2020
02.16

芥川龍之介がいまの「芥川賞」受賞作を読んだらどんなことを言うのだろう?

らかす日誌

最新の芥川賞受賞作を読んだ。「背高泡立草」。今月号の文藝春秋に収録されている。

読んで、ふと頭に浮かんだのが今日のタイトルである。芥川さん、コメントを!

3人兄妹が家族を連れて、九州、おそらく長崎県にある離れ島にある実家の雑草狩りに行ったという話である。土地柄、私には懐かしい九州訛りが会話に頻出する。我がふるさと、大牟田では使わない言い回しもあり

「へーっ、こんな風に言うところもあるんだ」

と心引かれるシーンがなかったわけではない。

が、だ。これ、いったい何を表現しようというの? いやその前に、総てがそうだとまでは言わないが、拙いとしか思えない文章があちこちに登場する。ために、

「もっと、こんな言い方をしたら文章がすっきりするのに」

と突っ込みたくなってしまった。
これが、最高の小説に与えられるという「芥川賞」。ふむ。

芥川龍之介は、研ぎ澄ませたカミソリのような切れ味で人の、世の中の断面を切り取ってみせた。中学か高校の国語の教科書で読んだ「鼻」は、人間の愚かさ、その愚かさが醸し出す人間の愛らしさがみごとな小説である。好き嫌いは別として、この人を文豪と呼ぶことに躊躇はない。
それにしても、「背高泡立草」ねぇ……。他の選択肢はなかった?

総ての芥川賞受賞作に目を通しているわけではないが、近年の受賞作で記憶に残るのは、金原ひとみの「蛇にピアス」だ。耳に、鼻にピアスの穴を空け、ついには舌に空けた穴をだんだん大きくし、蛇の舌と同じ、先端が2つに別れた舌にする。傷みを通じなければ生きている実感が得られなくなった世代の小説、などとの解説もあったような気がするが、そんなことより、読んでいてヒリヒリするような傷みに近い感覚を覚えた初めての小説だった。

「すごい文章力を持った若い女性が登場した」

と感嘆した。
あれは2004年のこと。数えてみればすでに16年も昔のことになる。それ以来、時々「芥川賞」受賞作に接してきたが、どれを読んでも「?」である。
かつては文学の頂点にあった「純文学」は死滅したのだろうか?

いま、ポール・マッカートニーの「ワイルド・ライフ スペシャル・エディション」を聞いている。聞きながら

「ひどい商売がはびこり始めた」

と愕然としている。
2枚組のこのCDは、1枚目が普通の「ワイルド・ライフ」。これはLPしかない時代から我が家のコレクションの1枚である。問題は「ボーナス・オーディオ」と名付けられた2枚目である。
いわゆるリハーサル中の音源を集めている。まだ練習中の音源であり、商品にする予定がないものだから出来はひどい。いや、出来がひどいから商品にはしなかったのだ。
それが、「海賊盤」として流通するのなら、文句をつけるいわれはない。私のようなビートルズ・フリークが、中身の出来の善し悪しは別にして、

「とにかく持っていたい」

から買うのが海賊盤である。

しかし、これは堂々とした「正規盤」である。Amazonでの価格は3326円。高い。

「ワイルド・ライフ」は1971年、ポールが主宰するウイングスのアルバムとして世に出た。いわば古典に近い。ポールのファンなら、当然持っているアルバムである。

そこでレコード会社は考えた。

「古いアルバムを出し続けても。新しく買う客はほとんどいない。古いアルバムでもうひと儲けできる手はないか?」

こうして、商品性がほとんどない音源を集めた「ボーナス・オーディオ」ができ、流通し始めた。買う人のほとんどは、すでに「ワイルド・ライフ」なら持っているポールのファンである。レコード会社はこの人たちに、「ボーナス・オーディオ」を3326円で売りつけているに等しい。
なんと姑息な商売をするものか。

そういえば、ビートルズ関連に同じような企画の商品が溢れ始めている。私の手元にあるだけでも

・Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band=4枚組。オリジナルは1枚。

・The Beatles=いわゆるホワイトアルバム、6枚組。オリジナルは2枚組。

といった具合だ。このほかにも

・Abbey Road=CD3枚とブルーレイディスク。オリジナルは1枚。

がある。私が持っているSgt. Pepper’s、The Beatlesはオリジナルの音源に、スタジオデモの音源を加えたものだ。つまり、これまでは海賊盤としてしか出回っていなかった音源を、堂々と正規盤として売り始めた。しかも、Abbey Roadに至っては、1万4080円という、法外な値段がついている。
ファンの心理につけ込んだ悪徳商法と言うほかない。

いくらCDが売れなくなったからと言って、目先の利益ばかり追うような商売をしていてはいずれ見放されると思うのだが、いかが。ジョン・レノンが生きていたら、こんな商法を許したか? 小野洋子が痴呆になっていなければ、こんな商法を許したか?

ということは、ポール・マッカートニー、リンゴ・スターは許しているということ? それとも、曲の版権を買い取った(一時はマイケル・ジャクソンだったと思うが、いまは誰?)が許したということ?

ちなみに、私が持っている4枚組、6枚組の音源は、買った人からお貸しいただいてflacファイルにしたものである。ワイルド・ライフはTSUTAYAで借りた。年金生活者の買える商品ではない。だからAbbey Roadはいまだに手元にない。

さて、コロナウイルス。国内感染が広がりをみせている。感染者が出た地域の方々は守りを固めていただきたい。あなたのためでもあり、みんなのためでもある。

14日には伸びが鈍って

「そろそろ終焉?」

と期待したが、翌日から再び従来ペースに戻ったようだ。騒ぎはいつまで続くのか。