02.23
A HARD DAY’S NIGHTの出だしのコードを解明した男がいたことを知った。
読書とは面白いものだ。いや、趣味の1つに「読書」を挙げる私が、読書の一般論を語ろうというのではない。全く別分野の本を読んでいたら、突然
「え、そうなの?」
という思いがけない事実にぶつかることがあるのが面白いのである。今回も、そんな体験をした。
「アルゴリズムが世界を支配する」(クリストファー・スタイナー著、角川選書)
を読んでいるところである。
アルゴリズムとは私にとって大変難しいコンセプトで、この本のほぼ4分の3を読み終えた今でも、
「なんのこっちゃ?」
という思いが拭えない。1つの論理体系のような気もするし、Aという問を入力すると、Bという答を打ち出してくれるマジック・ボックスのような気もする。ウィキペディアによると
「これらによって『計算可能なもの』を計算する手続き」
のことなのだというが、分かったようでいて、でもわかりにくい。
まあ、本日の主題ではないのでこれ以上の追求はやめよう。何となく、
「そんな風なもの」
とお互いに了解できたという前提で話を進めよう。
何でも、、株取引や商品取引にアルゴリズムが見いだされ、コンピューターと高速回線(1000分の4秒の時間を稼ぐため、ニューヨークとシカゴをほぼ直線の光回線で繋いだ会社があるそうだ。たったこれだけの時間差でも取引を優位にできるそうで、べらぼうな使用料にもかかわらずユーザーは多く、この会社は大きな利益を出しているらしい)など、アルゴリズムは様々な問題を解きほぐし、時代を先に進める原動力になっているのだそうだ。それが本のタイトルの意味でもある。
まあ、一般的にいえば、固い本である。
「えっ!」
と驚いたのは167ページに
「ビートルズの謎を解く」
という小見出しを見たときだった。
こんな固い本にビートルズ? アルゴリズムとビートルズ。いったい何の関係が?
著者によると、ビートルズには様々謎があるが、その1つが「A Hard Day’s Night」のオープニングコードなのだそうだ。あのジャーン、と1秒ほど鳴り響いて、
It’s been a hard day’s night
とJohn Lennonの歌が始まるあのジャーンの部分である。あの部分のコードが謎だったというのである。
えっ、謎? だって、コードブックを買ってくれば、ちゃんとコードが書いてあるぞ。例えば、私の手元にある「ビートルズ・ベスト曲集」(シンコー・ミュージック)では、Dsus4、というコードが書いてある。それが、謎?
ところが、著者はこう断言する。
「市販の楽譜も間違っている」
しかも、George Harrisonが2001年、Yahoo!チャットに、こう書き込んでいるというのだ。
「FにGを重ねた(12弦ギターで)ものだ。でも、正確なところは、ベースの音についてポールに聞いてみないと分からないね」
ふむ、弾いている本人がそう言っているのだから、Dsus4は間違いなのだろう。しかも、正確なところはGeorgeも知らない!?
この謎に挑んだのは、ジェイソン・ブラウンという数学教授である。彼はこのコードの謎を解くため、フーリエ級数を利用したアルゴリズムを構築した。
アルゴリズムの概念すら正確に表現できない私に、フーリエ級数とは何か、などという野暮な質問はしないでいただきたい。もし聞かれたら
「間違った人物に向けて質問がされております」
とお答えするしかない。
とにかく、ブラウンさんは、あのジャーンという音をコンピューターに取り込んだ。これをフーリエ変換に乗せ、コードをそれぞれの周波数に逆アセンブルした。そうしたら2万9375もの異なる周波数が出てきた。
このあたり、全く理解できないのだが、何となく分かったような気になるところが不思議である。
そのあとブラウンさんはノイズだと思われる成分を取り除き、最終的に48の周波数を得た。これが、The Beatlesの面々が作りだしたジャーンの成分である。
こうした分析を進めたブラウンさんは、とうとう目的を達する。
・Georgeは12弦ギターでA2、A3、D3、D4、G3、G4、C4、C4の音を出している。
・Johnが6弦のギターでC5の大きな音を出している。
・プロデューサーのGeorge MartinがピアノでD3、F3、D5、G5、E6の音を重ねている。
・Paulは全く違う音を出している。
アルゴリズムとはすごいものである。こんなことまで解明してしまうのか。面白い!
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そうであってほしいと願いつつ。
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