07.14
2011年7月14日 読んだ
週刊新潮を読んだ。笑ってしまった。
週刊新潮に盗撮された7月8日、知事公舎のある前橋市の気温は33℃まで上がった。夕刻、知事の運転する車で知事公舎にやってきた件の女は、フード付きのダウンジャケットを着込んで車から降りてきた。
気温33℃の日にフード付きダウンジャケット?よほどの寒がりに違いない。
そして、件の女が知事公舎を出たのは翌朝10時半。その間、中で何が行われていたかは記されてない。週刊新潮は盗聴、盗撮の器具を持っていないのに違いない。
盗聴、盗撮しなくても、中で起きたことは、ま、想像の範囲内である。
と書きながら、ばかばかしい気分がぬぐえない。いいじゃない、2人とも大人の男であり女のだもの。中で何をしてたって自由でしょ? 徹夜で花札をしようと、酒を飲もうと、お医者さんごっこをしようと、週刊新潮が読者に
「こう想像して欲しい」
と意図したことしようと、他者に迷惑をかけない限り、彼らには自由である。勝手に老いらくの○○を楽しめばよろしい。
こんなことに目くじらを立てるのは、知事の女房殿程度のものである。我々のような第3者は
「あ、そうだったの」
というだけのことだ。
「だったら、なぜ2日続けて同じことを書くんだよ」
とおっしゃるあなた。それは正当なクレームであります。だが、もう少しお付き合い願いたい。私が書きたいのは、メディアの体たらくであるのだから。
今朝の新聞各紙は、昨日知事が行った釈明会見を報じている(東京新聞だけはなかった)。最も詳しく報じた毎日新聞を元に、メディアの体たらくを書く。
毎日新聞は、この事件によほど力こぶを入れたらしい。ご丁寧に、記者会見の一問一答まで掲載した。それを読んで唖然とした。
知事はこう釈明している。
「彼女は月に1度、事業報告をしてくれていました。ただ、ご存じの通り、大変厳しい選挙(3日投開票の知事選)があり、私は県民の皆様の深いご理解とご支援で選挙に勝たせていただいた。その高揚感で彼女と打ち合わせをしながら、深く反省しておりますが、うかつにも酒を飲んでしまいました。いつの間にか相当酔って、寝てしまったところでありました。車の運転ができなくなって、彼女にはおわびしましたが、結果的には宿泊させたことは事実でございます」
さて、この弁明を読まれて納得されたであろうか。私には納得できないことがいくつかある。
事業報告を知事公舎で? しかも夕刻から? それって極めて変じゃない?
大変厳しい選挙? 嘘はよしましょうぜ。あんたが負けるって見方は全くなかったじゃない。そして、得票率は67.54%。こんなに安定した選挙はないんじゃない?
車の運転ができなくなって、って、あなた、まあ、件の女を知事公舎に連れてきたのはあなたの運転する車だから、送るのもあなたの車ということなのかも知れないが、それでも酒を飲んだって? 件の女を泊める気がなかったのなら、あなた、飲酒運転で送っていこうって考えたの? あんた、現職の知事だぜ。現職の知事が飲酒運転をする気だったの?
まあ、こんなところである。私がその場にいた記者であれば、当然聞く。聞いて、あやふやな答えであったら、さらに突っ込む。
それが取材というものだろう。
ところが、この場にいた記者が何人であるかは不明だが、そう考えた記者は一人もいなかったらしい。
記事によると、この知事の弁明の後に続く質問は
「最初から泊まる予定だったのか?」
あのねえ、隠したいことがある人から本当のことを聞こうと思えば、一つ一つ事実を積み上げて追い詰めなければならないの。せっかく馬脚を現しかけているのだから、そこを追及しなければならないの。
なのに、こんな甘い質問をしたら、取り逃がすに決まっているはないか。
現に、知事は逃げおおせた。
「まるっきり(予定は)ないです。あの日もタクシーで帰る予定だった」
おいおい、この弁明もおかしいんだよ。知事が酒に酔って寝込んだとしても、だったら、件の女が自分でタクシーを呼んで帰ればいいじゃないか。男と女の関係になっていない男と同じ屋根の下で翌朝10時半までいるのは気持ち悪くないか?
という追及も記者さんたちはなさっていないのである。
「だって、当選したばかりの知事だろ。これから4年間、仕事で何かとお世話になる。いま敵に回すのはまずい」
と計算したか。だったら理解できないでもない。
だけど、同じ社でも知事の味方に回る記者と敵に回る記者をつくり、敵に回る役回りの記者に厳しい質問をさせる。味方に回る役回りの記者は
「知事、ゴメン。あいつ、社内でも空気が読めないって評判の悪い記者で、記者会見のあと、私から厳しく注しておいたんで、勘弁してよ」
と知事にすり寄る。そうすれば、社としての利益も守れるし、読者の覗き見趣味も満足させられる。
という知恵がわかなかったのは悲しいね。
あるいは、同じ男として惻隠の情が働いたか。
「ねえ、俺だってそうなんだから、知事になったからって、あの道だけは辞められませんよね」
って。
でも、女性記者はどうしたのだろう?
「私だって秘密の恋をすることがないとはいえない。知事みたいに、堂々と釈明会見を開いて女性を守る男って素敵!」
とでも考えたか。
それでもいい。
一番いけないのは、一生懸命考えたのだが、この程度の質問しか思いつかなかったし、知事の釈明に2の矢、3の矢を放つ力量もなかった、というケースである。
もしそうなら、この記者会見の場にいた記者は全員辞表を書いていただきたい。
記者の仕事とは、その場にいることだけですむものではない。その場にいて、的確な質問を発し、必要な情報を得ることである。
そういえば昨夕、菅直人の会見を途中までNHKが中継していたが、見た限りではろくな質問は出なかった。
中央、地方を問わず、記者とはこの程度のものに成り下がったか。
「昔からそうだった」
とは思いたくないが、案外そうなのかも?