2014
06.23

2014年6月23日 一難去って

らかす日誌

昨朝、クリスキットが無事I君から届き、O氏宅に持参してセッティングを済ませた。

「なんか、音が良くなったみたい」

というのが、O氏の反応である。うん、聞けば聞くほど良い音で聞こえるから、安心して音楽を楽しまれよ。

で、事前通告のあったHDDも一緒に送られてきた。ジャズを中心に100枚ほどのアルバムが入っていた。彼はピアニスト、Bill Evansをことのほか好むらしい。大半がBill Evansのアルバムで、こいつをまずMacの内蔵HDDにコピー、タグを見たら楽曲の頭に通し番号が振っていないので、

「これだと、再生するときに楽曲の順番がアルファベット順になるじゃないか」 

と口の中だけでブツブツ文句を言いながらタブの書き換え作業をした。1200曲前後の曲に番号を振るのはちょいとした作業で、夕方までかかった。終えて、彼のHDDに私所有の楽曲をコピー、次にいただいた楽曲をNASにコピーし始めた。 
LANを介してのコピー作業は時間がかかる。30ギガほどの楽曲データをコピーし終わったのは深夜であった。その時間から音出しをしては、我が妻女殿の安眠を妨害し、山ほどのクレームを突きつけられるのは火を見るより明らかである。ここは、まず安眠して朝を待つに限る。 

というわけで今朝、 

「さて、彼の好きな曲とは」 

と、最初にBill Evans & Jim Hallの「Intermodulation」を選び、再生を始めた。1曲目は「I've Got You Under My Skin」である。きっと、濃厚な愛の曲なのであろう。

「何か、ちんけな音だなあ。録音、そんなに古いのか?」 

ラジカセ並みの音が出てきてちょいと夢が覚めた。わが家の装置でちんけな音が出る。それは音源が悪いに決まっているのである。 
1曲目が終わった。なのに、2曲目の再生がなかなか始まらない。 

「どうしたんだ?」 

NASにBUFFALOを使っていたときは、時折音の途切れがあった。だからNASのベンツ(もっとも、最近のベンツはたいしたことはないが)と言われるQNAPに取り替えたのである。 

「QNAPよ、お前もか?!」 

一瞬、悪い予感が全身を駆け巡った。慌てて、iPadのコントロールアプリを見る。すると、2曲目が表示されている。ところが、演奏開始からの時間を知らせるタイマーが、「0:00」から始まって「0:10」までは進むのだが、そこまで行くと、「0:00」に戻ってしまう。見ていると、何度もそれを繰り返している。
これはいかん。これ、BUFFALOより性悪の症状だ。 

他のアルバムを選択した。そして1曲目を再生しようとする。今度は何も起きない。タイマーも「0:00」のままだ。 

「I君、とんでもないデータを送ってきてくれたか?!」 

壊れて再生できないデータをI君が送って来たのではないか。だから1曲目もあんなにひどい音がしたのではないか? 
というのは、まだ想像の段階である。事実を把握するには、さらにステップが必要だ。そう、昨日まで、実に美しい音で再生されていた既存の曲の再生である。Billy Joelを選んだ。Bill Evans & Jim Hallのすぐそばにあったからだ。その「The Stranger」の1曲目、「Movin' Out (Anthony's Song)」を選んだ。
何も起きない。タイマーは、「0:00」のままである。 

どうなっちゃったんだ? QNAPも最近のベンツと一緒か?!

QNAPの日本代理店に電話をした。同梱されていたパンフに問い合わせ先があったからだ。 

「はい、ただいまお問い合わせが混み合っておりますので、後ほどこちらからお電話を差し上げます。ひょっとしたら午後になるかも知れません」 

まあ、混んでるのならそれも仕方あるまい。上に書いた症状と私の連絡先を告げて、午前中はひたすら電話を待った。 
来ない。 

昼食を済ませた。午後になった。それでも電話は来ない。 
相談受付が始まって遅くとも5分後には電話をした私である。問い合わせがどれだけ混み合っているのか知らないが、これほど長く待たせるというのはおかしいのではないか? 
午後1時半頃、再度電話をかけた。 

「申し訳ございません。ただいま混み合っておりまして」 

だって、おれは受け付け開始から5分後には電話をかけたんだぜ!

