01.30
2014年1月30日 檀密
という女を、私はよく知らない。
とろけるような色気のある女ということで、週刊誌などに取り上げられていることは知っている。そんな週刊誌に目を通すついでに、グラビアの彼女を見たこともある。
「これの、何処が色っぽいの? 美人じゃないし、体つきだって色気からは遥か遠くにあるのに」
その檀密を、何故か多くの男が賛美する。でなければ、週刊誌が紙幅を割き、グラビアページを提供するはずがない。
「今時の男は、女を見る目もない」
そう断じざるを得ない。
その檀密が今日、我らが国民放送、NHKのお昼の番組に出ていた。糸井重里をメインとする食い物番組だ。
「へっ、我らがNHKも、わけのわからぬ色気だけを武器にもてはやされている、まあ、ポルノ女優とあんまり違わない女を、昼の番組に使うの?」
異様な感じがした。
いや、別にポルノに出る女性たちを差別するのではない。人間、自分の居場所があるということである。乳房を公衆にさらすことしか脳がないチョチョリーなのような女は、国会にいてもらっては困るということである。
「はあ、ひょっとしたら糸井重里の趣味? この男、たいした趣味はしてないねえ」
そんな思いが脳裏を駆け巡るぐらいだから、テレビを注視していたわけではない。何もない中で昼食を取るのは味気ないから、とりあえずテレビをつけていただけである。どこの家庭でもありがちなことだ。
昼食に供されたスパゲティを口に運びながら、見るともなく、聞くともなく、テレビと付き合っていた。本日のテーマは柚であった。柚を使った各地の料理が紹介され、和食の板前が柚を使った新しい料理を創作し、それをスタジオの糸井重里、檀密らが、差も美味そうに食べる。
そんな番組をボーッと見ていて、フット気がついた。
「この女、頭いいわ」
言葉に無駄がない。意味不明の感嘆詞を口にしない。
メモを取っていたわけではないから正確さは保証しないが、
「美味しいですね」
とはいっても、
「美味しい~!」
とはいわなかった。最近のアナウンサー、タレントは、何かを口に入れると、無闇に
「美味しい~!」
を連呼する。
「こんなの、初めて! 幸せ!!」
と甲高い声で叫ぶのにも聞き飽きた。
そんな表現で、味が伝わると思っているのか? お前ら。筋からいえば、お前ららは言葉を操る職人である。それが、そんな、中身がすっからかんの言葉しか口に出来ないのか?
あ、似たように中身がすっからかんな言葉に、
「可愛い~」
がある。何を見てもこの言葉を口にする女を表現する言葉を、私はひとつしか知らない。
アホ
本題に戻る。
オクターブを上げるでもなく、淡々と話す檀密の言葉は、見事に彼女が口にする食べ物の味を、視聴者に、つまり私に、伝えてきた。
「そうか、美味そうだな」
私をそんな気にさせた。
この女、つまり檀密は、頭がいい。沢山の言葉を知り、その言葉を、何処で、ほかの言葉とどのように組み合わせるのが最適か、を知っている。知性のある女性だ。ひょっとしたら、そのうちエッセイや小説を書くのかもしれない。
「おい、こいつ、頭いい女だな」
そばにいた妻女殿に話しかけた。
「この人、色っぽいっていうんで人気があるのよ。頭もいいんだったらなおさらだよね」
妻女殿の言葉に、私はひっかかった。
知性があって色っぽいから、男の人気を集める?
おいおい、どちらも持ち合わせぬ女性が大半で、どちらか一方だけ持っていれば堂々と世を渡れるのに、この2つを持ち合わせていたら、女性はパーフェクトだろう。
いまの男どもは、パーフェクトな女に発情するのか?
どう比べても、知性では追いつけそうもない女が、でも、自分の前で惜しげもなく裸身をさらし、セクシーな(と思われる)ポーズを見せる。それに、他の女にも増した色気を感じて魅せられるというのは、風呂焚きしか出来ない男が、目の前で脱衣して入浴する天真爛漫なお嬢様に恋い焦がれる姿に似る。己の卑しさ、身分の低さ、能力のなさを知るが故に、手が届きそうもない奔放な女に憧れる。
これ、倒錯した愛、っていわないかい?
で、私はどうだって?
うん、彼女の知性は認めるに至ったが、全く色気は感じない。ぼてっとした唇に、重たげな瞼。豊満なわけでもなく、脚の線が美しいわけでもない。
これ、例え胸を押しつけて迫られても
「さて、どうやって逃げ道を探そうか」
と頭脳を高速回転させざるを得ない相手だな、というしかない。
迫られる前からボーッとなって頭の回転が落ち、妄想しか持てなくなるオスにしてくれる女を捜し求めている私が、そう思う。その程度の女、ではないか?。
明日は腰の病院に行く。
そうそう、あの病院にも、妄想を持たせてくれる親切な女性看護師はいないんだよな。
ああ、つまらん。