03.29
2014年3月29日 売り物
渡辺喜美という、ガマのような顔をした二世政治家がいま、累卵の危うきにある。
何でも、化粧品屋のオヤジから8億円せしめたらしい。それが政治資金収支報告書に載っておらず、資産として公開もされていない。
ご本人は
「借りた」
とおっしゃっているようだが、借用証書もない。怪しい。
これを見て浮かれたのか、民主党のある議員は
「猪瀬元都知事と同じじゃないか」
といったそうだ。
ああ、この議員さん、知性がない。そんな、誰もが思いつくようなことを、どうして国民の代表である国会議員が口走る? そんなこと、あんたにいって貰わなくったって、ニュースに触れた国民の8割が思ったことだよ。代表を自負するのなら、もっと気の利いたことをいわなくっちゃ。つまらん。
そんなアホ議員が口にしたことを、これはニュースだと報道した四流記者諸兄も、時には己の知能テストを受けられることをお薦めする。手遅れにならぬうちに治療に取りかかるためである。早期発見早期治療。
と大段平を切っちゃったが、私だってたいしたことを思いついたわけではない。国民の代表などになろうとは思いもしない、思ってもなれるはずがない私だから、そのあたりはお許しを願う。
で、何を思ったか。
まず、
「へえっ」
と思った。何が、へえっ、なのか。
「反官僚っていうスローガン、政治運動は8億円もの値段がつくんだ。クラプトンが愛用したヴィンテージギターより高いじゃないか!」
ということなのである。
週刊誌(週刊新潮だったか?)で化粧品会社のオヤジの手記を読んだ。オヤジは
「渡辺さんは、官僚制度改革を強く訴えてこられた。民間で仕事をしていると、官僚の壁というのが邪魔で仕方なくなることが多い。だから渡辺さんに期待した」
という趣旨のことを書いていた。つまり、このガマ議員が官僚制度をこき下ろし続けたことが8億円になったのである。
だったら俺も、官僚にもっと強い態度で出れば良かったなあ。まあ、私は国会議員、野党の党首ではないので8億円にはならないとしても、8万円ぐらいにはなったかも知れないではないか。
私は、官僚を十把一絡げで悪の総本山呼ばわりする議論には、いつもう胡散臭さを感じてきた。
いや、まさかその裏で8億円もの金が動いている臭いをかぎ取ってのことではない。今回の事件まで、そんなことが金になるなんて、考えたこともなかった。
胡散臭いのは、その主張があまりにも単純な善悪二元論に拠っていたからである。
「鼻におできができるのも、みんなカンリョが悪いのよ」
と官僚をこき下ろし、返す手で民間を誉めあげる。発想もアイデアも競争力もなにもかも、いいものはみんな民間企業にある。日本経済がなかなか復興しないのは、民間企業を邪魔することを仕事としている官僚のためである。
ねえ、そんな話、あるいは書き物、聴いたり見たりしたことあるでしょ? テレビにも新聞にも雑誌にも、溢れかえっているモンね。
だが、である、お立ち会い。
企業って、そんなに素晴らしいものか?
資本主義が立ち上がったイギリスで、当初は8歳、10歳と年端もいかぬ子供を工場で、それも1日15時間以上も働かせた。安い賃金でこき使い、利潤を上げるためである。
流石にそれはまずかんべえ、と社会が歩みを始めたとき、政府が法律をつくり、企業を規制し始めた。立法作業も現場で企業を取り締まるのも、官僚である。
いや、そんなに歴史をさかのぼる必要はない。
血圧降下剤の臨床試験データで不正を働いたノバルティスファーマは、民間企業である。
線路の点検に手抜きをし、事故を起こしちゃったJR北海道は、民間企業である。
食品偽装も、企業の仕業である。
出店企業に
「元の価格を高く表示して値引率を大きく見せろ」
と指導したのは、楽天という企業の社員であった。
就職したいという女子学生に
「魚心あれば水ごろ、って知ってる? 試験にでるよ 」
といったかどうか分からないが、体を開けと求めたのは共同通信という企業の偉いさんであった。
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と、いくらだって企業のおかしな振る舞いは数え上げることができる。中には従業員の不祥事といって済む場合もあろう。が、企業そのものが悪であると断罪されるケースだって数多い。
それに、そもそもである。契約社員、派遣社員など、自分らに都合の良い雇用形態を創り出し、若者の雇用を不安定にし、その多くから将来の夢を奪い、結婚すらできない状態に落としたのは、企業である。
それれなのに、企業はそんなに善玉か?
民にも官にも、いいところもあれば悪いところもある。それだけのことなのだ。
違いは、民間は経済活動を通じて利潤を追求する集団であり、官庁はお金は稼がず、もっぱら、お金の役に立つ使い方を考える、という1点にしかない。
餅は餅屋、馬鹿とハサミは使いようなので、要はそれぞれの機能がうまくからみ合い、みんながハッピーになる世の中を作ればいいのである。
「お前らは馬鹿だ」
「いや、お前らこそけしからん」
と子供じみた罵りあいを繰り返すことほど愚かなことはない。
それなのに、官僚性悪説にあって官を攻め続けていたことに8億円の呼び値がついた。それが、私の
「へえっ」
の中身である。
しかし、ガマさん、8億円で熊手を買ったんだって?
まあ、熊手っていえばお金をかき集める道具だよなあ。お金をかき集める先っぽの部分はプラチナで、手で握るところは純金に宝石を散りばめた豪華なもの。沢山お金をかき集めるには、まずそのための道具に金を訴sぎこまなくっちゃ、というわけか。
政治って、やっぱりお金をかき集める手段なのね?
でも、ガマ君、あと何日頑張っていられるんだろう。
断末魔の顔を見たいような、どうでもいいような。
そんな気分の私である。