2018
06.21

2018年6月21日 再就職?

らかす日誌

なんだかおかしな話になってきた。再就職、というわけではないが、出来たばかりの企業の手伝いをする羽目に陥ったのである。

手伝うのは、群馬大学の先生が立ち上げたばかりの会社だ。
この先生とはもう旧知の仲、といってもいいほどの付き合いになっているから、会社を立ち上げる、立ち上げた、という話は知っていた。起業の目的は金儲けではない。何でも、大学での研究成果を商品にし、販売する。あがった利益は大学に寄付するというのである。

「群馬大学を、スタンフォード大学を凌駕する大学にする」

とこの先生はいう。スタンフォード大学とは、マサチューセッツ工科大学と並んで世界最高峰の理科系大学である。それを群馬大学が抜く?

「ふんだんな研究費があれば必ず抜ける。国や企業からの研究費を待っていてはいつまでも抜けない。だから、自力で研究費を稼ぎ出す」

何とも清々しい、希有壮大な計画ではないか。
起業資金はクラウドファンデングを含む寄付で集めた。私も趣旨に賛同して大枚1万円也を寄付した一人である。だから、一刻も早く成果が出るのを楽しみに待っていた。

ところが、会社が出来てずいぶんたつのに、ちっとも成果らしいものが伝わってこない。

「大丈夫なのかね?」

とは、これも旧知の仲と言ってよい市内の経営者氏と会うたびに話題にしていたことである。

「一度先生に話を聞いてみようか」

そんな雑談に至り、3者会談を持った。その結果、

「うーん」

という話になった。
この会社はいま、プレーヤーは先生だけである。社員はゼロ。顔の広い先生だから、あちこちに話しに行って

「それはいい。是非使ってみたい」

と、開発した商品の評判は上々だという。
だが、そこから話がちっとも進まない。進まないにはわけがあった。たった一人のプレーヤーは、見込み客と話を煮詰める時間がないのである。売り上げに繋がる端緒はいくつも出来るのだが、端緒が端緒のまま終わる。つまり、先生は忙しすぎて具体的な商談を進める時間がないのだ。これでは、スタンフォードを超える計画は画餅に終わる危険がある。

そのような分析から、この会社には経営に当たる人、営業に当たる人が必要だという点で3人の意見は一致した。では、大学新卒に採用に踏み切るか? だが、出来たばかりの会社だから、まだほとんど売り上げもなく、将来も不透明である。新人の雇用するのは無責任だろう。であれば、定年を終えた元サラリーマンに狙いを絞ったらどうか。そんな年代の人なら営業ノウハウの蓄積もあり、即戦力になる。万が一会社がうまく行かないような事態になっても、彼(彼女)には年金があるので、暮らしに困ることはなかろう。若い戦力を加えるのは、会社が軌道に乗ってからでよい。
これも理にかなった合意事項であった。

話がおかしな方向に進み始めたのは、

「だから、大道さんに手伝ってもらいましょうよ」

と、あの経営者氏が言い始めてからである。
えっ、俺が手伝う?
俺って、経営をした経験は皆無に近い。朝日ホールの総支配人を務めたこと、新しくたちあげたデジタルキャスト・インターナショナルというデータ放送局(すでに別の会社に吸収された)で営業をしたこと、程度である。これから軌道に乗せなければならない会社の舵取りなんて、そんな私に出来るはずはないではないか。

「無理だよ、そんなこと。俺、自信は全くない」

「いや、あなたなら丈夫。この会社の製品、理念は素晴らしいし、とにかく大丈夫です」

という見解の違いでペンディングになっていたのだが、昨夜の飲み会で

「やっぱりやってよ」

ということになった。あとには引けなくなってしまったのである。

「では」

と私は条件を出した。
全く持って素人の、起業なんて考えたこともない(いまのLabo-dを起業というのはおこがましすぎる)私がその会社に協力するのである。であれば、どうすればいいかを私に指導する人が必要である。指導者が作成したマニュアルに従って、時にはマニュアルを現状に応じて瞬時に改編しながら仕事に当たる。そうしなければ、私は何をやったらいいのか皆目見当がつかない。

「私の指導役になるのは、あなたですぞ」

と私が念を押した相手は、その経営者氏である。

「それはやりましょう。それでですね」

と経営者は言い始めた。

「やっぱり、会社のために働くとなると、無給ではいけません。きちんと対価を払う。それが企業の原則です」

まあ、それはそうである。だが、経営者氏はさらに一言付け加えた。

「それで、まあ、月額60万円ぐらいだったらどうかと」

おいおい、そんなこと、聞いてないって!
先生は度肝を抜かれたはずである。私も度肝を抜かれた。えっ、俺の給料が毎月60万円?! それはないでしょ。だって、私に何が出来るかは相変わらず不透明だし、先に書いたとおり自信など皆目持ち合わせていない。60万円に値する仕事が私に出来るはずはないではないか! ま、それでもくれるというんなら嬉しいけど……。
だが、謙虚さは私の,ほとんど唯一の取り得である。

