08.02
2012年8月2日 夏の果物
といえば、西瓜である。
「大道さん、西瓜が来たんだけど持って行く?」
昨日、桐生市の元有力者O氏に声をかけられた。彼は、お中元代わりに西瓜を配る。日本一のブランド西瓜ともいわれる山形・尾花沢の西瓜だ。この季節、いちばん喜ばれる贈り物であろう。
多いときには、100個も買って配っていたという。何度かやめようかと思ったが、
「今年、西瓜はまだ? いやあ、子どもが待っててさあ」
と、本当は自分がいちばん待ち望んでいるとしか思えない知り合いから声をかけられ、やめるにやめられず今日まで続いている。どういうわけか、昨夏から、我が家も尾花沢西瓜の配り先になった。いただいて食したが、流石に美味い。
「えっ、もう来たの? あの西瓜、でかかったよねえ」
O氏が配る西瓜は、6Lという特大西瓜である。確かに、贈り物にするにはあの程度の大きさがないとインパクトに欠ける。小玉西瓜では
「これ、何? 贈り物のつもり?」
と馬鹿にされてしまう。
「ちょいと早いなあ。ほら、うちは妻殿と2人家族じゃない。それに、娘の子供たちが遊びに来るのは15日からなんだよね。いまもらってもそれまでとって置くわけにはいかないし、2人で食べるには大きすぎるし。それに、昨日勝ったばかりなんだよ、西瓜」
ここで、少々脇道にそれる。
夏、我が家に欠かせない代表が西瓜である。私がとりたてて好むのではない。もっぱら、我が妻殿がお召し上がりになる。
妻殿は病気のデパートである、とはどこかで書いた。デパートには、当然のことながら腎臓疾患も陳列してある。
「また尿タンパクが増えちゃって」
4週に1度、前橋日赤に検査にお連れすると、時折そうおっしゃる。こうした症状にいいのは、尿を沢山出すことである。水分を沢山取るのに加えて、お茶やコーヒーなど利尿作用のあるものを積極的に取ることだ。
そして、西瓜は利尿作用を持つ果物の代表なのである。西瓜を食べたらトイレに行きたくなった思い出は、皆さんにもあるはずだ。
で、夏場は西瓜が欠かせない。最近は、買い物は私の仕事になってしまったから、西瓜を抱えて帰るのも私の役目である。
「これ、甘くない」
「これ、古い」
私が買ってきた西瓜の3分の2から4分の3は自分で食べるのに、妻殿の苦情は絶えない。いや、ひょっとしたら、沢山食べるから苦情を言いたくなるのかも知れない。
その程度は、まあ、我が忍耐力の範囲内である。
「もう西瓜なかったな。今日買ってくるか」
2週間ほど前の朝、そう声をかけた。
「いらない」
にべもない返事である。
「8月いっぱいしか食えないんだぞ」
「もう、飽きた」
ここまで言われては、私の堪忍袋の緒も切れる。誰のために重い西瓜を抱えてきてると思ってるんだ? その日は口も聞かずに家を出た。西瓜など買いにも行かなかった。
が、8月いっぱいしか食べられない果物である。利尿作用があり、食えば美味い。やっぱり食べた方がいいんではなかろうか? 数日もすればそう考え出すのが私である。何もいわず、西瓜を一玉買って戻った。
その日、夕食のデザートに西瓜が出た。当然、妻殿の方が量が多い。なんのことはない。あれば食うのが妻殿なのである。
以来、今年我が家に西瓜が絶えたことはない。
「絶え間なく勝ってきてくれてどうも」
という挨拶は、まだ聞かないが。
話を元に戻す。
「あ、そう。買ったばかりなんだ。それにチビちゃんたちが来るのはお盆ね。そうか、どうしようか」
O氏は優しい人である。
「うん、じゃあさ、今日来たのは第1便で、うちはだいたいだ3便ぐらいまで西瓜を買うから、大道さんにあげるのは最後の便のやつにしようか」
ありがたい申し出である。
「最後の便は10日前後になるはずだから、来たら電話をするよ。取りに来て」
それなら、啓樹、瑛汰と一緒に特大の西瓜にかぶりつける。申し出をありがたく受けた。
今日、野暮用があってO氏を訪ねた。
「あ、いいところに来た。西瓜、持ってって」
ん? だって、私がもらえるのは最後の便のヤツじゃなかったの?
「それがさ、来ちゃったんだよ、今日、最後の便が。今年は早いんだね」
……。どうする? 特大の西瓜、妻殿と2人で食べきれる? あまりそうだったらご近所におすそ分けする? でも、啓樹と瑛汰は尾花沢の西瓜を食べられなくなっちゃうなあ。
「大丈夫だよ。お盆ぐらいまで持つって。俺なんかさあ、冷蔵庫の中身を全部出して西瓜を入れて、お盆に食べたこともあったもん」
そんな。我が家には冷蔵庫は1台しかない。夏場に冷蔵庫の中身を全部出すなんて、できるわけないじゃない!
「そうか、だったらうちの倉庫に置いておいてあげようか。うちの倉庫だったら周りより涼しいし、お盆ぐらいまでは持つと思うよ」
というわけで、お盆前まで保管をおねがいすることにした。
本当に持つかどうかは、やってみなければわからない。啓樹と瑛汰の到着を待って切ってみよう。ダメになっていたら、農協に西瓜を買いに行こうな、啓樹、瑛汰。
そういえば、買っておいた西瓜、今日の夕食で食べ終えたようだ。
明日はまた、西瓜を買いにいく私の姿があるはずである。