「はい、誠に申し訳ございません」 

それはいいけど、あとどれだけ待ったら電話をもらえるの? 

「それは、何とも申し上げられません」 

あんたは、ひょっとしたら午後になるかも知れない、って朝言ったよね。もう午後なんだよ。 

「本当に申し訳ありません」 

じゃあさ、私の順番は、いま何番目まで繰り上がってるのよ。 

「それはお教えすることができません」 

だって、問い合わせた客には当然順番がつくでしょ。私は何番目の問い合わせ客で、いまは何番目を処理してるか分かれば、簡単に答えは出るじゃない。 

「それは、お客様にはお伝えしておりません」 

そろそろ、私のこめかみがピクピクしてきた。危険な兆候である。 
あんた、いい加減にしいや。あんたが「ひょっとしたら午後になるかも」というんで、いままで待ってたんだわ。それなのに、あと、どれくらい待たされるかわからない? 電話が来たときに、機械のそばにいなきゃまずいでしょ。だから俺、出かけるに出かけられないのよ。 

「はい、申し訳ありません」 

いや、そんなうわべだけの謝罪はいらないんだわ。あとどれぐらいで電話がもらえるか分かれば、こちらでスケジュール調整して出かけることもできる。それが教えられないってのは、あんた、俺を1日中家に縛り付けておく気か?! 

「いえ、そのような事では……」 

だって、現実、俺はそうせざるを得ないじゃないか。あんたんとこ、そんなに問い合わで混乱してるのか? いったい何人で対応してるんだ? 

「それはお教えできません」 

ふざけるな。上司を出してくれ。 

「上司もただいま電話に出ておりまして、お客様の電話に出ることは不可能です」 

よく言った。だったら、俺はどうすりゃいいの? あんた、電話が来るまで俺が無駄にする時間、弁償してくれるのか? 

「そんな規定は当社にはございませんので」 

そんなことは百も承知だ。しかし、こんな低級なサービスで、よく商売してるな。あんた、あんたが俺の立場になったら、次もQNAPを買おうと思うか? ユーザーが困ってるときに、木で鼻をくくったような「申し訳ありません」としか言わない会社から何かを買いたくなるか? 

「いや、それは……」 

そうだろう。だったら、何とか客をなだめることを考えろよ。 

「少々お待ち下さい………、はい、それではお客様、3時前後にお電話を差し上げるというのではいかがでしょう」 

やればできるジャン。3時前後だな。だったら、2時40分までには自宅に戻るようにする。じゃ、よろしく。


という会話の後、電話が来たのは2時10分過ぎだった。 

「ごめん、いま車の運転中。あと20分したら自宅に着くから、その頃電話をくれますか」 

私がやっとサポート担当と話すにこぎ着けるまで、こんなすったもんだがあった。 

こいつ、営業ができない。総務系の仕事をさせてみたがだめだった。もちろん、技術なんて皆目だめ。アホ社員である。が、採用した以上、無闇に首は切れない。だったら、クレーム窓口にでもおいておけ。 
会社がそう考えるのはよくわかる。 
が、だ。別の見方をすれば、そんなアホウを、客と直接接触する窓口においていいのか? 電話をしてくる客は、数多い同種製品の中からその会社の製品を選んで買った、いわば潜在的なファンである。その潜在的ファンが電話口で苛立ちを募らせる。やがて、 

「この会社、大丈夫かいな」 

と疑い始め、やがては

「製品もおかしいんちゃうか?」

と不信の念を持つ。それが蓄積していけば、やがては会社の足を引っ張る。

ねえ、今日私が電話をした会社の方、窓口担当は一日も早く変えた方がいいと思うよ。


やがてかかってきた技術サポートはさすがであった。
私の説明を聞くと、

「パソコンからはNASのフォルダにアクセスできるのですね。であれば、NASが原因である確率は極めて低いと思われます。ただ、念のため、どんなファイルでもいいですから、NASにコピーしていただけますか?」

