02.14
私と朝日新聞 3度目の東京経済部の27 経団連会長に必要なお金
歴代の経団連会長を並べてみよう。
初代:石川 一郎 (日産化学工業社長)
第2代:石坂 泰三 (東京芝浦電気社長)
第3代:植村 甲午郎 (経団連事務局)
第4代:土光 敏夫 (東京芝浦電気会長)
第5代:稲山 嘉寛 (新日本製鐵会長)
第6代:斎藤 英四郎 (新日本製鐵会長)
第7代:平岩 外四 (東京電力会長)
第8代:豊田 章一郎 (トヨタ自動車会長)
第9代:今井 敬 (新日本製鐵会長)
ここからは、日本経営者団体連盟と合併して「日本経済団体連合会」になった。
第10代:奥田 碩 (トヨタ自動車会長)
第11代:御手洗 冨士夫 (キヤノン会長)
第12代:米倉 弘昌 (住友化学会長)
第13代:榊原 定征 (東レ会長)
第14代:中西 宏明 (日立製作所会長)
第15代:十倉 雅和 (住友化学会長)
そうそうたるメンバーである。といいたいとことだが、このところ経団連会長も御難続きのようで、現会長の十倉氏については、会長を務める住友化学の経営難が雑誌で報じられているし、第14代の中西氏は会長在職中に悪性リンパ腫が見つかり、病院のベッドからオンラインで経団連の会議に出席していた。
いや、書きたいのはそんなことではない。経団連会長を務めるためのコストである。
経団連会長になっても、経団連から報酬が出るわけではない。全くの自弁である。では、会長の椅子に座り続けるためにどれほどの金を持ち出さなければならないのか。ある時、トヨタ自動車の広報マンに聞いたことがある。
「そうですね、経団連会長としての様々な付き合いもあるし、海外ミッションにも出なければならない。国内でもあちこちに招かれて講演したりしますし、出身会社から経団連会長を補佐する社員も連れてこなければならない。ざっと15億円から20億円というところでしょうか」
15億円から20億円!
「それって、1期2年にかかるコストなの?」
すぐに返事が戻ってきた。
「いいえ、毎年ですよ。だから、大企業のトップしか経団連会長にはなれないんです」
後に書くが、私はデジタルキャスト・インターナショナル(デジキャス)という会社に出向して、キヤノン、日立、富士通からの出向者と一緒に仕事をしたことがある。キヤノンの御手洗氏が経団連会長になったのは、私がデジキャスから朝日新聞に戻って間もなくの2006年のことだった。
キヤノンからの出向者とは何故か気が合い、朝日に戻ってからも付き合いが続いた。時折酒を飲むのである。そんな席で、キヤノンからの出向組の親分であったHa氏がいった。
「大変だよ。うちの会長が経団連会長になっちゃったよ。大丈夫かな」
私はもと財界担当記者である。だから知り得たデータを開示した。
「知ってるかい? 経団連会長になると、1年に15億円から20億円かかるんだって。これからキヤノンがその金を負担するんだよね。キヤノンは金持会社だなあ」
すぐに返答が戻ってきた。
「冗談じゃないですよ。キヤノンはそんな金持会社じゃない。そんな金、どうやってひねくり出すんだろなあ……」
経団連会長とは、経済人としての最高の名誉職なのだろう。しかし、名誉とはこんなに金がかかるものなのか。ま、自分のポケットから出るのではなく、会社が負担するからご本人は意識されないのかもしれないが。
15億円から20億円/年。強く記憶にこびりついているので、ここに記録しておく。