07.09
安倍氏射殺。大変なことだけど、報道には何となく違和感を感じるんだよなあ。
昨日、安倍元首相が射殺された。テレビも新聞も、この話題で持ちきりである。
元首相が街頭演説の最中に射殺される。日本も要人警護に力を入れなければならない時代になったのかと思うと、暗澹たる思いがする。こんな話、国が分裂しているうえに銃所持が認められているアメリカや、民度がはるかに劣る国、独裁者が仕切る国でしか起きないことだと思っていたからなあ。日本にも暗い時代が再来するのか？
そう考えれば、これでもかといわんばかりに大量のニュースをメディアが流し続けるのも頷ける。
だが、である。我が家には朝日新聞と地元紙の桐生タイムスしかとっていないが、今朝の朝日新聞に何となく違和感を持った。
1面に社説があった。これほどの大事件である。それはよい。違和感はその書き出しである。
「銃弾が打ち砕いたのは民主主義の根幹である」
ん？ そうかぁ？
と、何となくんぼどに引っかかるものを感じたのである。政治家を銃撃すると、それはすべて民主主義の根幹を撃つことになるのか？
狙撃犯に政治的な狙いがあったのなら、私も賛同するだろう。力を用いることなく、全てを理性的な話合いでまとめていこうというのが、出来ているかどうかは別として、民主主義といわれる政治制度の鉄則である。自らが信じる施策、政策の実現を図るために安倍氏が邪魔で、だから彼を政治の舞台から取り除こうという銃弾なら、確かに民主主義の根幹に向けて発射されたと言って良い。
しかし、これまでの報道では、狙撃犯には政治的な背景はない。母親がある宗教にどっぷりはまり、家族の暮らしを顧みることなく資産をその宗教団体に寄付してしまった。その恨みであるという。宗教団体の幹部を狙う手もあったがなかなかその機会がなく、この宗教団体と親しく、影響力もあるとみられる安倍氏を狙ったのだと報じられている。
その情報が正確だとすれば、今回の狙撃は私怨によるものである。安倍氏には全くお気の毒だった、というしかないが、
｢この野郎！ うちの暮らしをガタガタにしやがって。お前もつるんでお袋の金を盗みやがったな！」
といいながら銃弾は飛んでいった。向かう先は民主主義の根幹だったのか？
少し話を崩せば、ある国会議員が他人の妻といい仲になったとする。最近、女子高生にお金を渡しておデートを楽しまれた方もいらっしゃったから、そういう国会議員はいそうである。
ある日、2人の密会が相手の旦那に知れた。逆上した旦那は知り合いのヤクザから拳銃を買い、この国会議員が街頭演説しているところに駆けつけて発砲した。
さてこの銃から飛び出した弾は、民主主義の根幹に向かって飛んでいくのだろうか？
私の感覚では、どうも違う。
いま私が知りたいのは、狙撃犯の母親から資産を巻き上げたという宗教団体の名前である。いかなる手口で、どれほどの資産を巻き上げたのか。その結果、狙撃犯の家族の暮らしはどう変わったのか。そして、安倍氏とこの教団の関係は？ 集票のためこの宗教団体に便宜を図る程度の仲だったのか、宗教団体が信者から巻き上げた資産の一部が自分のポケットに入る深い仲だったのか。それとも、顔を合わせれば挨拶を交わす程度の薄い仲だったのか。全く関係がなく、狙撃犯が安倍氏と宗教団体の関係を完全に誤解していたことだってありうる。
やはり私は、狙撃犯の銃を飛び出した弾痕は民主主義の根幹に向かったのではなく、怨敵に向かったのだとしか思えないのである。
ことを大げさに捕らえた報道の方がアピール度は高い。だが、目立つことを競うような大げさな論を振り回していると、いずれツケが回ってくる。
例え私怨による犯行だとしても、日本憲政史上、最も長期にわたって総理大臣を務めてきた人が殺されたのだ。それだけも大事件である。銃の所持が規制されている日本でも、銃を用いたテロが起きたことは、時代の暗転をうかがわせる大事件である。大事件を報じるときは、筆が滑らぬように最大限の注意をしなければならない。大事件とは、確かである事実を報じるだけでもたくさんの人々の注意を惹くものなのだ。
それにしても、これで｢桜を見る会」事件、｢モリカケ問題」はどうなるのだろう？ 結局、真相は安倍氏が墓場まで持って行った、ということになってしまうのか？
参議院選挙への影響は？
これまで、安倍氏の影響力から出来るだけ逃れようとしてきたかに見える岸田政権は、これからどうなる？
知りたいことはまだまだある。そういえば、安倍氏の盟友であったはずのプーチンは何か声明を出したのかな？
事件の全容が一日も早く解明されることを望む。