エクセルで作ったファイルをコピーした。

「では、そのファイルをNASから開いて下さい」

やった。エクセルは立ち上がったが、何故かファイルは開けなかった。

「なるほど、そうなると、NASに入っているHDDが疑えます」

だって、これ、NASと一緒に買った、極めて評価の高いWDの赤ですよ。

「はい、HDDというのは、必ず部分的に不良ブロックがある、という前提で作られています。だから、その不良を修復するためのブロックも必ず中に用意されているのです」

だって、昨日まではちゃんと音楽を再生できていたのに、30ギガ程度のデータを追加したら、元からあった音楽まで再生できなくなるなんてことがあるんですか? あ、そうか、新しく追加したデータが、たまたまその不良ブロックに書き込まれて、それが全体に悪戯してると?

「はい、その可能性もあります。そこでお願いしたいのですが、QFinde(QNAPをブラウザから操作するためのアプリ)を立ち上げていただいて、はい、そこに出て来るストレージマネージャからドライブ1のコンフィギュレーションを行うボタンをクリックして下さい」

パソコンの操作にはわけのわからない横文字、というかカタカナ語が沢山出てきて、やがてわけがわからなくなる。ここは、何の疑問も持たずに言われたとおりにするしかない。

「はい、この操作は大変時間がかかって申し訳ないのですが、今日の夜中までかかると思われますが、終わったらシステムログを書き出していただいて、そのファイルを当社までお送りいただきたいのです。当社でログを解析して、不具合の原因を追究します。1日か、ひょっとしたら2日かかるかも知れませんが、原因がはっきりしたらご連絡を差し上げます」

ま、言われたとおりにするしかない。それがいやなら、また新しくNASを買い、苦労してLANにぶら下げ、パソコンに取ってある音楽データをコピーするしかないのである。
はいはい、やらせていただきますよ。

現在午後10時11分。コンフィギュレーションは95%進んだ。恐らく、今日のうちに終わり、システムログを書き出せるだろう。
それで解決策が見つかるのかどうか。

それはそれとして、このようにサクサクと会話が進むのは極めて心地よい。
悪いことがたくさんあったが、気持ちよいこともあった1日である。

でも、元気になってくれよ、QNAP!


東京都議会で野次を飛ばした議員が特定されたらしい。
この事件、当初から不快であった。いや、野次ではない。報道が不快であった。

ま、いまの世の中、この野次が穏当さを欠くといわれても仕方あるまい。
そこまでは合意するとして、さて、この野次を浴びた女性都議は、いったいどのような演説をしていたのか。それを報じてくれるところがひとつもないことが不快なのである。

世の中には、あまりのことに思わず出てしまう言葉というものがある。
無恥、無教養を恥ともしない言説には、思わず

「お前、天性の馬鹿か」

と言いたくなる。怒りが昂じれば

「お前みたいな馬鹿、死んだ方が世のためだ」

と言ってしまうこともある。
言葉とは一方的に発するものではない。相手がいて発するものだし、相手の言葉、動きに応じて発するものである。
だから、この女性都議が、どのような演説をしていたのかが分からなければ、そこに向かって飛んだ野次の評価ができないのである。

「お前が結婚しろ!」

という野次は、どのような演説を引き金として飛んだのか。

例えば、である。自分は独身であることを棚に上げて、結婚しない若者を非難する演説だったら、この野次はどう評価されるべきか?
結婚して子供を作るのが人としての責任であり、その責任を忘れている若者たちを作り出したのは国の施策の誤りである、という演説だったら、この野次をどう評価したらいいのか。

言葉とは、何もないところに突然生まれるものではない。ある発言があったという結果だけを振り回して正義面をするマスメディアは不快である。

この女性都議は、高齢出産や不妊治療などへの支援を訴えていたと報じられている。その限りではまっとうな主張である。だが、彼女がいったのはそれだけなのか? 全体が分からねば判断ができないのだ。

決して、

「いい野次だった」

といいたいのではない。たかが野次ではあるが、何故にその野次が飛び出したのか。

「この発言はけしからん!」

という批判が横行する中、批判というのは、その過程も検証してはじめて成立するのだ、という原理原則を強調したいだけである。