼りになるようなならないような不思議な車と私は付き合い続けている。