07.16
2009年7月16日 酷暑
いま、午後10時少し前である。桐生では先刻から雨が降り始めた。時折雷鳴も聞こえる。遅がけの夕立のようだ。いい雨である。
とにかくこのところ、桐生は雨でも降ってもらわなければいかんともしがたいほどの酷暑に包まれている。昨日の最高気温は37℃を超えた。これは何事か、と叫び出したくなる暑さである。
実は昨日、私は暑さにやられた。
午前中、ちょいと出かけた。昼前に事務所でもある自宅に戻って昼食をとった。そこまではよかった。が、そのあとがよくない。
全身がだるくて、体を動かすのがおっくうなのである。暑さにもめげぬ我が理性は、
「それはならぬ!」
と連呼する。が、どれほど連呼されようと、動かないものは動かない。事務所のソファに横になり、頭上のエアコンが送り出す冷気で火照り続ける体を冷やし続けるしかなかった。
人間の脳とはやっかいなものだ。体がそんな状態でも、いっこうに働くことをやめようとしない。
「おいおい、何でこんなにくたばってるんだ? 昨日は飲み会だった。最初の寿司屋でしこたま飲んだあと、誘われるままに2次会に出向いた。あれがいけなかったか? 暑さにやられたのではなく、これは単なる二日酔いか?」
「にしては、体内に酒が残っている感じはあまりない。二日酔いでないとすれば、これはいったい何なのだ? これまで60回の夏を体験してきたが、暑さにやられてぐったりするなんぞ、初めてのことだ。あれか、60回は大丈夫だったとしても、61回目は大丈夫じゃないってことか? それって、別名で老化っていうんじゃなかったっけ」
「そうだよなあ。人が死ぬのは真夏と真冬に多いという。分かるなあ。衰えた体にこの暑さは厳しいよなあ。やっぱりあれか。俺の命日は夏場になるのか?」
「仕事はどうする? そういっても、この状態では出かけることはできそうにないし、ま、いいか。さぼっちゃえ!」
上司の目が全く届かない1人事務所というのは天国である。午後1時から事務所で横になっていても、誰の目も気にすることはない。
へん、こんなくそ暑い日に、まじめな顔して働いている馬鹿もいるんだなあ。可哀想に。君らも天国に来てみたら?
と考えていたら、いつの間にかうつらうつらしていた。誘い込まれるように眠りの世界に入り、目を覚ましたら3時を過ぎていた。日差しは相変わらず厳しかった。
今日も朝から太陽が照りつけた。こんなこともあろうかと、午前中は事務所で事務処理に時間を費やした。が、午後は出かけねばならぬ。
朝から日差しにさらされ続けている車の中は蒸し風呂だった。が、これに乗らねば目的地には行けない。窓を全開にし、エアコンをMAXにして車内の煮えたぎる空気を車外に追い出す。しばらく走ったところで窓を閉じ、車内の空気を冷やしにかかる。桐生で身につけた悲しい知恵である。
が、昨日、今日の暑さは、悲しい知恵さえ役立たずにする。やっと車内が冷え始めたなと思うと、もう目的地に着くのだ。屋根のない駐車場に車を止め、訪問先に行って用事を済ませる。すると車内はまた、炎熱地獄に戻っている……。
「ねえ、桐生の夏って、こんなもの?」
知り合いに聞いてみた。無情な返事が返ってきた。
「はい」
ついでに、注釈もついてきた。
「まあ、急に暑くなったので体が慣れてないんですね。この暑さは夏中続きますが、そのうち体が慣れて案外平気になるものですよ」
俺の体、慣れたりしないって!
昼間の酷暑からは解放されたものの、まだ十分に暑いこの時間になって、私は考える。
私は、桐生の夏を生き抜くことができるのだろうか?
何とも自信が持てない、昨日今日の私である。
暑い!