2018
06.24

2018年6月24日 誰も気がつかない?

らかす日誌

今更ながら、とは思うが、やっぱり書いておきたい。大阪北部地震である。

すぐ近くで1995年に起きた阪神・淡路大震災と比べても揺れの強さは大差なかったというが、被害はかなり小さかった。もともと堅牢な街だったのか、阪神・淡路大震災、東日本大震災の教訓が生かされたのかは分からないが、不幸中の幸いである。
今日書きたいのは、大阪北部地震の不幸中の不幸の話である。

小学校のブロック塀が崩壊し、小学校4年の女の子が下敷きになって亡くなった。痛ましい事故である。
地震が来るとはつゆ知らず、いつもの通りに登校していた女の子が、校門を目前にしながら、自分の通う学校に設置されたブロック塀の下敷きになった。痛ましいを通り越して、悲惨という形容詞を使いたくなる事故だった。
そのためか、あるいは被害全体が大きくなかったためか、地震当日から、この事故は何度も報じられ、何度も目にした。
書いておきたいのは、この事故を報じた新聞、テレビ記者どもの思考力のなさである。頭の悪さ、といってもいい。

確か、地震当日からこのブロック塀は何度も写真、動画で私たちの目に触れた。私が最初に見たのは、多分、NHKのニュース映像である。継ぎ足されたブロック塀の上部がそのまま道路に落ちて長々と横たわっていた。
見ながら、私は

「おかしいな」

と思った。普通、ブロック塀はこのように壊れるものではない。法令で決められた高さをはるかに越していたというが、それでもこんな壊れ方はしない。中に必ず鉄筋がはいっているはずだからである。鉄筋は一端を基礎部分に固定され、反対側は塀の一番上まで伸びている。鉄筋には粘りがあるから、地震の揺れで揺れ、傾くことはあるかも知れない。だが傾いても、鉄筋が切れない限り、傾いたままになっているはずで、上の部分だけが落ちることはあり得ないのである。

だが、テレビのニュースは、ただただ

「これが女の子を下敷きにしたブロック塀です」

というだけ。何故ブロック塀がこんな壊れ方をしたかを考えた形跡もない。翌日の新聞(我が家は朝日)も同じだった。

やがて、原因が分かったという報道が来る。国が調べたところ、元々あったブロック塀と、それに継ぎ足して高くしたブロック塀のつなぎに、十分な鉄筋が使われていなかったことが分かったというのである。映像を見ると、崩れ落ちたブロック塀から顔を出しているのは10cmにも満たないほどの鉄筋だった。しかも、下部のブロック塀に埋め込まれていたのも同じ程度の長さしかなかった。鉄筋は本来、一方を基礎部分に固定しなければならないはずで、すでに1mを超えている旧来のブロック塀に一部を固定してもあまり意味はないはずだ。それでも60cm、80cmも埋め込んであったのならまだしも、たかだか10数㎝とは。手抜きもここに極まれり、である。
これでは、地面が少しでも揺れれば、継ぎ目から上にあった継ぎ足し部分が簡単に地面に落下するはずで、現実に起きたのはそういう事故であった。

しかし、この程度のことが,国の調査機関の調査を待たなければ分からないのか、今の記者どもは?
私が何度も現場の写真を見せられたのだから、この現場を取材した記者はたくさんいたはずだ。そのうちの一人でも、崩れ落ちたブロック塀からのぞいている短かすぎる鉄筋に目を止め、

「この鉄筋の入れ方はおかしい」

と気がついていたら、国の調査を待たずとも、

「壊れたブロックに、欠陥工事!」

という記事を書けたはずである。

こうしてブロック塀崩壊の原因が分かり、いまは犯人捜しの段階である。ここでもいまの記者どもは、知的退廃知的怠惰を惜しみなく見せつけている。アホウどもの批判が向かう先は、小学校を管理する教育委員会だけなのである。

「違うだろ!」

ここにも私は怒ってしまった。

もちろん、教育委員会にも責任はある。しばらく前に点検し、問題ないという報告書を書いているからである。メディアは執拗に、どのように点検したのか、点検にミスはなかったか、を追い求めている。今は多分、その点検をした教育委員会の職員の名前を割り出そうとしているのではないか。

「お前が犯人だ!」

といいたくて。

だが、最初に壊れたブロック塀の映像を見て以来、私の視線は全く違うところにある。工事の仕方である。

低いブロック塀を高くしようとした。発注したのは教育委員会だろう。そして、工事を受注した業者がいた。おその結果、結果は鉄筋がほとんど使われていない欠陥ブロック塀が出来た。
さて、このブロック塀を欠陥品にしたのは誰か?
教育委員会が、

「出来るだけ安くやってね。え、鉄筋? いらないんじゃない? その分安くなるでしょ」

といったか。おそらく言っていない。
となると、多分競争入札で工事を受注した工事業者が少しでも利益を増やそうと鉄筋を省いた、と考えるしかない。ブロック塀の工事をやる業者にとって、ブロック塀に鉄筋を入れるのは常識以前であるはずだ。それを百も承知しながら、なぜかこの業者は鉄筋をけちった。それが悲惨な事故を招いた。

と、論理を追えばそのような結論に達するのは決して難しくない。私は最初に映像を見た時から、そう考えた。なんという工事業者がどんな条件で受注したのか。なぜ鉄筋を省いてしまったのか。それがポイントであるはずだ。教育委員会の点検が甘かった、などはそのあとで出てくる問題なのではないか?

と私は考える。そして、その程度の事を調べるのは比較的たやすいことである、と思うのだが、いまだにブロック塀継ぎ足し工事についての報道はない。

おいおい、現役の記者どもよ。君たち、結構学歴は高いはずだ。昔ほどではないかも知れないが、難しい入社試験を突破してあこがれの職業に就いたはずだ。それなのに、その程度の思考力も持っていないのか? だったら、この仕事、君には向いてないぞ。

ひょっとしたら、警察が業務上過失致死でどこかの工事業者を調べるまで、この件は報道しないつもりか? 
何でもお役所頼み? おい、今からでも遅くない。転職を考えたらどうだ?

報道のあまりの体たらく振りに、先輩風を吹かせたくなった私でありました。