「いや、それはあんまりでしょう。会社が軌道に乗って、私がそれに値するような仕事が出来れば胸を張って貰いますけど、当面は、そう……、10万円でもいいんじゃないですか?」

こうやって、おかしな話がとりあえずまとまったのである。あれはきっと、みんな酒に酔っていたせいだと思うのだが。

が、とにかく賽が投げられてしまった。となれば、私も動き始めねばならない。というわけで、週明けにも経営者氏のレクチャーを受ける。彼の脳内ではもう、経営計画がまとまっているかに見える。それを、私が得心するまで聞いて聞いて聞きまくる。それが出発点である。

会社の事務所は大学内にある。すでにコーヒーメーカー、冷蔵庫が備え付けられたのだそうだ。

「それで大道さん、あなたには学生の指導もお願いしたい」

先生はさらに私の仕事を増やしてくれた。

「この会社を中核にして、どんどん新規事業を広げていきたい。そんなアイデアを持った学生が会社の事務所に来るようにします。その相手をしてやって欲しいんです」

おいおい、俺は起業家ではない。自分で会社を経営したこともない。その私が、起業の夢を追う学生を指導する? 無理だろ、そんな!

「大丈夫です。あなたは絶妙のだめ出しをする。それが必要なんです」

ほんと、生きてるとトンでもないことに遭遇する。遭遇してしまった私は大丈夫か? この難関を切り抜けて、会社を軌道に乗せることができるのか?

何度も同じことを書く。全く自信がないのが今の私である。ふーっ、困った!


朝刊で朗報に接した。カナダがマリファナを解禁するのだそうだ。

最近のアメリカ映画にはマリファナがよく登場する。吸っているのは学生など若者だけでなく、大学の先生もお医者さんもマリファナを楽しむ。家庭の主婦も楽しむ。アメリカはまだマリファナを非合法としているはずなのに、映画を見る限り、ごく普通の嗜好品としてマリファナが定着している。
それを、アメリカに先駆けてカナダが合法とする。

残念ながら、私はマリファナを味わったことがない。一度ぐらいは吸ってみたいものだとずっと願っているが、いまだにその機会に恵まれない。
だが、マリファナを扱った本はそれなりに読んだ。頭に残っているのは、たばこと違ってマリファナには習慣性がなく、身体への害もたばこに比べればずっと少ない。何か、いいことずくめの嗜好品だということである。幻覚? 酒を飲んでも幻覚を見るのではないか?
ところが日本政府は、いまだにマリファナを危険な幻覚剤として取り締まっている。取り締まるから、一部はヤクザの資金源になり、あるいは働く気のないドロップアウトの生活の資となり、いまだに日陰の身である。

そろそろ、マリファナをきちんと科学の俎上に載せてはどうか。吸うと身体にどのような影響が出るのか。本当に習慣性はないのか。他に懸念しなければならないようなことがあるのか。たばこ、酒ときちんと比べてみるのである。
というか、カナダが合法化するぐらいだから、そんな研究成果は簡単に手に入るはずだ。

酒はキチガイ水と呼ばれる。酔えば理性を失い、トンでもない行動に出て周りに迷惑をかける人も、中にはいる。だが、日本に禁酒法はない。
たばこの害は指摘されて久しい。私のような愛煙家への圧力は日々強くなり、たばこを吸わない人より余計に税金を払っているにもかかわらず、まるで非国民扱いである。だが、非合法の嗜好品ではない。

それらと比べて、マリファナは本当に害が大きいのか? 
それとも、これまでも禁止してきた、旧習を変えるのは面倒だという役人の職務放棄か。

カナダが解禁するということは、酒やたばこと比べても害は大きくないと判断してのことだろう。であれば、日本も解禁を、せめて検討したらどうか。何しろ今の日本は税収不足である。マリファナを解禁してたばこと同じように課税すれば、新たな収入源が出来るではないか。

私は、棺桶に入るまでには一度ぐらいマリファナを吸ってみたいと思っている。だが、マリファナを吸うためだけにカナダやオランダ(ここもマリファナは合法である)まで出かける気にはならない。何とか日本で吸ってみたい。

マリファナを解禁せよ!

そんな世論が盛り上がって欲しいと思うものである。