07.05
2011年7月5日 分からん
松本という人が大臣を辞めた。復興担当大臣。なんでも、9日間しか持たなかったのだとか。
「(水産特区は)県でそれコンセンサスを得ろよ。そうしないと我々、何もしないぞ。だからちゃんとやれ。今、あとから自分が入ってきたけど、お客さんがく るときは、自分が入ってからお客さんを呼べ。いいか。長幼の序(ちょうようのじょ)がわかっている自衛隊なら、そんなことやるぞ。分かった?」
宮城県知事に対する発言である。ひどい、といえばひどい。
「九州の人間ですけん、語気が荒い」
などと釈明されると、
「俺も九州の出ばってん、俺はあげな言い方はせんばい」
といってみたくもなる。
だけど、そんな言い方をしないのは、私だけじゃないだろう。衆目監視の中、この白髪のおじちゃん、何で、あえて反発を買うに違いない言葉を選んでしゃべってしまったのか?
この人、普段からこんな口のきき方をする人なのか?
「おい岡田(幹事長)、手前、長幼の序ってもんがわかってんだろうな」
って、大臣就任の時にいったりしたのだろうか?
常識的に考えれば、そんな言葉遣いはしていない。普段からそんな話し方をしていて国会議員になれるほど甘い世の中でもあるまい。
では、このときに限って、この人はなぜこんな言葉遣いをしたのか。
1)出がけに夫婦げんかをし、虫の居所が悪いまま知事さんたちと会ってしまった
2)この日会った知事たちの、震災後の言動に怒っていた
3)お付きの官僚に、現地の知事たちの無責任さをたっぷりと吹き込まれていた。これは2)と同じか
4)何らかの計算があった
あのような言葉遣いは異様である。異様には何らかの原因があるものだ。それを解き明かすのがメディアの役割だと思うのだが、新聞、テレビを含めて
「けしからん!」
の大合唱しかしない。ほかの新聞、ほかのテレビと同じことを伝え、同じようにこの人を攻撃する。日本のメディアには知性がない。
あんたら、
俺だけはこれだけ深い事情を知ってまっせ、
俺だけはこれだけ深い読みをしてまっせ、
って見せびらかしたくはないのか。それがプロ根性だろうが。
横並びを第一とするメディアには未来はない。
いや、私が目にした限り、知性のかけらのような記事もあった。
自爆テロ
だというのだ。もっとも、そう解説したのは政治家で、メディアはそれを伝えただけだから、メディアに知性のかけらがあったことにはならないが。
それによると、菅直人の無能ぶりに怒り心頭に発したこの人は、人材難の民主党で人選に苦労した菅直人が復興担当大臣への就任を打診してきたとき、自爆テロを決意した。就任要請を飲んで重要閣僚になり。その地位を利用して内側から菅内閣の爆砕を志した。それが、件(くだん)の問題発言だというのである。
とすれば、身を捨てて国に報じようという国士ではないか。
いや、どの解釈が正しいのか、私は判断する材料を持ち合わせない。だから、今回の事件の本質が見えない。
あれもこれも、取材するふりをしながら取材せず、保身のみに汲々としてどうでもいい話を垂れ流し続けるメディアのせいである。
これでは、報道を鵜呑みにして
「あの上から目線がいけないわね」
などと、突き出されたマイクに向かって分かったような話をするそこらのおばちゃんとメディアの間に何の格差もない。
プロのジャーナリストは庶民と同じ目線で見なければならない。しかし、庶民と同じ視野でしか事態を見ないのであればプロの資格はない。速やかに職を辞し、一庶民となって
「大臣だからといって、上から目線はないでしょう」
と突き出されたマイクにしゃべって、何かを成し遂げたかのような自己満足に浸っておればいいのだ。
でも、松本さん、何であんな言い方をしたのかなあ。
分からん。