12.29
2012年12月29日 昨日の続き
昨日より、1日だけ押し詰まった。2012年も残すところ、2日と少々。さて、私の人生の残りはどれぐらいあるのか?
昨日に引き続き、最近私が読んだ本の紹介を続ける。
「葬られた王朝 古代出雲の謎を解く」(梅原猛著、新潮文庫)
昨日に引き続き、歴女好みの本である。が、これ、お薦めしない。
梅原猛さんの本は、結構読んできた。自分で資料を読み込み、そこで得た確信が学界の大勢に逆らうものであっても、
「私の説の方が正しい」
と綿密に論証する勇猛果敢さには敬服してきた。
法隆寺は、聖徳太子を鎮魂するための寺であったとする「隠された十字架」、柿本人麻呂の死の真相を暴かんとする「水底の歌」。知的好奇心を揺すぶられながら読んだ。
が、これはいけない。出雲王朝について書いてあることが真実かどうかは別として、推論の仕方が無茶である。
普通、学術的な書は事実をギリギリまで積み上げて、積み上がった事実をすべて説明できる仮説を立てる。大変な作業だが、それなしには事実解明は進まない。
だから、研究者たるもの、とにかく事実を集めることに全力を挙げるはずなのだが、この本での梅原さんは、
「と思う」
「と考えられる」
などの言葉を使いながら、とりあえず手に入ったデータで大胆な推論を展開する。読んでいると、
「最初に結論ありき?」
という気がしてくるから困ったものだ。
少しお年を召され過ぎたのだろうか、と心配になる本である。
「ソウル・コレクター」(ジェフリー・ディヴァー著、文春文庫)
デンゼル・ワシントン主演の映画に「ボーン・コレクター」という秀作がある。
主人公は元刑事、リンカーン・ライム。事故で首から下が動かずベッドに寝たきりなのに、徹底した犯罪現場のデータ集めと、その組み合わせによる推論で真犯人にたどり着く、人並み優れた頭脳を使いこなす新しいタイプのヒーローである。
その、リンカーン・ライムを作り出したのがジェフリー・ディヴァーで、この作品でもリンカーン・ライムが謎に挑む。
冤罪事件が相次ぐ。リンカーン・ライムは、たまたま従兄弟が殺人の疑いで逮捕されたことから絡むことになる。しかし、証拠はすべて従兄弟が殺したことを示している。リンカーン・ライムはどうやって従兄弟を救い出すのか?
謎の形としては面白い。読み進むと、クラウドコンピューティングを利用して詳細な個人情報を自由に操れる犯人が、自分で殺人を犯しながら、自分ではない誰かを犯人に仕立て上げている筋書きが見えてくる。そんな知識と知恵と立場、行動力を持った真犯人は誰なのか?
と、ここまでは大変面白い。そして、こいつに違いないいという男が現れる。
「そうだよ、コンピューター社会って、やっぱどこかやばいよな」
と読み進むと……。
「えっ、こんな奴が犯人!? そりゃあないだろ!」
と別の男が突然犯人になり、終わりになる。
魅力的な犯罪者を作り出すことができなかった、ジェフリー・ディヴァーの失敗作である、と私は思う。
「エージェント6」(トム・ロブ・スミス著、新潮文庫)
「チャイルド44」「グラーグ57」に続く3部作の完結編。
第1作から高い評価を受け、続編が待ち望まれた、と書いてしまったら、どこかの書評家みたいで面白くないな。だけど、この本は面白い。
舞台はソ連。元国家保安省捜査官のレオとその妻、子供たちが主役である。
レオの愛妻、ライーサは教育者として国内で高い評価を受け、子供たちを含む友好使節団を率いてアメリカに渡る。国連本部での米ソの子供たちによるコンサートは大成功で、米ソの緊張も緩むかと思われたとき、国連本部の前で、親ソ家の黒人歌手が射殺される。驚いたことに、ライーサは犯人として逮捕されたうえ、留置場で歌手の妻に射殺される。
いったい何が起きたのか? 心は焦っても、ソ連は自由に海外渡航ができる国ではなかった。それでもレオは、自分の地位をなげうってでも愛妻が殺された真相を解明しようと決意した……。
当時のソ連、アメリカの国情を背景に、ソ連によるアフガン侵攻も絡ませながら描かれた壮大な歴史叙事詩。哀しすぎる幕切れも、余韻を残す。
お薦めの1冊。
「自白」(ジョン・グリシャム著、新潮文庫)
文句なしに面白い。
「ナニカアル」(桐野夏生著、新潮文庫)
へーっ。林芙美子って、こんなおばさんだったんだ。旦那持ちでありながら、毎日新聞記者の恋人を持つ。戦地への取材行でも逢瀬を重ね、やがてその男の子を身ごもって……。
しかし、あの第2次世界大戦中、朝日や毎日、読売といった新聞社は、ズブズブに軍部と癒着したたんだね。林芙美子のプライベートライフを知るにも、大手新聞社のいい加減さを知るにも、読書の歓びを味わうにも、絶好の本。
ふーっ、疲れた。
とりあえず、今年はこの程度で。
いま、9時27分。あと2時間ほどで瑛汰、璃子、その他が我が家に到着する。
体、大丈夫かな? 無事に年を越したいと願う。